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第21話

出来ました!それではどうぞ。

「久しぶりとはどういうことだ流零!?知り合いだったのか!?」



天魔と親しげに言葉を交わす流零に詰め寄る藍。他の面々も気になるといった様子で二人を見る。



「ああ、こいつは俺が不知火と出会うより前によくつるんでたダチだ。もっとも、当時はここまで偉くなかったけどな」


「お前は連れがいること以外は昔と変わらんな。まあ、昔話をしても長くなるだろうからこの辺にしとくとしてだ。知らない奴のために自己紹介させてもらうぜ。俺が天狗の長、天魔こと射命丸隼だ。よろしくな」



天魔……隼と流零が友人であったことに対する驚きが表情に現れる一同。そんな一同に構うことなく隼は自己紹介をする。



「詳しい話は屋敷の中でするぞ。怪我人の手当てもしなけりゃならんからな。……華扇の奴何かあったのか?妙に沈んでるが」


「えっと……それについては触れないであげて下さい。かなり傷ついてるみたいですから」



屋敷の中へ入るよう促す隼は、いつの間にか体育座り状態で落ち込んでいる華扇が気になって流零達に尋ねる。


当事者である一輪は華扇を気遣って追及しないよう頼むのだった。


そして一行は隼の後ろについて屋敷の中へ入っていく。



「私達四天王はここで一旦別れるよ。ちゃんとした傷の手当てをしてくるからね。あっ、藍と不知火もこっちに来なよ。まだ傷が癒えてないだろ?」


「それじゃ、お言葉に甘えて」


「私は大丈夫だ。このくらいなら手当てしなくてもすぐに良くなる」



傷の手当てをしに行くと言う勇儀に誘われてそれについていく不知火。妖力は勇儀に分けてもらったが、傷はそこまで回復出来ていないのだ。


藍は不知火程消耗していなかったので、誘いを断って流零達と一緒に行く。


四天王と不知火がいなくなった一行は屋敷の廊下を歩いて奥へ進む。


奥には部屋があり、戸が閉じられている。その部屋からは近付くにつれて大きな妖力をひしひしと感じる。


部屋の前にたどり着くと隼は立ち止まって流零達に体を向ける。



「鬼神は今この部屋にいる。話は鬼神も混ぜてしたいからな。おい、入るぞ!」


「お、おう。いいぞ」


隼が部屋の中に声を掛けると中からはどこか弱々しい返事が返ってきた。


返事を聞いた隼が戸を開けて全員が部屋に入るとその中は酒の匂いが充満しており、思わず顔をしかめてしまう。


そして部屋の中央にはぐったりした様子の身長2m近くはある大男が桶を持って座っていた。


青い短髪に二本の角を生やして、筋骨隆々という言葉がピッタリの体をしている。


服は下に袴、上は裸に黄色の法被を身に付けただけという簡単なスタイルだ。



「そいつらか?八雲が送ってきた連中h……ウップ」


「そうだ。今は傷の手当てで一人いないがな。全く、調子に乗って飲み過ぎるからそうなるんだ。万年酔っぱらいめ」男はしゃべっている途中で持っている桶に吐きそうになり、隼は男に対して呆れ混じりに言い放つ。



