五十八話 レッド、入隊する
試験の結果報告を受けたのは、六日後だった。
クレアさんから宿に泊まっていた候補者達、全員が入団試験に合格したと告げられる。
ほとんどの者は喜んでいたが、何人かは、その結果を楽観的には受け止めてなかった。
すべて合格させたということは、捨て駒として使われ、辺境の地へ飛ばされたり、過酷な戦場に配属される可能性が高いだろう。
本当に喜んでいいのは、配属先を告げられてからだ。
「これから名前を呼ばれた人だけ私について来てください。呼ばれなかった人は闘技場のあった場所に移動して、待機していて下さい」
クレアさんが呼んだのは、わずか五人の名前だった。
その顔ぶれを見てわかる。
真の合格者はこの五人だけだ。
「どうやら一緒みたいだね」
隣にいたハクがそう言った。
声は出さずに、ゴーレムの首を縦に動かしてうなづく。
ハクはちょっと嬉しそうにニヤケていたが、知らないフリをして、クレアさんの後についていく。
ハク、僕、他の三人の順番だ。
「……この道は」
誰にも聞こえないように、ゴーレムの中で呟いた。
明るい表通りと違い、壁の影に隠れた薄暗く、ジメジメとした場所。
初めてこの街に来た時、ハナさんと通った裏道だった。
前の時と同じく、汚れた服を着た男達が地面にゴザを敷いて怪しげな薬のビンや、奇怪な装飾品を売っている。
まさか、アラクネの所にいくんじゃないだろうな。
一瞬、そう思ったが、アラクネの隠れ家があった壁を通り過ぎ、さらに先に進んでいく。
辿り着いたのは、路地裏の隅にある崩れた瓦礫の家だった。
天井も壁も崩れたその家は中が丸見えで、とても人が住んでいるようには見えない。
「ここよ、ちょっと待っててね」
皆が呆然とする中、クレアさんがポケットから鍵を出す。
瓦礫の家には扉もないのに、クレアさんは何もない空間にその鍵を差し込んだ。
ガチャリという音がして、空間が扉の形に切り開く。
そこから、中を覗くと大理石の壁でできた立派な部屋が広がっていた。
「魔法でカモフラージュしているのよ。あなた達がこれから入る部隊は、ちょっと特殊な部隊だからね」
ここに配属されることは、当たりなのか、ハズレなのか。
どちらにせよ、僕はこの部隊で活躍し注目され、成り上がっていかなければならない。
ガレアの街を支配するガレア家に近づくために。
ドアを開けると、部屋の一番奥に男が座っていた。
試験の時とは違い、ガレア兵士の服装で、その身を固めている。
「やあ、久しぶり」
相変わらずの爽やかな笑顔で僕達を出迎える。
「ようこそ、ロンド遊撃部隊へ」
ガンス総統、直属の遊撃部隊。
どうやら、僕は当たりを引いたようだった。




