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転生子と間違えられ、捨てられた赤さん、知識スキル『ウィッキーペディア』で成り上がる  作者: アキライズン
第一章 レッド・サンライズ

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五十七話 ロンド、復活する

 

 ベッドの上で目を覚ました。

 腕には透明な管が通っており、輸血されている。

 胸に違和感を感じて、試合中に背後から狙撃されたことを思い出す。

 起き上がろうとすると、身体が固定されているのか、身動き一つ取れなかった。


「あらあらあら、まだ動いてはいけませんよ。ロンド隊長」


 いつもの気の抜けたような声が聞こえてくる。


「クレアか。あれから何時間たった?」

「四十八時間です、ロンド隊長。もう目覚めないんじゃないかと思ってましたよ」


 どうやらかなり危なかったようだ。

 別世界から持ち込まれた銃による攻撃は、魔法による回復が難しい。

 助かったのは、かなり運がよかったと言えるだろう。


「犯人はわかったのか?」

「分析班が調べましたが、痕跡は一切見当たらなかったそうです。ただ、試験候補者の中に紛れ込んでいたのではないか、との見解がなされています」

「……そうか」


 そこはボクも同意見だ。

 三十人弱の候補者の中に、転生子の仲間がいる可能性は高かった。

 全員を尋問にかけることも出来るが、その方法では尻尾を掴むことは難しいだろう。


「それで、試験のほうはどうなった?」

「レッドとハクが決勝で戦い、レッドが優勝しました。試験結果は後日連絡すると伝え、候補者全員、宿で待機してもらってます」

獅子身中(しししんちゅう)の虫か」


 さて、どうしたものか。

 なにか理由をつけて、全員不合格にすることが一番の安全策だが、犯人を捜すことも不可能になる。

 かといって内部に敵がいる状況は、あまりにも危険すぎる。


「ガンス総統にこの事は?」

「伝えました。面白いから全員合格にしろ、と言っておられました」

「はっ、相変わらずだな。あの人は」


 真面目に悩んでいるのが、馬鹿らしくなるほど豪胆だ。


「いいだろう。使える者はボクの部隊に入れる。残りは全部、アラクネの部隊に放り込もう」

「いいのですか? あそこの部隊は良からぬ噂をよく耳にしますが」

「毒を以て毒を制す、だ。使えない部下はいらないし、転生子の仲間とアラクネ、どっちが潰れても構わない」


 クレアのいうように、アラクネには、薄汚い噂が後を絶たなかった。


 部隊に入る前、転生子と闇で取引をしていた。

 その転生子の情報を売ることで、ガンス総統に取り入って、幹部として入団した。

 自分の部下達に人体実験をし、失敗したら事故に見せかけて殺している。

 魔物とのハーフで、その正体は薄汚い蜘蛛らしい。


 どれも確証は得れていないが、いつか証拠を掴み、やがてはあの女も排除しなければならない。


「それでは、ロンド隊長の部隊には誰を選ぶのですか?」

「ああ、そうだな、紙とペンを」


 身体が動かないので、風魔法でペンを使い、クレアが持つ紙に名前を書く。


「この五人でいいのですね」

「ああ、その五人でいい」


 選んだ五人の中に、ボクを撃ったやつはいるだろうか。

 もし、いるならば、必ず正体を暴いてなぶり殺す。


「あら、この五人」

「どうした? 何か気づいたのか?」

「いえ、みんな髪の色が違うなって、思っただけです」


 確かに偶然にも、五人全員の髪色が違っていた。

 ボクとクレアを足しても部隊七人、すべて違う色になる。


「なかなか覚えやすくて、いいじゃないか」


 裏切り者がいるかもしれない曲者揃いの新しい部隊に、ボクは皮肉を込めて、そう言った。




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