第9話
新キャラ登場です。どうぞ。
紫と別れてから数日、流零と藍は木々の並ぶ道をいつものように歩いていた。
おもむろに流零が荷物から手のひらサイズの紙を取り出すと、それをまじまじと見つめる。
「また見てるのか?紫から貰った通信用の式符」
「まあな。この紙切れで簡単に連絡が取れるってんだから、紫の奴は大したもんだぜ」
流零が見ていたのは、紫が協力に対するお礼としてくれた通信用式符というものである。
これは流零達から紫に用がある時に使うもので、効果は既に確認してある。
「確かに、こんな便利なものを作れる彼女は凄いな。機会があれば符術を教わってみようかな」
「ふっ、お前ならすぐに覚えそうだ……おい藍、前見てみろよ」
式符の話で盛り上がっていると流零が何かに気付き、前方を指差して藍に声をかける
「ああ、海か。いつの間にかこんなところまで来ていたんだな」
二人の前方に広がっていたのは大きな浜辺と青く美しい雄大な海だった。
潮風に吹かれながら二人は浜辺へ足を進めていく。
「ふふっ、海なんて久しぶりだからなんだかワクワクしてくるな」
「おう、それに今日は天気もいいしな。お?向こうには岩場があるみたいだから、久々に海釣りでも楽しむとするか」
久しぶりの海に心を弾ませながら流零が見つけた岩場へと二人は移動する。
「釣り竿は二つあるからいいし、餌はそこらの虫でもミミズみたいなので大丈夫だな」
「いつも思うんだが、解毒薬やら釣り竿やらが入ってるその荷物袋は一体どれだけ物が入っているんだ?」
「秘密だ」
藍の疑問を一言で切り捨てながらも、荷物袋から道具を取り出して準備を進めていく流零。
準備を終わらせると藍に釣り竿を一本渡して、自分は早速釣りを始めようとする。
「よっしゃあ!たくさん釣りまくるぜ!」
元気よく釣り竿を振りかぶって餌の付いた釣り針を海に飛ばそうとする流零だったが。
「流零、この釣り糸が切れそう……きゃあ!?」
「どうし……ぶはっ!?」
なんと流零の竿の釣り針がちょうど後ろに来ていた藍の着物の裾に引っ掛かり、大きくめくってしまったのだ。
後ろを振り向いた流零は、下半身が下着丸出し状態の藍を見て鼻血を吹き出してしまう。
「流零……お前という奴は……」
「ま、待て!わざとじゃない、わざとじゃない!」
羞恥心で顔を真っ赤にしながらも、怒りで体を震わせて近付いてくる藍。
流零は必死に弁解するも鼻血を出しながらでは全くしまらない。
「こんのスケベ野郎ぉぉぉぉぉぉ!!」
「本当にわざとじゃないんだぁぁぁぁぁぁ!!」
青年ボコられ中……
流零への制裁が終わり、岩場で釣りを再開した二人は順調に魚を釣っていた。ただ流零の姿は、頭にいくつものたんこぶと頬には平手打ちの跡という痛々しいものであったが。
「……!?流零、何か大物が食いついたみたいだ!手伝ってくれ!」
「おう!分かったぜ!」
突然藍の竿が大きくしなり、流零が手伝いに入る。
「おお!?こいつは結構期待出来そうだな。いくぞ藍!」
「ああ!せーの!!」
大物に期待しながら二人で竿を引っ張りあげると、『それ』は勢いよく岩場に落ちてきた。しかし『それ』は魚ではなく、十代後半ぐらいの見た目をした少年だった。少年は茶色の短髪にそこそこ整った顔立ちで左目に眼帯をしていた。また腰に何か道具を装備しており、灰色の服装をしている。
「こ、これは人間?いや、妖力を感じるから妖怪か?……は!?そんなことより早く水を吐かせないと!」
「こいつは……まさかな……しかし、この力は確かに」
推察するのをやめて素早く少年に水を吐かせる藍。流零は少年を見て藍とは明らかに違う反応をしている。
「流零、この少年を知っているのか?」
「ああ、だが「う……げほっ、げほっ」意識が戻ったみたいだな」
藍が流零に疑問をぶつけたところで少年が目を覚ました。
「あれ?オイラいつの間に助かったんだ?」
「私達がついさっき君を海から引き揚げたんだ」
目を覚ました少年は起き上がると状況を把握しようと周りをキョロキョロする。そんな少年に藍が優しい口調で答える。
「そうなんですか!?ありがとうござ……あれ?そこに居るのはもしかして……流零の兄貴!?」
「その声に呼び方、やっぱりお前か『不知火』」
礼を言おうとした少年は流零を見ると驚いた様子で名を言い、流零も少年の名を呼ぶのであった。
気まぐれ後書きコーナー
藍「…………」
鋼「…………」
藍「何か言うことはあるか?」
鋼「反省も後悔もしておりません」
藍「ならくたばれ作者ぁぁぁぁ!!」
鋼「ぎゃああああ!!」
藍「少し気が晴れたところで今回はここまで。また次回もよろしくお願いいたします」
鋼「よ……よろしくお願いします(ガクッ)」