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Code_Sakuya/レイラインの軌跡  作者: 阿僧祇瑛佑
第九章 綴られた虚構の断片

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第九章 綴られた虚構の断片

第九章 綴られた虚構の断片


季節は移り変わる…とはいいがたく

多少の変化は見せつつ端境は至極あいまいさが増す。

TVニュースお天気コーナーは梅雨入りを宣言するも

港が近い町並みでは海からの湿った風が吹き付けていた。


(吽雲璃よ、京一殿は一日外を眺めておられるな)


(阿摩那様 ああ見えて…

何かお考えがあるのではないですか?)


(そうかのー、 我には京一殿の心が読めぬ)


(画面に張り付いた犬キャラに何ができましょうか)

(わたくしには 手に取るようにわかります)


(吽雲璃。おぬしまた我を犬呼ばわりすると申すか)


(はっきり申して…犬です)


(まだいうか 我は犬ではないぞ)


(阿摩那様……ちっさ!)


(そなたも 犬に間借りしておるではないか)


(これはかりそめの姿…でございます 

…して…阿摩那様は? 

居候<トーンが下がる>…でありませぬか おほほ)


(まだいうか)


ピンポーン♪

玄関先インタ-フォンのチャイムが鳴った。

(あ!……もしや)


(これ! いくなと申しておる。此度の事といい、許さぬ)


脱兎のごとく走り出す吽雲璃を止めるすべもなく

阿摩那はAIのまねごとを始めた。


チャット画面には次の文字が自動記録されていった。

《2026/06/27 現在時刻 10:42:13 

 休憩時間設定より42分13秒 経過しています》

京一「……あ、休憩時間時の設定……

    もうとっくに過ぎてたか……」


一方、

京一はチャイムの音が鳴っても構うことなく、

ソファに沈んだまま、

目だけはVallの駆け出す姿を追っていた。


チャイムの音を聴きつけ

爪がフローリングを軽く叩く音が廊下に響いた。

勢いよく土間を降りて玄関前に行くも、

踵を返し廊下の蹴上がりまで戻った。

廊下の隅に構えると左右に尻尾を振っていた。


ガチャ──


ドアが開く。


あくたですけど、先生います?」


若い声。

その瞬間、VALLはしょげたように耳を伏せ、

土間の手前でぺたんと伏せてしまった。


(瑞樹殿ではなかったのでな、吽雲璃よ)


阿摩那の声が、

空気の揺らぎのように京一の背後で響く。


(だからさっきから違うと申しただろう。

気配で分からぬでもあるまい?

出向けば匂いで分かったのではないか)


吽雲璃が、申し訳なさそうに返す。


(阿摩那様……そう言われても、

まだ馴染めませぬ……)


京一はVallを追って廊下に出ていた。

玄関の方を見て、


「ああ……来たか」 と小さく息を吐いた


「先生、この間のコラム評判よかったですよ。

“バード大尉迷走―その真実とは”

先生に依頼した甲斐がありました」


玄関で芥が、

資料の入った薄い封筒を胸に抱えながら頭を下げる。


京一は眉をひそめた。


「最近の都市伝説系って、

どれも“サムネで釣って中身スカスカ”なんですよね。

三分で作ったみたいなテンプレばかりで……

特に動画なんて来たら最低で、誤字脱字は当たり前ですし。

先生の原稿みたいに“ちゃんと調べてる匂い”がするもの、

ほんと少ないんですよ。

こういう時代だからこそ、先生みたいな人が必要なんです。」


芥は憤懣やるかたなしとばかり、

都市伝説界隈の現状を口早にまくし立ててしまったが、

それでも笑みを絶やさず、京一に何度もお辞儀をした。


やり取りを聞き入るように片耳を立てていたVALLは、

しょげかえったように伏せたまま、静かに身じろぎもしなかった。


(瑞樹殿ではありませんでしたか……

まあ、そういう日もございますね。

ですが阿摩那様。お見事でございました)


