六十五話 赤さん、実験する
『必殺技を作っておこう』
ゴーレムが完成した頃に復讐君は、そう言った。
「必殺技?」
『そうだ、必ず殺す技と書いて必殺技だ』
その響きに僕はちょっとワクワクした。
『ここぞという時に使う切り札が、あるのとないのとでは大違いだ。自分の中で、最も強力な必殺技を今のうちに習得しておくんだ』
「わかったよ。復讐君、僕、考えてみるよっ!」
その日から復讐君と二人で、必殺技を考える日々が始まった。
それは、苦しくもなんだか少し楽しくて、実験を繰り返している間に、自分が強くなっていくことを実感する。
『アカは今、いくつ同時に魔法が使えるんだ?』
「今は四つかな」
『よし、六つまで同時に使えるようになろう。全部の属性を合成したらすごい魔法が使えるかもしれない』
「わかった。頑張ってみるっ!」
同時に魔法を使うことは、自分の頭の中に部屋をいくつも用意するようなものだった。
油断すると、部屋の壁が破れて、同時に魔法が使えなくなる。
同時に色んな事を考えるように、普段から並列思考ができるように意識していく。
しかし、なんとか六つを同時に使えるようになった時にあることに気がついた。
「合成魔法は、三つまでしか混ざらない」
『マジか。全部混ぜ魔法、楽しみだったのにな』
「うん、でも同時に使える魔法が増えて強くなったよ。絶対無駄じゃなかった」
『ああ、そうだな。ポジティブにいこう』
合成魔法を使いながら、他の魔法をサポートに使えばいい。
可能性は広がった。
後はどんな必殺技にするか、考える。
「ねえ、復讐君、これって、何なの?」
それはハナさんのパソコンの『ウィッキーペディア』で発見した。
大きな爆発が、とても巨大なキノコ型の雲を生み出している写真と、その威力について説明されていた。
『核爆発だな。これは参考にならない。復讐どころか、世界が滅亡するぞ』
「……そうなんだ。そんなに威力があるんだ」
確かに、『ウィッキーペディア』の説明を見ると、その恐ろしさが、延々と書かれている。
「でもこれ、小型化して、一人にだけダメージを与えられたら最強じゃない?」
『お前、いい具合に壊れてきてるじゃねぇか』
復讐君は、そう言って、くくっ、と笑う。
『いいぜ。付き合ってやる。最強の必殺技を作ってやろうぜっ』
そうやってできた必殺技は、まだ核爆発には遠く及ばないものだった。
まだまだ改良の余地はある。
だが、この程度のジャイアントゴブリンなら、粉微塵にすることくらい簡単なはずだ。
まずはジャイアントゴブリンの周囲を、光の壁で固める。
爆発が他まで影響を及ぼさないためだ。
威力を間違えれば、この山全体が吹っ飛ぶかもしれない。
「ギィギィガァアアアアアアッ!!」
ジャイアントゴブリンが光の壁を破壊しようと突進する。
その瞬間に、三つの魔法を融合させる。
火魔法と地魔法と水魔法。
混ざり合うことのない三つの魔法が混ざり合い、小さな「核」をいくつも形成する。そこに刺激を加えて「核分裂」を連鎖させ、一億分の一秒間で「臨界」を突破する。
その爆発は予想以上のものだった。
膨大な熱エネルギーが局所的かつ急激に解放され、ジャイアントゴブリンと光の壁が同時に崩壊する。
巨大なキノコ雲が立ち昇った。




