第8話
今回はありきたりな感じで面白くないかもしれません。
幽香との出会いから日数が経ったある日。小さな川の近くに流零と藍の姿があった。
「はあっ!」
「甘えぞ!そんなんじゃ俺には効かねえよ!」
流零に向けて殴りかかる藍。だが、藍の放った拳は片手であっさりと受け止められてしまう。
「そらよ!」
「わっ!?」
流零は受け止めた拳を掴むと、そのまま片手で後ろに放り投げる。
投げられた藍は背中から地面に叩きつけられてしまった。
「うう、また負けた」
「当たり前だ。接近戦で俺に勝とうなんざ千年早いんだよ」
しょぼくれた様子の藍に流零は余裕たっぷりに答える。
二人が何をしているかというと簡単な話、修行である。藍と行動を共にする前も流零は自分を鍛える目的で日常的にやっていたが、今は藍と二人で手合わせなどをしている。
ちなみに藍はいまだに流零に勝った試しがない。
「次こそは負けないぞ」
「へっ、また返り討ちにしてやるよ」
闘志に溢れた瞳でリベンジを告げる藍に流零は不敵な笑みで返す。
「だんだん日も暮れてきたな。今日はもう終わりにしよう」
「ああ、そうだな。……?」
空の様子を見て今日の修行を終わりにしようと提案した藍に答えた流零だったが、急に何もないところを見つめる。
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもねえ。行こうぜ」
気になって聞いてきた藍に素っ気なく答えると流零はさっさと歩いていき、『?』といった様子の藍もそれに付いていった。
時間は経ち、夜になる。流零と藍は焚き火を間に挟み、向かい合うように座っていた。
「……まだ居やがるな」
「流零、どうしたんだ急に?」
いきなりよく分からないことを口走った流零に怪訝な表情をする藍。
「昼間からこそこそ覗き見しやがって。いい加減出てきたらどうだ?」
「これは失礼しました。お詫び申し上げますわ」
「なっ、何もないところからいきなり!?」
流零が言葉を言い終わると直後に空間が裂けて、その中から見知らぬ人物が現れる。あまりに不思議で突然の出来事に藍は仰天していた。
裂けた空間から現れた人物は女性だった。金色の長髪に紫色の中華風の衣装を身に付け、手には扇子を持っていた。
「初めまして、私はスキマ妖怪の八雲紫と申します。以後お見知りおきを、半人半龍と九尾の狐のお二方」
八雲紫と名乗った女性は扇子で口元を隠しながら笑みを浮かべる。その姿は胡散臭いという表現がぴったりだった。
「俺らのことは調査済みか。ご苦労なこった。で?そのスキマ妖怪が俺らに何の用だ?」
「はい、実は貴方達に頼みたいことがあるのです。」
「頼みたいこと?」
「私は今ある計画を進めているのですが、それに協力していただけないでしょうか?」
流零が要件を聞くと、紫は先程の胡散臭さから一転して真剣な表情で話す。
紫が言うには、人間と妖怪が共存する理想郷を創りたいのだそうだ。人間の技術の進歩は凄まじく、このままではいずれ妖怪や神といった幻想の存在が消えてしまう。それを阻止するための計画に力を貸して欲しいというのだ。
「既に計画はある程度進んでいますが、一人でも多くの協力者が必要なのです。どうかお願いします!」
頭を下げて頼む紫の言葉を聞くと流零は目を閉じて考え込み、藍は黙って流零を見ていた。
「……zzzz」
「寝るな!」
「ぶべっ!?……悪い、難しく考えたら眠くなっちまって」
真面目な話の最中に眠ってしまった流零に藍の鋭いビンタが炸裂し、話は元の流れに戻る。
「確かお前の計画に協力するかどうかだったな。それなら俺は構わないぜ」
「ということは、つまり……」
「協力するって言ったんだよ」
「あ、ありがとうございます!」
流零の答えにとても嬉しそうな顔をする紫。
「いいんだな?流零」
「ああ、話をしてる時のこいつの目には悪意が感じられなかった。そして、何より大きなことをやり遂げようとする覚悟があった。それを信じてみたんだ」
「そうか、なら私もお前と一緒に協力するとしよう」
「ありがとよ、藍」
自分を信じて協力を申し出てくれた藍に、小さな笑みを浮かべて流零は礼を言う。
「協力するって言っても荒っぽいことぐらいしか役に立てねえと思うが、それでもいいか?」
「構いませんわ。協力すると言っていただいただけでも、お二方には感謝しています」
「そうかい、なら俺からも一つ頼みを聞いてもらおうか」
話がまとまってきたところで、今度は流零から紫に頼みがあるようだ。
「これから俺たちと話す時はタメ口でいい。名前も呼び捨てだ」
紫は少し思案すると口を開いた。
「分かったわ。これでいいかしら」
「ああ、そんじゃ改めて俺は流零だ。よろしくな」
「私は藍だ。よろしく頼む」
二人の言葉を受けた紫の目には自然と涙が浮かんでいた。今まで協力者を探すのは難しく、話をしてもバカにされることが多かった。協力を得た時もギリギリまで粘って交渉した結果であった。今回のようにすんなり承諾してくれたのは初めてだったのだ。
「流零……藍……本当にありがとう」
涙を流しながらも綺麗な笑顔で礼を言う紫。それに対して流零と藍はただ黙って微笑みで返すのだった。
この出会いが後で流零達に幸運をもたらすことになるのだが、それはまた別の話である。
気まぐれ後書きコーナー
藍「私って作品内で地味になってないか?」
鋼「そんなことはありませんよ。藍様には見せ場が用意されてますから。どんなとは言いませんけど」
藍「なんだか嫌な予感がするんだが。とりあえず読者の皆様、この作品をこれからもよろしくお願いいたします」
鋼「それではまた次回をお楽しみに!」




