第一章・邪を祓う少女 (8-1)
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この一週間の間、トモエはこの邪霊を捜し続けていた。邪霊がまだ邪魂だった頃からその痕跡を追い続け、そして今ようやっと邪霊へとたどり着いたのだ。
トモエと邪霊は対峙し合っていた。しばらくの間、どちらもピクリとも動くことなく、互いが互いを睨み続けていた。
しかし、緊迫した空気は一瞬にして吹き飛んだ。
バチィン! というすごい音が辺りに響く。邪霊が螺旋状のつるで、トモエに攻撃を仕掛けたのだ。それとほぼ同時にトモエは跳んだ。つるは立てかけられて並んでいた鉄パイプに激突した。鉄パイプが激しい音とともに一瞬で粉々になった。
邪霊は再びトモエに向け、つるを伸ばしてきた。彼女を突き刺すくらいの勢いで向かってくる。トモエは空中に手をかざし力を込めると、かざした手の先にドーナツ形をした物体が浮かび上がった。ギリギリギリギリ……と音をたて、それは閉じられた螺旋の二本鎖を徐々にこじ開けてゆく。こじ開けられた螺旋の隙間を縫って、トモエは邪霊へと迫っていった。そして邪霊の至近距離まで来た時、
「やあっ!」
勢いよく放ったトモエの拳から爆風がドンッと飛び、邪霊は吹き飛ばされた。トモエは空間を歪めて邪霊の後ろにワープし、腰に差した剣を抜く。ズバァッ、と剣は邪霊の身体を切り裂いた。しかし一瞬でその部位は回復してしまう。
トモエは攻撃の手を緩めず、まるで乱舞するかのように邪霊をメッタ斬りにした。しかし、一瞬の隙をつかれ、邪霊の目には見えない砲撃をもろに喰らってしまった。バンッ、という音とともにトモエは吹き飛ばされた。間髪いれず、バンッ、バンッ、と立て続けにトモエは撃たれ、壁に激突し、地面に落ちてぐったりとなった。
すかさず、邪霊は螺旋のつるをトモエに向けて伸ばしてきた。トモエはうなだれたままに手をさっとかざす。掌から青色に光る二重螺旋が伸びた。邪霊の二重螺旋が強制的な力で無理やりこじ開けられ、そこにほどけた青色の螺旋が絡みついて進行を止めた。
「これが防御の螺旋」
トモエは顔をあげ、得意げな表情で云った。
トモエは立ち上がり、猛獣のような勢いで駆けだした。邪霊はバンバンと目には見えない砲撃を手数が如く繰り出すが、トモエはするするとかわして跳び上がった。上空から邪霊に向かって手をかざし、クルクルと円を描くように腕を回した。すると、赤く光る二重螺旋がグルグルと渦を巻く。トモエはそれを繰り返し、同じような赤い円の集合体をいくつも作った。
「そしてこれが攻撃の螺旋!」
円の中心から、ドカンドカンと弾丸が次々に飛び出した。空中からの集中砲撃を受け、たまらず邪霊はトモエから背を向けた。
「逃げんな!」
トモエは上空から剣を振り下ろした。鋭い一撃が激しい赤光を伴って、邪霊を斬り裂いた。彼女はそれから、胸の宝石に手をやった。宝石が緑色に輝く。手を剣の刃に沿わせると、刃全体が緑色の強烈な光を放った。
「浄化ッ!」
というトモエの叫び声とともに、輝く刃が再び邪霊の身体を斬り裂いた。
ギュワアァァァァァァ! という叫び声をあげながら、邪霊は徐々に削れてゆき、最後には完全にその姿を消した。
戦いを終えたトモエは、手を顔の前に掲げ目をとじた。
「邪悪なものに侵されし憐れな者よ。せめて魂は安らかに眠りたまえ」