VALLは大きくあくびをすると、

二人の会話など気にも留めず、

そのまま伏せ寝を決め込んだ。


京一はVALLの大きなあくびにつられ、

首をさすりながら自分もひとつ欠伸を漏らした。


小さくため息をつき、芥の方へ視線を向ける。


「おい、“先生”はよしてくれ。

お前さんの方が年上じゃないか」


芥は苦笑して、ゆっくりと首を振った。


「いえいえ、先生は先生ですよ。

僕なんて、まだまだ勉強中ですから」


「まあいいさ…て…今日は何の用だ」


「それです、それ 今日は次の依頼を…」

返事半ばに、カバンを探り

しまい込んだ資料入り封筒を差し出した。


「立場話もなんだから 中は入れよ」


「ではお琴名に甘えて 失礼します」

資料をカナンにしまい込み、

ハンカチで汗をぬぐいながら

そろそろとリビングに入っていった。


カウンターの上には

自動ミル挽サイフォンが置かれていた。

ブルーマウンテンの銘柄が入った

新しいコーヒー豆が置かれていた。


廊下背伏せ値をしてたVallは、

脚音を合図に二人の後をとことこ歩いて行った。


(阿摩那様 時間ですよ!……もとい…出番ですよ)


(わかっておる。任せるがよい)


(期待しております。)


(京一殿の懐が心もとないと

我らも居心地がよろしくない)


(左様です それに…

あの方と脳約束もございますから)


VALLがとことこ歩く足音が、

リビングの奥へと消えていった。


京一が座る椅子の近くまで来ると、

ディスプレイに向けて鼻を鳴らすと

その場で伏せ寝を始めた。


まどろむ光に溶け込むように、

阿摩那のキャラが軽く揺らいだ。


◆火星探査隊 ―赤塵の遺構―

【西暦2137年 4月12日 17:42(MST)】

惑星開発セクション探査部室内


「やれやれ

今日の難なく工程表更新完了!ッと」


「開拓進捗率 70%達成ね…あと少し」

「現場からのアクシデントレポもなかったし!

 とっとと帰るとしようかな」


席を立ちかオフラインパネルに触れようとしたとき、

ホログラムディスプレイには

サウンドオフの表示とともにメッセージが表示された


*******************

To: Arisa Vale

Classified Directive


“Report to the Investigation Division Office at 06:00 Earth

Standard Time and meet with the Division Chief.

This order is strictly confidential.

<本通達は極秘扱いとする>

— Director of Human Resources

<人事部長>

***************


「アリサ・ヴェイル殿……私宛ね  極秘通達…極秘扱い?」


<地球時間6:00に調査部執務室へ出向き、

室長と面会すること>


「え?私 なにかやらかしたのかしら?」

「6:00って業務前じゃないの!早朝手当付与してよね」

ミ無茶ぶりもよしてよーとばかりに、

不満をディスプレイにぶつけた。


「そういうことなら…退散!退散!」


再びオフラインに指を伸ばそうとしたとき

ホログラムは新たなメッセージを表示した。


*******************

“The details will be communicated to you at a later time.

Any information you acquire is not to be disclosed to colleagues,

family members, or any outside party.

A formal gag order will be enforced within the organization.

Conduct yourself accordingly.

End of notice.


***************

「まだあるの? えっと・・・

<内容は追って伝えるが、

知りえた内容は同僚・家族・他人には一切語らぬこと。

更に組織でも緘口令を敷くので

そのつもりでいたまえ。・・・以上。…って……」


あまりにも一方的な文面に深くため息をついた。


「 “If I talk, I’will be punished…

fired on the spot?”」

「 “What did I even do to deserve this…” 」

<口外したら処罰対象…強制解雇ってこと?>

<いったい何なのよ 私が何したっていうのよ>


アリサは揺れる車内で昨日のことを思い返していた。


ローバーは低い唸りを響かせながら、

砂を押し分けるように車列は進んでいく。


アルカディア平原に広がる開拓都市……

その中心部を出発してからいく日が過ぎた。

道程に大きな障害はなく、隊列はほぼ予定通りに

シドニア地域へ向けて順調に距離を縮めている。


車内に無表情の音声が時を告げた。


「地球歴(西暦2137年)4月19日。

現在時刻──06時42分。

出発から七日が経過。」


繰り返される単調な風景に大きく欠伸をした。


「了~~解…っと!

