第22話:対話と駆け引き
西寺衛は電子タバコを吸って、チルしていた。
「んで……?お前らの聞きたい事ってのはなんだ?」
半ばあきらめた表情で西寺は茜に向かい合う。
「先に言っとくぜ……。
VSC関連についての情報を言うつもりは無ェ。」
「えー……、まぁ、仕方ないかな。」
茜はワザとらしく諦めたようにため息を付く。
「じゃあ少しアプローチを変えようか。
固有魔法、君はどう考えてる?」
「……。」
西寺は口を開かない。
「私たちが辿り着いた結論なんだけど、
固有魔法を一人1つは持っているんじゃないかって。」
操は西寺との会話を思い出す。
(それは、確か西寺本人が言っていた。芽吹いていないだけだと。)
「……何が言いてェ。」
少しだけ苛立ちを見せる西寺。
「……そう邪険にしないでよ。ここからが本題なんだから。」
「君は、固有魔法に第二段階があるのを知ってる?」
「……なんだと?」
明らかに気配が変わった。
警戒から好奇心へ。
「やっぱり、君は知らないんだ。
ってコトは一応忠告しておくね。無駄だと思うけど。
VSCの描いてる絵が行き着く先はそこじゃない。」
一拍。
「君達の中に、裏切り者がいるよ。」
西寺のサングラスの奥の眼が鋭くなった気がする。
「……どういう意味だ。」
「そのままの意味だよ。
VSCの計画を乗っ取ろうとしてる奴がいる。」
「なんでそんなことを言い切れンだ。」
「企業秘密、君に教えられるほど仲良くはないかな。」
体中に針が刺されているような気まずい空気が流れる。
一番居たたまれないのは、
この空気を店の中で出されている湯楽里さんだろう。
……と思ったが、横になって眠っていた。
仕方ない、怪我というのは存外体力を奪うものだ。
「……じゃあ、聞くけどよ。
なんでオレサマに言うんだ?
テメェらの言うことを信じて仲間割れさせるためか?」
「別にそれをするメリットはこっちにはないよ。
こっちは新人で手一杯でね。」
「じゃァなんなんだよ。」
「VSCの中で一番話が分かる。
そして信用できるのが君だからだね。西寺クン。」
「……あー、まァそうか……。」
誰の顔を想像しているかは分からないが、
西寺も苦労しているのだけは伝わった。
西寺は頭を思い切り掻いてから立ち上がる。
「めんどくせェ……。
これからオレサマはまたスミレの情報を探す。
これが名刺だ。」
茜と操に名刺を投げ渡す。
「見かけたりなんかあったら連絡いれろ。
ワンコールだ。暇があったら折り返す。」
そう言うと西寺は扉に向けて歩き出す。
「じゃァな。」
カランカランと扉に連動しているベルが鳴って、
西寺はそのまま居なくなった。
話が終えたのを確認した御来が話し始める。
「茜、緊急だったから私、固有を使ったわ。」
「ん、分かった。痛みは?」
「最低限の治療はしてあるから平気ではあるけれど、
血が滲み始めそう。一旦先生の所に行きたい。」
「了解、じゃあ私は雫と操っち連れてそのまま帰るよ。
この子はどうする?」
「……湯楽里は平気、
奥で寝かせて手紙を置いておきましょう。雫、お願い。」
その言葉を聞いた雫が湯楽里を抱きかかえて、
御来と一緒に奥へと入っていく。
そして操もようやく口を開いた。
「固有魔法の第二段階ってなんですか、茜さん。」
操は第二段階という単語を頭の中で反芻していた。
「それも帰ってから伝えようか。
今もまだ安全ってわけじゃないからね。」
茜が笑顔を作ってこちらを見る。
「ちなみに、私は第二段階に入ったばかり。
だからあんまり期待しないでね。」
(茜さんで入ったばかり……か。)
彼女の実力を疑ったことはないが、
この眼で見たわけではない。
その為、茜が『入ったばかり』と言ったのが、
どれほど大変なのかを想像できない。
操は、休日を返上し、謹慎が解けることとなった。




