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第31話

遅れて申し訳ありません!低クオリティですがどうぞ!

「まだだ……後少し!」



人気の無い森の奥地。ここに龍人となった流零の姿があった。立ったまま動かないでいるが、その声は苦しそうである。



「うぐっ!?」



突然声を上げると人間の姿に戻り、地面に膝をつく流零。その顔にはおびただしい量の汗が浮き出ており、ポツリポツリと地面に落ちては消えていく。



「はぁはぁ……龍人化に……少しは慣れてきたな。この調子なら大丈夫だろ」



自身の成長を感じているようで、呼吸を乱しながらも流零の表情には笑みが浮かんでいた。





翌日の昼間。流零は屋敷の手伝いで薪割りを終え、縁側で一息ついていると背後に気配を感じて振り向く。



「何だ、妹紅か」

「流零さん、お疲れ様です。お茶でもどうですか?」



そこに居たのはニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべて、持ってきたお茶を差し出す妹紅であった。



「わざわざ悪いな。従者のおっさん達に頼んでもよかったんじゃねえか?」


「ちょうど暇だったから自分で持っていくって言ったんですよ。隣、失礼しますね」



流零はありがたくお茶を受け取り、妹紅も自分の分を手に持つと流零の隣に座る。


時折人が歩く音が聞こえる以外はいたって静かな環境。その中で温かいお茶を味わう二人は穏やかな時の流れを感じていた。



「ところで、流零さんはあそこに行ったことはありますか?」


「あそこ……って何処だ?」



ここで妹紅は突然思い出したように口を開くが、流零は『あそこ』と言われてもピンとこないので聞き返してみる。



「かぐや姫の屋敷ですよ、かぐや姫の。今、都で一番話題になってる場所じゃないですか」


「あー、あれか。屋敷の外回りを見たぐらいだが、確か貴族連中が門の前で行列を作ってたのを見て驚いたぜ」



妹紅の言葉でようやく理解した流零は当時の状況を振り返りながら答えると、一口お茶をすすって小さなため息を出した。


『かぐや姫』。それは絶世の美女として都の中で知らない者は居ないと言われる程有名な人物である。今まで何人もの貴族が求婚しているが、ことごとく断られているらしい。



「かぐや姫のことを高飛車なお嬢様だと思っている人が多いですけど、実際はそうでもないんですよ」


「詳しいんだな。知り合いか?」



興味がわいてきたのか、かぐや姫と親しいような口振りの妹紅に質問する流零。



「ええ、私は彼女と友達なんです。なったのは流零さん達が来る少し前ですが……あ、そうだ!今日はちょうど会いに行こうと思ってたから、流零さんも一緒に来ませんか?」


「俺か?……そうだな、絶世の美女とやらを一度見ておくのも悪くねえか」



手伝い等は大体終わったので、流零は妹紅の誘いを受けてかぐや姫の屋敷へ向かうことにした。




流零が一緒なら大丈夫ということで、不比等からすんなり許可を得て出発した二人。


藤原家の屋敷からだいぶ離れた都の一角にかぐや姫の屋敷はあった。予想通り、今日もかぐや姫目当ての貴族達が門の前に集まっている。



「うっわ、前見た時とほとんど同じだぜ。よく集まるもんだな」


「流零さん、こっちに来て下さい」



流零が門の前の状況を見て顔をしかめていると、妹紅が手招きして呼んできた。


そのまま妹紅に案内されてやって来たのは人気の少ない屋敷の裏口。さっき正面の門を見た時には守衛らしき人物が数人居たが、ここには一人しか居ない。



「おや、これはこれは妹紅様。そちらの男性は見ない顔ですが、お連れ様でしょうか?」



二人に気付いた守衛が話し掛けてきた。どうやらもう顔を覚えてもらったようである。



「はい、一応私の護衛です。中に入ってもよろしいですか?」


「ええ、どうぞ。きっとかぐや姫様も喜ばれるでしょう」



流零のことを簡単に説明し、屋敷に入る許可を貰った妹紅は流零を連れて入っていく。


庭の辺りまで来ると、屋敷の廊下を老人が一人歩いているのが見えた。



「お爺さん、こんにちは。お邪魔してます」


「おお!妹紅ちゃんか!また輝夜に会いに来てくれたんだね。ありがとう」



笑顔を浮かべて行儀の良い挨拶をする妹紅。彼女に気付いた老人はとても喜んだ様子を見せる。



「輝夜は今貴族の方々と会ってるから、そこの部屋で少し待っててくれるかい?ああ、隣の君も遠慮しないで上がりなさい」


「分かりました」


「ありがとな、爺さん」



