第10話 相思
ここ最近の新聞の話題はもっぱら「新しい勇者とその相棒」の話であった。勇者フレイ・ガム・アウィとケイム・アガルシー。
キツキはその記事を読んでから、ふぅと息をつく。
だんだん幼馴染が遠くへ行ってしまうようだった。
ここ最近、そんな事ばかり考えてしまう。
ケイム。
戦いなんかをするような性格ではないと思っていた。
花を愛でるのが好きで、子供の面倒なんてよく見ていた、村一番の「優男」。キツキは村に帰る度に聞かされるケイムの話が好きだった。
ケイムに会いたい。
なんだかこんな事を考えているような場合ではないのだろうけれど、ケイムと勇者が並んでいるのを見ると胸がざわざわする。
勇者とケイムは戦友だ。一緒に戦いを生き延びているから、絆だってそれなりにあるんだろう。である以上に男女だから。
なんだか下品な想像をしてしまう。
ケイムはむかしからなんだか大人びているし、言ってしまえば顔もいいから、女の子からしたらきっとかっこいいだろうし。
ケイムだって女の子のほうが好きだろうし。
「‥‥‥‥‥‥」
どっかでばったり会えないかな。
幼馴染パワーを見せつけてやれるのに。
けれど、世界は文字通りそれどころではない。
まだ実感がないのかもしれない。魔王だとか魔族だとか勇者だとかそういうことがまだ実感として宿ってない。ほんとうに世界の危機を実感することはないような気すらしていた。
ケイムはいつ帰ってくるのだろう。
ほんとうは帰ってくるつもりなんてないんじゃないだろうか。
魔王が現れた、ということを聞いた時のケイムの顔を思い出した。あの時の、あの顔は憤怒だった。
ケイムは優しいから、人を傷つける魔王軍なんか許さないだろうけど。それでも、やっぱり違和感がある。
なんだか自分は知らないことを前提として物語を進められているような気持ちの悪さを、キツキは感じていた。
「はぁ‥‥‥」
溜め息をした時だった。後頭部に衝撃を感じた。
その報はフレイとケイムにすぐに届いた。
魔王軍は最近鬱陶しい二人のことを嫌になって、ケイムが「今生で一番大事に『想って』いる人間」として、キツキ・カンズラーが魔王軍の第三基地に誘拐されたと言う。
もうこういうやり方でしか勝てないような気がしたのだろう。
ケイムはすぐにそちらに向かっていた。
気がつけばいなくなっていたので、フレイはすぐに考え込んで、報をくれた魔王討伐隊の第六隊の隊員に言う。
「第三基地は、アガルシーくんに任せて‥‥‥私たちは他をやろうか」
「追わないんですか、あいついくら強いったって一人は‥‥‥」
「大丈夫」
ケイムは第三基地を見つけると、鉄扉が開かないので「光業」で自身を霊体にし、すり抜ける。
「バンガ‥‥‥!!」
「彼はどこかな。教えてほしいな」
「誰か教えるか。欲しけりゃテメェで見つけんのさ」
「そうか。手は出したか?」
「あ?」
「いいよ、言わなくても。此方で君たちの思考を見る」
怒ってる。確実に怒ってる。当たり前だバカ。
「戦いを始めて、今で二ヶ月だから‥‥‥そろそろ戦うのにも慣れてきたよ。何秒かかると思う?」
「なにが」
「君たち全員殺すのにさ」
「百億年」
「数えてみようか」




