第8話 開口
「前世だったらこんなノミの術なんて奪えたんだ」
「ほお。聞いたことないな」
「俺についての話ってのはどこまで伝わってるのかな」
「物質を構築するのが大得意な錬金術師」
「正解だ」
「転生体について詳しくないのだけれど、前世の力は使えないのか」
「魂が同じだけで身体は別物だからね。悔しいけど、まだ使えない」
「使える可能性があると?」
「骨でもあればいいんだ。それを取り込む。俺を俺の身体に降ろすんだ。俺の骨がどこにあるかっていうのが問題なんだけど。俺には分からない」
「なぜ?」
「自分の死後のことをどうしてわかるよ。千年経っておいて」
空を見上げる。
「じゃあ、雑談はこのあたりでやめにしようか。君これから忙しいぞ。勇者と戦うんだ、気をつけなさい」
「そうらしい」
起姿解醒「漁火光柱」
──使用──
足元に水が溢れ出し、水面が出来上がる。そして、いくつかの灯った集魚灯。気がつけば空には雲が出来上がっている。
ノミのせいで気づきにくかった。
水面にフレイが落ちてくる。
次の瞬間、空に出来上がった光柱が振り注ぎ、周囲にいた魔族やノミを揃って押し潰してしまった。
「水系統と炎系統の掛け合わせか。君らしいね。凄い魔術だ」
「なんか、なんか‥‥‥死にかけたよ!?」
「毒ガスがあったんだろう。あれは墓守だ。それをくぐり抜けたなら君はとても立派だよ。今の俺はたぶん死んでしまう」
「そんな事より、箱の中身あれなに!?」
「付与術だよ。あとで教えよう。今はここをきり抜けよう」
ビムガが手のひらを向けた。また白いものが溢れ出す。充満する前に光柱が押し潰す。光で目が眩んだ一瞬の隙にケイムが踏み込み、光の柱の隙間を縫うように進み、両腕を切り落とす。
それから首を左右から短刀で突く。
「手柄を奪ったようでなんだか申し訳ない‥‥‥」
「そういうの気にしなくていいのに。それよりこれ教えて!」
「わかった」
ふたりは塔を離れ、次の魔王軍基地を目指しながら道中の野宿で「それ」について教えることに。
それは正四角形の古い紙だった。
古代の言語でなにかが書かれている。
「これは付与札っていうんだ。昔はこうやってこれに火をつけて‥‥‥君の剣を貸して」
「はい、どーぞ」
「札を燃やし‥‥‥その火に剣身をくぐらせる‥‥‥すると‥‥‥この札は『斬撃強化』だから、その通りの効果が付与される。そうだな、あの木の幹を斬ってみよう」
「斬れないよ」
「いいから」
フレイがその通りにしてみると、細い幹の木がスパンと切れてしまったので、彼女は大いに驚いた。
「なにこれ!」
「付与術だ。千年前は身近なものだったのだけれど‥‥‥」
「千年前‥‥‥なんで千年前のことにそんなに詳しいの」
ケイムはその質問に姿勢を正す。
「君は、千年前の魔王と勇者を知っているかい」
「うん。魔王バンガと勇者キズム」
「俺は、その魔王バンガの生まれ変わりだ」
しばらく沈黙。フレイは首を傾げている。
「証拠は出せないけれど、俺は魔王だった」
「思い込みではなく‥‥‥?」
「思い込みじゃない。魔族は俺が作った」
「なんで?」
「俺を裏切らない仲間が欲しかった」
フレイは居直った。
光業 両腕部
ブラッドルーツ 両腕部
漁火光柱 両脚部




