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幕間5:夕暮れに見とれる遠い約束


 ねぇねぇ、——!こっちこっち!


 オレンジ色に染まる下校途中。

 赤髪の女子高生が白フリルのワンピースで、

 アスファルトを駆けていく。

 

「おい、(あかね)。そんな走ると危ないぞ。」

 長身の男はそういうと、

 足早に茜と呼んだ彼女を追いかける。


 曲がり角で見失いかけた所に、

 突然彼女が「わっ」と叫んで飛び出す。


「えへへ、びっくりした?」

 そうニヤニヤしながら笑う彼女に、男はため息を付く。


「いつまでそんな子供みたいな事してるんだ、

 もうすぐ卒業だっていうのに。」

 彼はそういうと、駐車場に向かい車のロックを外す。


「ほら、いつまでもふざけてないで帰るぞ。」


「えぇ~、

 コンビニ近いんだから買い食いくらいさせてよ~。」


 茜は不貞腐れたように頬を膨らませる。

 しかし、そう言いながらも急いで男に駆け寄る。


 助手席に乗り、シートベルトを締める。

 

「ねぇ、()()さん。」


 フジと呼ばれた男はめんどくさそうに返事をする。

「なんだよ。」


「もし、もしだよ?」

「私がなんらかの理由で助けを求めたら、

 いつでも来てくれる?」


 茜がそういうと、男は運転に集中しながらも言葉を返す。


「さぁ……まぁ、金銭関連じゃなきゃ考えてやるよ。」


 さっぱりとした口調に、

 茜はどこか満足そうな顔を浮かべる。


「うん、そっかそっか。

 やっぱ私のコト好きなんだね~フジさん。」


「なんでお前みたいなガキ……、いや、面倒だ。止めだ。」


 そういうと、ムスっとした顔で運転をし続ける。


 夕陽の差し込む運転席、

 フロントガラスからの景色はとても眩しく。

 

「フジさん、

 私大人になったら会社を建てようと思ってるんだ。」


 そんな夕陽に見とれながら茜は呟く。


「人を助けて、みんなが平和な暮らしのできる、

 そんな会社。」

「凄い抽象的だな。……でもまぁ、いいんじゃねぇの。」

 男はぶっきらぼうに返す。


「その時は、フジさんも一緒だよ。

 じゃないときっと私だけじゃ困っちゃうから。」

「はぁ……まぁ、考えとくよ。」

 

「あは、言質言質~!」

 茜は何処か嬉しそうだ。


「何処が言質なんだよ……。そろそろ家に着くぞ。」

 

 家に着く手前で茜は少し暗い顔をして。

「……私を、一人にしないでね。」

 聞こえないくらいの小声でつぶやく。


 男は耳が良かったのか、

 ハザードランプを炊いて茜に小指を差し出す。


「え?」

 茜はキョトンとしていた。


「ほら、約束だ。茜を一人にしない。

 だから、夢に向かってお前は思い切り頑張るんだぞ。」


 彼女は嬉しそうに指切りをする。


「うん……!やっぱフジさん好き!」

 小指を絡めた後、狭い車内で茜は抱き着く。


「だっ……バカ!あぶねぇだろ!」


 照れ隠しなのか男は、

 そそくさと茜のシートベルトを外す。


「おら、帰れ帰れ。」

 そんな風に男が言うと、

 外から小さい声で「おねーちゃん」という声が聞こえる。


「弟さんも待ってるぞ。」


「はぁ~い、達也(たつや)~。ただいま~。」


 扉を開けながら達也を抱きしめる。

 そして、茜は男に手を振り、車は見えなくなった。




 ——————————————————————



 「嘘つき。」


 茜は所長室の椅子の上で膝を曲げて体育座りをしていた。

 椅子は勝手に回りだす。


「ずっと傍に居るって言ったのに。」


 彼女の声は暗い。


「考えてることも分かるのに、

 なんで私を置いてくの……。」


 表情も、眼も。


「ねぇ、藤林(ふじばやし)……。」


 彼女はボソッと呟く。



 ——————————————————————


 場面は変わり、ここは世界樹3層。


「さて、と。」

 

 大荷物を持ってきた彼は、一旦荷物を下ろす。

 そしてキャンプの設営を始める。


「新人達が来るまでに、

 掃除を始めておかないといけないお~。」

 のんきな喋り方が世界樹の空洞に響き渡る。


「まさか、

 1層で我妻君がやられると思わなかったお~……。」


「正直見積もりが甘かったお。」


 かちゃかちゃと、テントを建て、

 慣れた手つきで進めていく。


「よし、と……。」


「あらぁ……?」


 誰も居ないはずの三層の奥から人が歩いてくる。

 人の体躯をしているが、ところどころ変質している。

 まるで混ざっているかのように。


「やっぱり、居ると思ったお。」

「あら、あらあらあら!」


「フロンテラ幹部様が何の用かしらぁ~?

 ウチのテリトリーだと分かって?」

「もちろんだお。」


 謎の人物を前に藤林は作業の手を止めない。


「死にたいようねぇ……。

 だったらお望み通り死なせてあげるわ!」

 怒ったその人物は瞬く間に、藤林を捕え……。


「だから、『掃除』しに来たんだよ。

 分かる?『()()()()()()()』……。」

 

 捕らえてはいなかった。


 キャンプの設営道具を持ったまま回避している。


「抜かせェ!クソ童貞がァッ!」

 

 


 ここから様々な願いが交差し始める。




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