七十一話 レッド、密談する
「大丈夫だった?」
「ああ、普通に報告しただけだよ」
ロンド隊長の部屋の前でハクが待っていた。
二人で廊下を歩いていく。
「……監視されている。背後から誰かつけているわ」
ハクが僕にだけ聞こえるように小声で話す。
恐らくクレアさんだろう。
光魔法で透明になっているようだが、気配察知に優れたハクには通用しない。
「ご飯でも食べに行こうか。配給される糧食には飽きてきたんだ」
「そうね。たまには街に行きましょう」
「ほかの三人も誘おうか」
「さっき食堂で見かけたから、もう食べていたみたいよ。二人で行きましょう」
わざと他愛ない会話を交えつつ、外に出る。
裏街道から表街道に出ると、ハクが僕の腕を軽く叩いた。
「行ったわ。もう、いない。三人のところに向かったと思う」
「五人全員が監視対象みたいだね」
「そうね、警戒しておかないとね。あの男との接触はしばらく避けるべきよ」
「うん、気をつけるよ」
ハクと二人きりになったので、広場の中央にあるベンチに座り、声を変換せず、そのままの状態で話す。
ここでハナさんと話していたことを思い出し、ちょっと、うるっ、となってしまう。
「どうしたの? 涙声だけど?」
「いや、なんでもないんだ」
僕の心情を察してくれたのか、しばらくハクは何も言わず、側で座っていてくれた。
「……ハクはやっぱり、ドルタを生かしたことは反対だった?」
「そうね。服を破られておっぱい見られたしね。でも、ワタシは、一生ついていくと約束したから、キミの考えには逆らわない」
ハクのおっぱいを思い出して、ゴーレムの中で少しにやける。
「やらしい顔、してない?」
「し、してない、してないよっ!」
勘が鋭いハクの前では、中の表情も気をつけないといけない。
「本当なら、おっぱいのことを除いても、ドルタは引き渡すか、殺してしまったほうがいいと思ったわ。ドルタを仲間にするのはリスクが高い。バレたらガレアの街全体を敵にまわすことになる」
「うん、そうだね」
それでも僕はドルタを仲間にしたかった。
彼も自分と同じガレア家の犠牲者で、復讐者だったからだ。
僕の今の仲間達、クーピーズは本当の仲間ではない。
やがて、僕は彼らとも戦うことになるだろう。
「もし、そうなってもハクはついてくれる?」
「何度も言わせないで。一生ついていくって言ったじゃない」
ちょっと怒らせてしまったようだ。
ハクが少し顔を赤くしてそう言った。
「ありがとう、ハク」
ガレア部隊の副隊長になり、二人の仲間を得る。
復讐への道のりは、ゆっくりだが、確実に進んでいる。
僕を捨て、ハナさんを殺したガレア家を滅亡させる。
かつて、ハナさんと座っていたベンチで僕はもう一度、復讐を誓った。