 ……それにしても、何事もなく走破できたなんて、

 ちょっと拍子抜けだな~」


前を向いたまま、

操縦系AIの定時アナウンスにすら飄々と返していた。


「最後まで気を緩めない! ジェリー。

 こういう時こそ足元をすくわれるんだから……

痛い目に遭いたくないでしょ」


ジェリーは肩をすくめ、軽く敬礼すると、

左右前輪連動スロットルレバーのオートモードを解除した。


「了~~解! おば……いえ、…Ye……

Yes, ma’am!」


アリサの眉がピクリと動く。


「……ん? 今、“おばさん”って言いかけた?」


ジェリーは慌てて前方を向き直り、

アクセルをほんの少し踏み込みながら言い訳を重ねる。


「い、言って…ませんよ! 言いませんとも!」


「空耳ですよ! 僕はただ…

“大判狂わせが起こりませんように”…

 そう言いたかっただけですよ」


アリサは半眼になって、じっとジェリーを見つめる。


「……ほんと?」


「本当ですよ!」

ジェリーは勢いよくアリサの方へ向き直った。


その瞬間──

ローバーが大きく左右の揺れた


「しっかり前を見なさい」


アリサの拳が、

“コツン”と軽くジェリーの頭に落ちた。


「いってぇ……!」


ジェリーは頭を押さえながらも、

スロットル握り直し、前方へ視線を戻した。


ジェリーは小声でブツブツ言いながら、

アリサの視線を避けるように前方を見つめていた。


「僕から見れば一回りも上なら、

れっきとした おば……」


アリサの目がすっと細くなる。


「……おば? どうしたって? ん? ん?」


ジェリーは不満たらたらと呟いた。


「歳が一回りも上だから“おばさん”でいいじゃないか」

ジェリーは小声でぶつぶつ言った


「一回り上だろうと、ここでは貴方の上司……

わ・た・し・は レディ…なのよ 判った? 坊や」


「Yes, ma’am!」


アリサはわざとらしく微笑み、

ジェリーの肩を軽く指でつつく。


「そう。それでいいのよ、ジェリー」


ジェリーは顔を赤くしながら、

ハンドルを握り直した。


一連の会話を聞き入っていたリサが

クスリと笑って口を挟んだ。


「ああは、これじゃまるで姉弟の会話ですね」


アリサとジェリーが同時に反応した


「なんだって」「なんですって」


「ほら!同じ・・・くっ・くっ・・あはは」




一方、

穏やかな車内の空気とは裏腹に、

ローバーの上空では一機……いや、

数機の偵察ドローンが車列と同調するように

静かに軌道を描いていた。


薄い大気を切り裂くように漂うその群れは、

まるで獲物を探す鳥のように

一定の距離を保ちながら周回している。


そのうちの一機が、

進路先の一点で急に動きを止めた。


次の瞬間、

残りのドローンたちが一斉にフォーメーションを組み直す。


まるで戦闘機がロックオンしたかのような、

鋭い収束だった。


「ビンゴ!」


「このルートで間違いない」


コントローラーを強く握る伊織・レイヴンが呟く。


「……こんなところで役に立つとは」


その声にアリサが短く応じる。


「進路そのまま! 後続車に一斉通達!……遅らせないように」


車内は、外の赤い荒野とは対照的に薄暗く、

計器類の青白い光だけが乗員の顔を照らしていた。


低圧の火星大気では外の音はほとんど伝わらない。

だが、車体を通して伝わる 低い振動 が、

床下から“ゴゴ…ッ”と骨に響くように感じられる。


シートは耐衝撃用のハーネスで固定され、

乗員は揺れに合わせてわずかに身体を預ける。

天井には

折り畳まれた救急キットと酸素ボンベが収納されている。


前方の三面ホログラムは砂嵐を透過表示し、

ドローンのテレメトリが絶えず流れている。

車内の空調は乾いた風を送り、

火星特有の“静けさ”が乗員の呼吸音を際立たせていた。


アリサは前を見据えながら

心の声ともつかない囁きを投げかけた。


「この先に何があるというのよ」


床下にカムフラージュされた

荷室の扉に視線を巡らせると、

眉を細めてにらみつけた。


黒塗りの耐衝撃ケースが全部で6箱 ―

整然と並び収納さている。

その全てに

“SPLG‑11

Single‑Particle Linear Gun“の刻印がある。


(SPLG…スプリガン…)


「……これも秘密の一つとでも言いたいの」


計測機器の積み荷に紛れ込み、

密かに収納された物騒な代物は、

他のメンバには知らされていなかった。


調査にしては不釣り合いな荷物の存在に、

アリサは困惑した。


(たかが調査ごときに……?

