第21話:情報共有と『スミレ』
操は西寺衛と見合っていた。
どちらが先に動くか、どんな言葉を切り出すのか。
絶妙な空気が流れる。
(まずい、今攻撃されたら……。)
入り口を見張ることも防御策を講じる事もできない。
まさに一発触発の状況だった。
しかし、西寺から発せられた言葉は意外なものだった。
「やんねェよ。」
「……?」
一瞬理解が遅れる。
「だから……、
今日は別にお前と戦いに来たわけじゃねェ。偶然だ。」
「ヴィスターを送り付けてくる所の言葉を信用しろと?」
警戒は解かない。
もしも警戒を解いた瞬間を狙われたら操の命は無い。
「あァ……小南の件か……。
そういや、そんな話だったか……。」
どうも前戦った時と違って言葉に覇気がない西寺。
操も調子が狂ってしまったのか、
少しずつ警戒を解いていく。
「どーんっ!」
何故か空から雫をお姫様抱っこした茜が降ってくる。
「茜さん!?」
西寺を視認した瞬間、
わざとらしいファイティングポーズを取った。
「また君か!?」
「えェ……?めんどくせェー……。
こっちには戦意はねェって。」
西寺は両手を上げて、心底めんどくさそうにしている。
それを見て茜はどう思ったのか分からないが、
ファイティングポーズを解いた。
「だったら君も中に入りたまえよ、
きっと君にも有益な情報があるかもしれないよ?」
「……まァ、そう言われたら断る理由なんかねェか。」
茜が中に入る。
促されるまま西寺が入り、続いて雫が入っていく。
「どうなってんだ……。」
操もそのまま扉を開けたのだった。
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中に入ると御来は丁度道具を整頓して箱に仕舞っている。
素早く丁寧な処置を終え、
湯楽里は喋れるところまで回復していた。
「大丈夫かい?湯楽里さん。」
茜は初対面の様で、珍しく『さん』付けで呼んでいる。
(この人一応礼節分かるんだ……。)
と思った瞬間、
パシッと何かが顔の前で弾ける感覚があった。
「いてっ……。」
「そこ、失礼な事考えてるでしょ。」
毎回この人とは敵対したくないと本気で思う洞察力だ。
「えぇとぉ、夕凪茜さん……天国さんの上司さんですねぇ……。
で、雫さんと、空原さん。……と、そちらはぁ……?」
「あー……、んー……。」
西寺は思いっきり言葉に悩んだ後。
「VSCの西寺だ、簡単に言うとこいつらの敵。」
御来はビクっと反応し後ずさり。
「なんでVSCが此処に……。」
「敵……なんだが……、まぁ今日は休業だ。
ただの西寺だと思ってくれや。敵対するつもりはねェ。」
雫が耳打ちしてくる。
「なんだか、苦労してそうな人だね。」
「……今回は俺らが悪いんですけどね。」
操も頭を抱えて溜め息を付く。
「改めましてぇ……私は湯楽里詩草っていいますぅ……。
この『魔草特別販売店』のオーナーですぅ……。」
気を取り直して、御来は話し始める。
「……とりあえず、湯楽里。その傷の心当たりはあるの?」
湯楽里は少し考える素振りを見せて話し始める。
「今日のお客様はあの紫髪の方だけでしたのでぇ……多分、
あの人なんだと思いますぅ……。」
「紫髪ィ……?」
西寺が少しだけ反応する。
「はいぃ……、ま……魔草にも種類がありましてぇ……。
紫髪のお客様はぁ……。
『魔力を受け渡す方法』を探してましたぁ……。」
一拍、ゆっくりと呼吸を整えながら湯楽里は話を続ける。
「一応心当たりはあるのですがぁ……。
皆様がいらしたときにも言いましたが……。
初見さんはお断りさせていただきましたぁ。」
「なるほど……その後紫髪の人は何かしたり、
何か言っていましたか?」
たまには自分からも切り出してみる。
いつも聞いているだけだとなんか暇だから……。
「たしか……。
『ほなええわ、自分……後悔は先に立たへんから。
次は気ぃつけや。次があればやけど。』
と言って背中を軽くトンっと叩かれましたぁ……。」
この言葉に反応したのは西寺だった。
「関西弁に紫髪……その女知ってるぜ。
というか目的はそいつを捕捉する事だったからよォ。」
西寺はスマートフォンを取り出して何回か操作をする。
そしてその画面をこちらに向けてくる。
「デスター、本名不明。
通称『スミレ』。国から公式に手配が掛かってる奴だ。」
「デスター……。」
ついに『三の災厄』全てと出会ったことになる。
……まぁ西寺達もデスター寄りではあるが、
公式に認められているわけではないので一旦置いておく。
「スミレは快楽殺人者として名が通ってる。
裏社会だと殺し屋としても名高いみてェだな。」
「さすがにVSCは情報が早いね~。」
「ハッ、ライバル社の頭取が……。
手放しで褒めてると皮肉にしか聞こえねェよ。」
「いやいや、
さすがにそこは本心だって思ってほしいけどなぁ。」
二人の間に少しだけ火花が飛んでいるような……。
西寺がスッと顔をそらすと、茜がガッツポーズしている。
子供か。
「まァいい。
続きだが、スミレはまず間違いねェ固有持ちだ。」
「んで、どんな固有かまで判明してねェんだが……。」
西寺は湯楽里を見る。
「……『触れた位置への攻撃』が可能……?」
雫が考え込みながら答えを探す。
「悪くねェ線だな。
ディレイ付けて掻っ捌いてんだから辻褄は合うが……。」
「引っかかる点としては服が切られてないって所ですか?」
西寺が頷く。
「ミサオの言った通りだ。
『触れた位置への攻撃』なら服も切れるべきだろォな。」
悩んだ全員が静かになる。
西寺は背もたれを前側にして椅子に座り腕を乗せる。
「まァ、見失っちまってるヤツについては置いとくぜ。
情報としてはこんなもんだろォよ。」
「マモルさんって本当、
イカツイ見た目にしては冷静ですよね。」
操がついポロっと言葉を漏らす。
「外面が馬鹿みてェって喧嘩文句なら買ってやるぜ?」
「いえ、流石にそこまでの皮肉ではありません……。」
操が深い呼吸で肩を下ろす。
「さてと、それじゃあ~。」
パンっと茜が手を鳴らす。
「西寺君、今度は君に質問させてもらうけどいいよね?」
「……だよなァ……。」
西寺衛は大きくため息を付いた。




