六十一話 クーピーズ、出発する
ロンド遊撃隊に入隊して、一ヶ月。
最初のうちは雑用や訓練だけだったが、ようやくいくつかの任務を任せられるようになってきた。
「今度の任務は、ゴブリン退治だ。最近、繁殖期に入ったようで、街道まで降りてきて、人々を襲っている」
入隊した時のように、新人五人でロンドの前に並んでいた。
「今回、クレアとボクは別件の任務を受けている。君達五人だけで、この任務に当たってほしい」
ロンド隊長や、クレアさんなしの任務は初めてだった。
僕達が信用されてきたということだろう。
「リーダーは副隊長のレッドだ。作戦及び、サブリーダーの人選も君に任せる」
「了解しました。早速、準備に取り掛かります」
簡単な任務だが、油断するわけにはいかない。
ここでポイントを稼ぎ、ロンド亡き後の隊長の座を盤石の体制にしなければならなかった。
「出現した街道から、奴らの住処は、ドボチ山の可能性が高い」
ロンド隊長とクレアさんが作戦室から退出し、五人だけになる。
今回のリーダーということで、ロンド隊長が座っていた隊長の椅子に座ってみる。
うん、気分がいい。早く、僕の椅子にしたいものだ。
「まずは街道まで行って、そこから二手に分かれて行動する。三人で住処を探し出し、ゴブリンの巣を焼き払う。何匹かは逃げ出して、街道に降りてくると思うので、残った二人は、その殲滅にあたってくれ」
「班分けとサブリーダーはどうするの?」
ハクの質問に、すぐには答えない。
実力からいうと、加速魔法をかけたハクが一番強く、彼女をサブリーダーにしたいところだが、そうなると僕と一緒の組にしなければならない。
サブリーダーは、別れた二人の方に入れたほうがいい。
「そうだな。山に登る班はボクとハク、そしてポールの三人だ。シャラはサブリーダーとしてベンと街道に残ってくれ」
サブリーダーに任命されたシャラが、ハクの方を見て、ふふんと笑う。
あれから一ヶ月も経つのに、まだシャラはハクに負けたことを根に持っている。
「お互いの班に、なにかあれば信号魔法を打ち上げて、知らせよう。青は任務達成、黄は異変あり、赤は緊急事態だ。赤の場合は、ただちに駆けつけ合流して対処する」
まあ、ゴブリン如きでは、万が一も起きないと思うが念のためだ。
「それでは各自、準備をして、一時間後、ガレアの門に再集合だ」
「「「「了解しました、リーダー」」」」
四人が声を重ねて敬礼する。
おお、やっぱりリーダーは、すごく気持ちいい。
復讐を抜きにしても、早く隊長になってみたい、 ちょっとそんなふうに思ってしまった。
一時間後、ガレアの門に五人が集まる。
ロンド遊撃隊は、隠密部隊の為、街の人たちには兵士ということを明かさない。
ガレア兵の中でも、一部の者しか僕達の存在を知らない。
装備を荷車に詰めて、行商人のふりをして門番に門を開けてもらう。
「気をつけてな、しっかりやれよ」
門をくぐる時に、耳元で門番が囁いた。
よく見たら今日の門番は、入団試験の時、試験官を務めていた男だった。
「さあ、行こう」
赤、白、紫、青、茶の五つの髪色が昼の太陽に照らされる。
いつのまにか、僕ら五人は、こう呼ばれるようになっていた。
「ロンド遊撃隊『クーピーズ』出発だ」
新人五人による初めての任務が始まった。