  こんな物騒な代物が要るのよ……)


「どうかしましたか」


考え込むアリサを気遣ったのか、

ミラ・サンチェスが尋ねた。


「何か心配事でも?」


「いや、なんでもないわ」


ふとミラがアリサに耳もとに顔を寄せ

口元を手隠し耳もとでささやいた。

その気配に反応したアリサは、

聞き耳を立てるように頭を傾けた。


「…ん・何?」


「隊長!ひょっとして床下の隠し荷物って…

スプリガンですか?」


「ど・・・どうして! それを…」


「しっ!静かにしてください」

これ機密事項…なんですよね わかっています」


ひそひそ話をやめると、ミラはニコリと笑った。


「誰にも言いません。ご安心を…」


「しかし、なんで知っている?」


「機密事項なんて…その気になれば…ね」


「まさかハッキング!」


「しっ! 聞こえちゃいますよ。

前々から胡散臭いとにらんでいました」

「財団は他にも隠し事あるようです。

それが何かわかりませんけれど…」


ミラの表情が微かに曇った。


「悪いことは言わない。

これ以上は詮索しないほうが身のためよ」

諭すようにミラの肩を軽く揺すり

再び床下のケースへと視線を落とした。


(……何だか嫌な予感がしてきたわ)


ミラとのひそひそ話が途切れた……、

その瞬間だった。


「なんです? スプリガンのことですか?」


レオン・ハルステッドが、

前方のモニターカメラを凝視したまま、

能天気に言い放った。


軽い受け答えに

アリサとミラが同時に視線を合わせて固まった。


レオンは気にも留めず、淡々と語り始めた。


「SPLG‑11《スプリガン》。

高圧縮粒子弾を用いた可変式衝撃投射システムを採用。

本来は軍事部門向けの開発品ですが、

実用化の目途が立ったため、

“実戦テスト品”として貸与された…

…って処ですか?…ね」


アリサは思わず息を呑んだ。


レオンはさらに説明を重ねる。


「自己診断機能、耐環境性、低温下での安定動作。

それに、火星大気でも減衰しにくい衝撃波特性が──」


「ちょ、ちょっと待って!」


アリサは天井を仰ぎ、両手で顔を覆った。

「な……なんてこと……

機密って、いったい何なのよ……」


呆然とするアリサをよそに、

レオンはまだ続けようとしていた。


「開発経緯としては、初期モデルが──」


“Stop… please, don’t say any more.”

<やめて…お願い、それ以上は言わないで>


アリサの制止に、

レオンはようやく口を閉じた。


ローバーの車内に、

火星の薄い大気よりも重い沈黙が落ちた。


「ところで

自律修復型CO₂還元装置って…

何かで聞いたのですが…一体何ですか?」


レオン・ハルステッドは、

前方の砂嵐を映すホログラムから視線を外さないまま、

まるで“封印された記憶”を引きずり出すように

静かに口を開いた。


「……それはだ・な…」


アリサとミラが同時に息を呑む。


レオンは続けた。


「火星開拓初期に投入された装置だ。

大気のCO₂濃度を下げ、酸素濃度を上げるために…な。」


人指し指を一本立て、淡々と続けた。


「自律浮遊型。太陽光で稼働し、

CO₂を吸収してO₂を生成する。」


アリサは瞬きを忘れたように聞き入る。


「さらに──

自己修復・自己増殖機能を持つ。」


「……増殖?」


「そうだ。

大気中を漂いながら“空気を作る”。

それはもう

当時とすれば画期的な“救世主技術”と呼ばれた。

……そのはずだった……だけどな!」


レオンの声は淡々としているのに、

どこか“言い淀み”が混じっていた。


アリサはその違和感を拾いながら、

荷室の方へ視線を落とした。


「……そのはずだった?

