八十話 ハク、狼狽する
クレアがレッドの部屋を直接訪れるのは想定外だった。
ほかの者なら居留守を使えばいいが、合鍵を持っているクレアには通用しない。
本当に誰もいないか、中に入ってくる可能性がある。
かといって今から地下にいるレッドを、呼んでも間に合わない。
迎え入れるしかないが、ゴーレムに仕込まれたボイスレコーダーには、肯定と否定と曖昧の三つの声しか録音されていない。
『ああ、そうだな』
『いや、そんなことない』
『どうだろうな、よくわからん』
ワタシと会話するフリをするために用意された簡単なものだけだ。
これだけでうまく凌げるだろうか。
なるだけ短時間で追い出して、ボロを出さないようにするしかない。
扉を開けて、クレアを迎え入れる。
「あらあらあら、ハクも一緒にいたんだ。いっつも二人で仲いいわね。もしかして、私、お邪魔虫かしら?」
超絶に邪魔だが、顔には出さない。
「そんなことはない。ねぇ、レッド」
『ああ、そうだな』
タイミングよく肯定のボタンを押すと、ゴーレムからレッドの声が聞こえてくる。
違和感はない。クレアはちらりとレッドを見ただけで、疑う様子はなかった。
「二人は何をしてたのかなぁ? もしかして、きゃっきゃっ、うふふなことしてた?」
きゃっきゃっ、うふふの意味はよくわからないが若干いらっ、とする。
「いえ、二人で本を読んでいました。格闘術の幅を広げてみようと思って」
「あら、それは面白そうね。私にも見せてもらっていいかしら?」
「……どうぞ」
部屋には入れず、扉の前で追い返すつもりだったが、そうもいかなくなった。
レッドのゴーレムが座っている正面まで、クレアがやってくる。
「レッドも格闘術が使えるの?」
『いや、そんなことはない』
「レッドは、あれだ。相手が使ってきた時の対策として、読んでるみたいだ」
「へえ、えらいわね」
否定のボタンを押しながら、フォローも入れる。
これは長時間誤魔化せるものではない。
なんとか、早く切り上げなければ、バレてしまう。
「でも、本当にすごく真剣に読んでるのね。いつも私と会ったら、目線はおっぱいに釘付けなのに、今日はちらりとも見てこないんだもの」
「なっ、いつも釘付けなのかっ!?」
『ああ、そうだな』
驚きのあまり思わずボタンまで押してしまった。
レッドの変態を認める形になってしまう。
「い、いや。それはクレアの勘違いじゃないか? いくらレッドでもそこまで露骨に見ないだろう」
だいたい本当の目線は中の赤ちゃんなんだから、ゴーレムの目線がそこに行くわけがない。
「そんなことないわ、レッドも認めてるじゃない。ハクにはまだわからないかもしれないけど、女の子は、自分の胸を見られたら、その視線を感じるものなのよ」
「ぐ、それはワタシの胸が小さいから見られてないということかっ」
「さあ、わからないわ。レッドに聞いてみたら?」
あとでたっぷり聞いておこう。
今、聞いて自分でボタンで回答させたら、すごく惨めな気分になる。
「まあ、冗談はこれぐらいにして、本題に入りましょうか。実はレッドに一つ聞きたいことがあってきたの」
ピンチはまだ終わっていなかった。
いや、むしろ、ここからが本番だったのだ。
「あなた、本当は物凄く強いんじゃないかしら?」
それはレッドの正体に迫る、核心を突いた質問だった。
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追記
第七回ネット小説大賞作品
【うちの弟子がいつのまにか人類最強になっていて、なんの才能もない師匠の俺が、それを超える宇宙最強に誤認定されている件について】
も連載しています。
ご覧になっておられない方は、ぜひ一度覗いてみてください!よろしくお願いします!




