六十七話 ハク、拘束される
「まて、お預けだ」
魔力の高いゴブリンが、手を前に出して制止する。
ワタシを襲っていたゴブリンどもが、ピタリと行動を止めた。
手足は掴まれたままだ。
スピードに特化し、力のないワタシにはゴブリンの拘束を解くことが出来ない。
「さっきの二人は、あっと言う間に食べてしまったからな。コイツらからは色々と聞き出したい」
そう言ったボス的なゴブリンは、マスクを脱ぐように、アゴからゴブリンの顔を剥がしていく。
黒髪の男が、その正体を現した。
「子供?」
「失礼だな。これでも成人している。身長は低いがね」
童顔のチビのおっさんが、衣服が破れたワタシの肌をジロジロと見る。
「君こそ、子供かね。ずいぶん小さいみたいだけど」
「ゲスがっ」
今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたいが、身体はまるで動かない。
丸出しのおっぱいを見られる不快感に顔を歪める。
「ハクっ、ちくしょうっ、キリがねえっ!」
無数のゴブリンどもと戦うポールの魔力が尽きかけていた。
いくら倒しても、チビのおっさんが次々にゴブリンを召喚している。
「闇魔法の召喚かっ。お前の目的は一体なんなんだ?」
「君が質問できる立場にあると思うのか? 逆にこちらが質問だ。ここに来たのは、四人だけかな? それともまだ他にいるのかね?」
どうやら、五人でここに来たのを、見られたわけじゃないようだ。
「ワタシたちだけだ。他にはいないっ」
「嘘だな。山での爆発はかなりの魔力を探知した。紫の火魔法使いと君のものではない。あと一人、まだいるんだね」
「……」
「残念だよ。嘘をつかなければ生かしてあげても良かったのに」
チビのおっさんが、右腕を高くあげる。
「食べてよし」
その手を下に振り下ろそうとした時だった。
がっ、と後ろから大きな腕が、チビのおっさんを羽交い締めにした。
「ベンっ!!」
「バカなっ、どうしてっ!? 腕しか残っていなかったはずだっ!!」
ベンが生きていたのは、わかっていた。
地面にある腕に魔力が残っていたからだ。
得意の地魔法で、腕以外の部分を地中に埋めて、ずっとチャンスを伺っていたのだろう。
「ハクのおかげで、ゴブリンを操ってるのが誰だがわかっただっ」
「ありえないっ、二人が食べられているのを見たぞっ!」
「あれは、土のゴーレムだ。なんでも美味しく食べるゴブリンが仇になっただなっ!」
ベンの大活躍で、黒幕を拘束する。
同じように地中から、シャラも這い出てきた。
形勢は完全に逆転した。
「さあ、召喚を解除するだっ! さもないと首をへし折るだっ!」
「……残念だが、それはできない」
チビのおっさんから膨大な魔力が流れていた。
「ベンっ、早くっ、トドメをっ!」
誰かの命を奪ったことがないベンは、一瞬、トドメを刺すことを躊躇してしまった。
チビのおっさんがさらにゴブリンを召喚するために、詠唱する。
「やめるだっ! すぐに止めるだっ!」
「無駄だ。ワシが死んでもゴブリンは消えないっ」
グギンっ、いう音と共にチビのおっさんの首がへし折れる。
だが、それでも召喚は止まらずに、街道を埋め尽くすようなゴブリンの群れが出現した。
「……滅びろ。ガレアの兵士ども」
チビのおっさんが呪いの言葉を吐き、地面に崩れ落ちる。
みんなの魔力は尽きかけており、ワタシの加速魔法も効力を失っていた。
ゴブリンの群れに囲まれた絶対絶命の中、それでもワタシは少しも動揺していない。
一直線に山から飛んでくる、彼の気配に気がついていた。
「待たせたな、みんな」
作り物の赤い髪をたなびかせ、空からレッドが颯爽と現れた。