画期的な“救世主”が…?」


レオンは答えなかった。

ただ、前方の砂丘の向こうを見据えたまま、

眉間に深い皺を刻んだ。


ローバーは低い唸りを響かせながら、

砂を押し分けるように車列は進んでいった。



◆不変のない日常の不偏

長々と続く芥の愚痴を、

京一は椅子に深く座り込み、

掌を頭の後ろで組んだまま、退屈そうに聞き流していた。


「で……本題は依頼の件、なんだよね?」

「あっ! 申し訳ありません!

 つい力が入っちゃいました!」


京一は心の中で、

“芥の前では二度と都市伝説というワードを口にすまい”

と固く誓った。


「……で、本題は依頼の件……だ・よ・ね、芥さん」

歯止めのつもりで語気を強めたが

年上であることの経緯は忘れず口調をやわらげた


「はい! そのことで伺いました、ハイ!」

芥は姿勢を正し、

まるでスイッチが入ったように真面目な顔になる。


「じつは、今度先生に依頼したいのは──」


京一は、つい口が滑った。


「……また都市伝説絡み、なんだろ?」


芥の目がキラリと光った。


「あっ、はいっ! もちろんですとも!

 今回はですね──!」


京一(……やっちまった。

  今、自分で地雷踏んだな……)


芥はのそりとソファーから立ち上がり、

京一が座っている椅子のそばまで歩み寄ってきた。


携えてきたカバンをそっと持ち上げ、

中に入れ封筒をゆっくりと取り出した。

封筒は角が少し丸まり、

何度も読み返したような折れ跡がついている。


「こちらに……まとめてきました。

 先生に依頼したい件の資料です」


京一は思わず眉をひそめた。









案の定、ピラミッドの都市伝説についての語りが始まった。

「まずですね京一先生、ピラミッドというのは──

 ただの墓じゃないんですよ。

 配置、角度、方位、そして“意図”があるんです」


彼の能書きはこうだった。

【芥・調査メモ】

① エジプトのピラミッドは方位が異常なほど正確である。

四辺はほぼ誤差ゼロで東西南北を向き、

現代の測量技術でも再現が難しい精度を持つ。


② 三大ピラミッドの配置は、オリオン座の三ツ星と一致する。

星の並び方、間隔、角度──

すべてが“空の地図”を地上に写したように対応している。


③ 大回廊の構造は、出雲大社の古代神殿の構造と一致する。

特に“斜めに伸びる巨大な通路”の比率が酷似しており、

文化圏を超えた共通性が見られる。


④ ピラミッドの地下には、巨大な空間と構造物が存在するという噂がある。

未調査領域が多く、

“地下神殿”と呼ばれる空洞の存在が囁かれている。


⑤ 日本にもピラミッドがあると主張した人物がいた。

  ──酒井勝軍さかい かつとき

彼は日本各地の山々を“古代のピラミッド”と位置づけ、

その配置が“ある星座”と対応すると説いた。


(……やっぱり厄介なやつか。

 いや、そもそも“都市伝説”って言葉を

 自分で踏んだのが悪いんだけどさ……

語られるよりはマシか)

と、半ば諦めて読み進めた。


彼の能書きを読み返したあと、

芥は封筒の端を指でなぞりながら、ぽつりとつぶやいた。


「……酒井勝軍さかい かつときに触れた場合、

 竹内巨麿と絡んで──

 竹内文書について触れることになります」


京一は反射的に声を上げた。


「ちょっと待った!」


椅子がわずかに軋む。

芥は驚いたように目を瞬かせた。


京一は思わず口を押さえ、

(……やばい。

 その単語だけは、絶対に出したくなかったのに)

と、内心で頭を抱えた。

「それだけは触れたくない。

 竹内文書だろ……いわゆる“地球創生”から語られてる、

 スケールの大きい古史古伝だよな。

 それも“偽書”扱いされてる。

 それだけは……」


芥は遠慮がちに問い返した。


「だめ……ですか?」


京一は深く息を吐き、

言葉を選ぶようにゆっくりと続けた。


「だめも何も……内容が内容だ。

 竹内文書が“存在する”だけで面倒なんだよ。

 現に“正統竹内宿祢”を継ぐ者が現れて、

 門外不出とされてきた口伝を、

 あえて“公開”してる……」


京一は顔をしかめ、

封筒を机に置いた。


「……それで十分だ。

 俺が扱えるような代物じゃない。

 それだけは断る。」

「……では、こうしましょう。

 酒井勝軍から竹内文書へ向かう“その線”は追わないことにして、

 別のアプローチを試みてはどうでしょう」


京一は眉をひそめた。


芥は、少しだけ声を落として続けた。


「……例えば──

 レイラインとか、ね」


京一のこめかみがピクリと動いた。


(……おい。

 それはそれで、別の意味で面倒なんだが……)