「隼。こいつが鬼神……でいいんだよな?」


「ああ、正真正銘の鬼神だ」



流零達は目の前で嘔吐しそうになっている鬼が鬼神であるということに、内心少しガッカリしていた。


鬼神と言うからにはもっと威風堂々としているかと思えば、実際に会ってみればただの酔っぱらいだったのだから仕方ないだろう。



「はあ、だいぶ落ち着いて来たぜ。……おお、そうだった。自己紹介がまだだったな。俺の名は武慶號鬼(むけい ごうき)ってんだ。よろしく頼むぜ」



吐き気が引いてきたのか、そう言うと鬼神……號鬼はさっきの様子が嘘のように気前のいいおっちゃんみたいな笑みを浮かべる。



「號鬼も良くなったようだからそろそろ本題に入るぞ。立ったままは辛いだろうからとりあえず全員座りな。八雲紫に協力するかどうかという話だが……」



隼の言葉に促されて座ると本来の目的を思い出す流零達。ここまで来て協力が得られなければ骨折り損のくたびれ儲けである。


隼の言葉に全員が耳を傾けて集中する。



「俺は協力してもいいと思っている。天狗の精鋭達を破り、四天王を相手にして全員生き残ったみせた。そんな奴らがいるなら、俺達が協力する価値は十分にあるだろう」


「その言葉、本当だな?」


「ああ」



隼の口から出たのは流零達が待ち望んでいたものだった。


隼の言葉を聞いた一輪は藍に抱きついて喜び、雲山は納得した様子でしきりにウンウンと頷いている。


流零は早速紫に報告しようと式符を取り出そうとするが……



「ちょっと待ちな。俺はまだ認めちゃいねえぜ」



突然號鬼が待ったをかけてきたのだ。


號鬼の発言に終わったつもりでいた流零達だけではなく隼も驚いていた。



「どういうことだ號鬼?」


「お前達の実力はかなりのもんだろうよ。だがな、俺は自分の目で確かめなきゃ気が済まねえ性分なんだ。お前達の中で一番強い奴が俺と戦え。そうすりゃ認めてやる」



真剣な表情になった號鬼は、なんと自分と戦えと言い出した。しかし、鬼神と戦えばどうなるか分かったものではない。



「そんな!?天魔は協力すると「やめろ藍!」流零!?」


「俺が戦う。そうすれば済むこった」



流零は抗議しようとする藍を止めると號鬼の話に乗り、自分が戦おうとする。



「いいねえ!それでこそ男だぜ!戦いは明日山の修行場でやる。今夜の寝床はこっちで用意するからお互い万全な状態で戦おうぜ」


「上等じゃねえか。後悔すんなよ」



號鬼は嬉しそうに必要事項を伝えると、少し流零と視線を交えて部屋を出ていった。



「すまんな流零。あいつの我が儘に付き合わせて」


「構わねえさ。鬼神と戦うなんて面白い体験だしよ。それじゃ、俺達の使う部屋まで案内してくれや」



困った様子で謝る隼に流零は軽く笑って返すが、内心は穏やかではなかった。


號鬼と目が合った時、彼の気迫に気圧されそうになったのだ。出会った当初のだらしなさは微塵も感じられない、強者との戦いを求める鬼神の目だった。


今までで一番厳しい戦いになるだろうとそんな予感がしながらも、流零は隼に案内を頼んで皆を連れて部屋を後にした。



「流零!あんな安請け合いをして勝算はあるのか!?」


「そうよ兄さん!相手は鬼神なのよ!」


「まさか何も考えていないとは言うまいな?」


「兄貴!どうしてあっさり引き受けちゃったんですか!?話し合いでどうにか出来なかったんですか!?」



移動中に手当ての終わった不知火と合流して案内された部屋に入った流零。彼を待っていたのは言葉の集中砲火だった。



「そんなギャンギャン騒ぐなよ!仕方ねえだろ!ああでも言わなきゃ絶対引き下がらなかったって!」


「私は……いや、私達はお前のことが心配なんだ!お前にもしものことがあったらどうするんだ!」



耳に痛い言葉を聞いてたじたじの流零。


藍は目に涙を浮かべながら仲間を代表して思いを告げる。その姿に罪悪感を感じる流零だが一度戦うと言った以上もう取り消しは出来ない。



「確かに独断で決めたのは悪かった。だが、俺は負けねえ!必ず生きて勝つ!俺を信じてくれ!」



今流零に出来るのは自分を信じてもらうこと。それだけだった。


真剣な眼差しで語る流零に仲間達はただ黙っていることしか出来なかった。


しかし、少しの間を置いて藍が口を開いた。



「……分かった、そこまで言うならお前を信じよう。ただし、一つだけ約束しろ!絶対に死ぬな!守れなかったら承知しないぞ!」


「藍……分かった。約束する」



たった一つでありながら守れる保証などどこにもない約束を交わす流零。


鬼神との戦いは彼らに悲劇をもたらすのか?それとも……。

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