老人は二人に部屋で待つように言うと、かぐや姫に妹紅が来たことを伝えるためかすぐにその場を後にした。


言われるまま部屋に入った二人が待つことおよそ30分。流零が寝て待とうかと思い始めたところで部屋の戸が開く。



「お待たせ妹紅!今日来た貴族のオヤジ連中がしつこくて……あら、初めてのお客様かしら?」


「あ、輝夜。この人は……」



二人の前に現れたのは黒い長髪が綺麗な少女。言葉からして彼女が噂のかぐや姫なのだろう。



「あんたがかぐや姫か?初めましてだな。俺の名前は流零。旅をしてるんだが、今は仲間と一緒に妹紅の屋敷で居候中だ。よろしくな」


「いかにも私がかぐや姫よ。本名は蓬莱山輝夜って言うんだけどね。……それでどうかしら、噂の美女を見た感想は?」



輝夜が二人の向かいに座ると、初対面ということで流零と輝夜が互いに自己紹介をする。そうすると、ここで輝夜が突然流零に自分と会った感想を聞いてきた。


それに対する流零の答えは……



「んー、思ってた程じゃねえな」


「え?」


「ちょっと流零さん!?いくらなんでもそれは失礼ですよ!」



輝夜の予想とは大きく異なっていた。


平然としている流零と慌てる妹紅を前にポカーンとした表情のまま固まる輝夜。それもそのはず、有名になってから今までそんな言葉を言われたことが無かったからだ。



「……」


「か、輝夜?大丈夫?」



少しすると無言で体を震わせる輝夜。それを見た妹紅は彼女が怒ってしまったのではと思い、心配して声を掛ける。



「ぷっ……くく……アハハハハ!面白い!気に入ったわ、あなた!初対面でそんなこと言ったのはあなたが初めてよ!あ〜、こんなに笑ったのは久しぶりよ」


「俺は思ったことを正直に言っただけだぜ」



なんと輝夜は怒るどころか大笑いをして流零のことを気に入った様子。当の流零はというと表情を変えることなく答える。


何故流零がこんなことを言ったのか?それは元々の性格もある程度関係するが、もっと言うと美人を見慣れてしまっているのだ。


身近なところでは藍や一輪、紫。他には妖怪の山の女性陣・幽香・諏訪子・神奈子など、今まで出会ってきた女性はとにかく美人が多い。


それ故に流零が驚く程の美人などそうそう居ないのだ。



「はあ、心配して損したわ。紛らわしいからやめてよ輝夜」


「ふふふ、ごめんね妹紅。だって貴族の連中は皆私に『美しい』だの『綺麗だ』だの、同じ言葉ばっかり言ってくるからうんざりしてたのよ」



くだけた口調で呆れる妹紅に軽く笑って謝る輝夜。自分を訪ねてきた貴族達への愚痴から、余程嫌がっていることが理解出来る。



「今日もまた同じ愚痴言ってるわよ輝夜。人気者は辛いわね」


「別に私はなりたくてなった訳じゃないわよ。周りが勝手に騒いでるだけ。本当、勘弁して欲しいわ」



妹紅は心配させられた仕返しとばかりに少し意地悪をしてみると、輝夜は心底嫌そうな表情をして項垂れてしまった。それほど精神的にきついということなのだろう。


輝夜と気兼ね無く話している妹紅を見て、流零は輝夜が妹紅にとって良き友人であることを感じる。



「そういや、お前達ってどんな風に知り合ったんだ?」


「え?ああ、流零さんは知らないんでしたね」


「なら私が話すわ」



二人の出会いのきっかけが気になった流零が聞くと、気分を持ち直した輝夜が話を始めた。


それによると、ある日気分転換したくなった輝夜は見張りの目を盗んで外出したそうだ。そして茶屋で一人くつろいでいざ帰ろうとした際に、お金を落としてしまったことに気付く。


困っていると、隣に居た少女と従者の二人連れが代わりに代金を支払ってくれたのだ。その少女こそが妹紅である。


この一件から二人は交流を重ねて意気投合し、現在に至る。



「地獄に仏っていうのはまさにあの状況よ。妹紅には感謝してるわ」


「そんな大げさな。私は困ってる人を放って置けなかっただけよ」



穏やかな表情で話す輝夜に照れた様子の妹紅は謙遜して答える。それを見た流零の口元には微笑みが浮かんでいた。



「ねえ、流零。あなたの話も聞きたいんだけど、いいかしら?」


「いいぜ。じゃあ何から話すか……」



この後、流零の旅の話がある程度終わったところで本日はお開きとなった。





その日の夜、自分の部屋の中から寂しそうに月を見上げる輝夜。



「妹紅……ごめんなさい。せっかく仲良くなれたのに……」



彼女の悲しい呟きは月が輝く夜空へと消えていった。

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