「レイラインだって?」


京一が眉をひそめた瞬間──

Vall が反射的に耳をピンと立てた。


次の瞬間、

足元にいたはずの小さな影が、

勢いよく京一の膝へ飛び乗ってくる。


「Vall、今打ち合わせ中だから邪魔しないでくれ。

 おとなしくしろ、ステイ!」


しかし Vall はまったく従わない。


前足で机の縁を押し、

芥の資料をバサッと散らしながら、

軽く一声、吠えた。


京一は思わず顔をしかめる。


「……おい、やめろって……!」


……わかった。引き受けるよ。

 だけど──条件がある」


「条件、ですか?」


京一は指を一本立てた。


「どんなに関連性が見えても、

 古史古伝には一切触れない。

 これは絶対だ」


芥は背筋を伸ばし、真剣にうなずいた。


「承知いたしました。

 それしかありません」


京一は続けようとして、

一度言葉を飲み込んだ。


「それと……」


「まだ何か?」


「ピラミッドといえば、その……なんだ……」


“都市伝説”と言いかけて、

京一は口ごもった。


「月や火星にもある、っていう噂があるよな」


芥の目がわずかに輝く。


「ええ、確かに……

 では、それもお願いできるんですか?」


京一は即答した。


「いや、断る」


「なぜです?」


京一は深く息を吐いた。


「スケールが大きすぎるし、データは乏しい。

 ましてや──火星の人面岩だって、

 結局はパレイドリア現象で決着がついてる。

 NASAも認めてる。

 敢えて掘り返す理由はないよ」


芥は少しだけ肩を落としたが、

その目の奥には、まだ火が残っていた。


……では、宇宙の話はいずれまたの機会として……。

 ですが先生──

 ピラミッドや遺跡を結ぶレイラインの検証は避けられませんよ」


京一はこめかみを押さえ、深く息を吐いた。


「……お前、結局そこに戻すのか」


その瞬間、

足元で伏せていた Vall の耳が、

ピクリと反応した。

◆不変のない日常の不偏

長々と続く芥の愚痴を、

京一は椅子に深く座り込み、

掌を頭の後ろで組んだまま、退屈そうに聞き流していた。


「で……本題は依頼の件、なんだよね?」

「あっ! 申し訳ありません!

 つい力が入っちゃいました!」


京一は心の中で、

“芥の前では二度と都市伝説というワードを口にすまい”

と固く誓った。


「……で、本題は依頼の件……だ・よ・ね、芥さん」

歯止めのつもりで語気を強めたが

年上であることの経緯は忘れず口調をやわらげた


「はい! そのことで伺いました、ハイ!」

芥は姿勢を正し、

まるでスイッチが入ったように真面目な顔になる。


「じつは、今度先生に依頼したいのは──」


京一は、つい口が滑った。


「……また都市伝説絡み、なんだろ?」


芥の目がキラリと光った。


「あっ、はいっ! もちろんですとも!

 今回はですね──!」


京一(……やっちまった。

  今、自分で地雷踏んだな……)


芥はのそりとソファーから立ち上がり、

京一が座っている椅子のそばまで歩み寄ってきた。


携えてきたカバンをそっと持ち上げ、

中に入れ封筒をゆっくりと取り出した。

封筒は角が少し丸まり、

何度も読み返したような折れ跡がついている。


「こちらに……まとめてきました。

 先生に依頼したい件の資料です」


京一は思わず眉をひそめた。


芥は封筒を両手で差し出し、

期待と緊張が入り混じった目で京一を見つめていた。


案の定、ピラミッドの都市伝説についての語りが始まった。

「まずですね京一先生、ピラミッドというのは──

 ただの墓じゃないんですよ。

 配置、角度、方位、そして“意図”があるんです」


彼の能書きはこうだった。

【芥・調査メモ】

① エジプトのピラミッドは方位が異常なほど正確である。

四辺はほぼ誤差ゼロで東西南北を向き、

現代の測量技術でも再現が難しい精度を持つ。


② 三大ピラミッドの配置は、オリオン座の三ツ星と一致する。

星の並び方、間隔、角度──

すべてが“空の地図”を地上に写したように対応している。


③ 大回廊の構造は、出雲大社の古代神殿の構造と一致する。

特に“斜めに伸びる巨大な通路”の比率が酷似しており、

文化圏を超えた共通性が見られる。


④ ピラミッドの地下には、巨大な空間と構造物が存在するという噂がある。

未調査領域が多く、

“地下神殿”と呼ばれる空洞の存在が囁かれている。


⑤ 日本にもピラミッドがあると主張した人物がいた。

  ──酒井勝軍さかい かつとき

彼は日本各地の山々を“古代のピラミッド”と位置づけ、

その配置が“ある星座”と対応すると説いた。


(……やっぱり厄介なやつか。

 いや、そもそも“都市伝説”って言葉を

 自分で踏んだのが悪いんだけどさ……

語られるよりはマシか)

と、半ば諦めて読み進めた。


彼の能書きを読み返したあと、

芥は封筒の端を指でなぞりながら、ぽつりとつぶやいた。


「……酒井勝軍さかい かつときに触れた場合、

 竹内巨麿と絡んで──

 竹内文書について触れることになります」


京一は反射的に声を上げた。


「ちょっと待った!」


椅子がわずかに軋む。

芥は驚いたように目を瞬かせた。


京一は思わず口を押さえ、

(……やばい。

 その単語だけは、絶対に出したくなかったのに)

と、内心で頭を抱えた。

「それだけは触れたくない。

 竹内文書だろ……いわゆる“地球創生”から語られてる、

 スケールの大きい古史古伝だよな。

 それも“偽書”扱いされてる。

 それだけは……」


芥は遠慮がちに問い返した。


「だめ……ですか?」


京一は深く息を吐き、

言葉を選ぶようにゆっくりと続けた。


「だめも何も……内容が内容だ。

 竹内文書が“存在する”だけで面倒なんだよ。

 現に“正統竹内宿祢”を継ぐ者が現れて、

 門外不出とされてきた口伝を、

 あえて“公開”してる……」


京一は顔をしかめ、

封筒を机に置いた。


「……それで十分だ。

 俺が扱えるような代物じゃない。

 それだけは断る。」

「……では、こうしましょう。

 酒井勝軍から竹内文書へ向かう“その線”は追わないことにして、

 別のアプローチを試みてはどうでしょう」


京一は眉をひそめた。


芥は、少しだけ声を落として続けた。


「……例えば──

 レイラインとか、ね」


京一のこめかみがピクリと動いた。


(……おい。

 それはそれで、別の意味で面倒なんだが……)

「レイラインだって?」


京一が眉をひそめた瞬間──

Vall が反射的に耳をピンと立てた。


次の瞬間、

足元にいたはずの小さな影が、

勢いよく京一の膝へ飛び乗ってくる。


「Vall、今打ち合わせ中だから邪魔しないでくれ。

 おとなしくしろ、ステイ!」


しかし Vall はまったく従わない。


前足で机の縁を押し、

芥の資料をバサッと散らしながら、

軽く一声、吠えた。


京一は思わず顔をしかめる。


「……おい、やめろって……!」


……わかった。引き受けるよ。

 だけど──条件がある」


「条件、ですか?」


京一は指を一本立てた。


「どんなに関連性が見えても、

 古史古伝には一切触れない。

 これは絶対だ」


芥は背筋を伸ばし、真剣にうなずいた。


「承知いたしました。

 それしかありません」


京一は続けようとして、

一度言葉を飲み込んだ。


「それと……」


「まだ何か?」


「ピラミッドといえば、その……なんだ……」


“都市伝説”と言いかけて、

京一は口ごもった。


「月や火星にもある、っていう噂があるよな」


芥の目がわずかに輝く。


「ええ、確かに……

 では、それもお願いできるんですか?」


京一は即答した。


「いや、断る」


「なぜです?」


京一は深く息を吐いた。


「スケールが大きすぎるし、データは乏しい。

 ましてや──火星の人面岩だって、

 結局はパレイドリア現象で決着がついてる。

 NASAも認めてる。

 敢えて掘り返す理由はないよ」


芥は少しだけ肩を落としたが、

その目の奥には、まだ火が残っていた。


……では、宇宙の話はいずれまたの機会として……。

 ですが先生──

 ピラミッドや遺跡を結ぶレイラインの検証は避けられませんよ」


京一はこめかみを押さえ、深く息を吐いた。


「……お前、結局そこに戻すのか」


その瞬間、

足元で伏せていた Vall の耳が、

ピクリと反応した。


「……わかった。引き受ける。

 だが、それでも“世界”に及ぶとスケールが大きい」

そうだな──数編構造にしていいか?」


芥は京一の提案に阿ts真顔付かないでいた。

「数編構造?」


京一は指を降りながら芥に構想を語った。


「国内編、西欧・中央アジア編、

 北米・中南米編、太平洋編……

 あとは評価を見て考えたがどうする?」


京一は皮肉を込めてにやりと笑い返した。


「……書いてくあさるなら、その条件で構いません」


あまりにも無茶ぶり返しに芥は額の汗をぬぐった


「いくら何でも独断はまずいだろう。

 上にお伺い立てなくてもいいのか?」


「そこは何とかねじ込みますから。ハイ!」


京一は額に手を当てた。


「……没ったら生活に響くのだがな」


芥は肩をすくめた。


「それはそれで……弱りましたね」


京一は深く息を吐いた。


「……手応えを探る意味で、まずは 国内編 にしよう」


芥は満面の笑みを浮かべた。


「わかりました!」


資料をまとめ直し、立ち上がる。


「では、私はこれで失礼します」


部屋の空気が、ようやく静けさを取り戻した。


足元の Vall が、

京一の膝に鼻先をそっと押しつけてきた。





「……わかった。引き受ける。

 だが、それでも“世界”に及ぶとスケールが大きい」

そうだな──数編構造にしていいか?」


芥は京一の提案に阿ts真顔付かないでいた。

「数編構造?」


京一は指を降りながら芥に構想を語った。


「国内編、西欧・中央アジア編、

 北米・中南米編、太平洋編……

 あとは評価を見て考えたがどうする?」


京一は皮肉を込めてにやりと笑い返した。


「……書いてくあさるなら、その条件で構いません」


あまりにも無茶ぶり返しに芥は額の汗をぬぐった


「いくら何でも独断はまずいだろう。

 上にお伺い立てなくてもいいのか?」


「そこは何とかねじ込みますから。ハイ!」


京一は額に手を当てた。


「……没ったら生活に響くのだがな」


芥は肩をすくめた。


「それはそれで……弱りましたね」


京一は深く息を吐いた。


「……手応えを探る意味で、まずは 国内編 にしよう」


芥は満面の笑みを浮かべた。


「わかりました!」


資料をまとめ直し、立ち上がる。


「では、私はこれで失礼します」


部屋の空気が、ようやく静けさを取り戻した。


足元の Vall が、

京一の膝に鼻先をそっと押しつけてきた。



◆~行く手を阻む障害との攻防~

ローバー全体が、

突然 横から殴られたように 大きく揺れた。


「っ……何だ!?」


警告灯が一斉に赤へ切り替わり、

車内に警報が鳴り響く。


「襲撃です! 外部から衝撃波──方向不明!」


「ちょ、ちょっと待て……

 遺跡を見つけたんじゃなかったの?

 なんでいきなり攻撃される!?」


「わかりません!

発信源も目的も不明!

 今、解析を急いでいます!」


ローバーが再び大きく跳ね、

天井の器具がガチャリと揺れた。


「NOA! 状況分析急いで!」


「Yes. Yes, ma’am!

 ──解析開始。

 外部干渉、通常の地形振動とは一致しません。

 攻撃性のあるパターンを検出……!」


「攻撃性って何だよ!?

 生物か? 地形か? 人工物か!?」


「判別不能!

 ただし──

 “何か”がこちらを狙っている確率、七八%に上昇!」


ローバーの外で、

赤い砂が爆ぜるように跳ね上がった。


「来るぞ──第二波!」

◆火星探査隊 ―赤塵の遺構―

加筆修正しました


◆不変のない日常の不偏

◆~行く手を阻む障害との攻防~

二編追加投稿しました

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