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転生子と間違えられ、捨てられた赤さん、知識スキル『ウィッキーペディア』で成り上がる  作者: アキライズン
第一章 レッド・サンライズ

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五十六話 レッド、決着する

 

 時間にしたら、一分も経っていない。

 けれど、僕とハクの戦いは、もう終わりに近かった。


「ハッ、ハッ、フゥ」


 ハクの呼吸が乱れている。

 これまで超加速により、すべての試合を一瞬で決めてきたハクには、まったくダメージがなく、まだまだ戦えると思っていた。

 だが、ハクは顔に出さないだけで、随分と無茶な動きをしていたらしい。


「そうだよね、加速魔法だけであそこまで早く動けるわけがないよね」

「うん、キミの援護がなければここまで来れなかったよ。もう身体はボロボロで、指一本動かしたくないよ」

「降参する?」

「まさか」


 ハクが大きく息を吸った後、吠えるように息を吐き出した。

 乱れていたハクの息が嘘のように静かになる。

 次のハクの攻撃が、最大最後の攻撃だとわかった。


 六つの魔法のうち、半分を解除する。

 使っているのは、闘技場を隠す竜巻魔法とハクにかけている加速魔法、そしてゴーレムを動かす操縦魔法だ。

 下手な小細工はしたくなかった。

 ハクの全力を全力で受け止めたい。

 装備していた(おの)も捨て、ゴーレムの拳を握った。


「いっ、くっ、ぞぉォォォッ!!」


 ハクが、これまでにないような、とんでもない速さで一直線に向かってくる。

 あまりのスピードに、後ろで束ねていたハクの白い髪がはじけるように、ぶわっ、と広がった。


 ぶちぶちと筋肉の繊維が千切れる音が、ここまで聞こえてくる。

 こんな攻撃を避けれるはずがない。

 僕に向かって、真っ直ぐに放たれた拳は、ゴーレムの胸部を粉々に粉砕した。


 ガードするものがなくなった僕の顔面に、ハクの拳が迫る。

 その拳が、あと一ミリというところで、ピタリと止まった。

 先にゴーレムの拳がハクの顔面にぶち当たったのだ。



 ハクが攻撃する場所はわかっていた。

 同時に攻撃したら、絶対に間に合わないことも理解している。

 ハクが向かって来る前に、僕はすでにゴーレムの拳を振り上げていた。


 これまでの戦いと、ハクのデータから、真正面から一直線にくると予測する。


 後は拳を振り下ろすだけだった。

 ハクがやって来るであろう、その場所にっ!



 轟音が響き、ハクは闘技場の外まで飛んでいく。

 顔は潰れ、首は折れ、回転しながら、血を撒き散す。

 その威力はゴーレムの腕力によるものではなかった。

 ハクの神速とも呼べる攻撃に、カウンターを合わせたことによって、一の力が何百倍にも膨れ上がったのだ。


 そのままなら、ハクは即死だっただろう。

 それは、考えて使ったものじゃなかった。

 ハクを殴ったと同時に、光魔法による回復を、僕は自動で発動していたのだ。

 

 ハクに壊された胸部を修復した後、竜巻魔法を解除し、場外に飛んだハクを見る。

 気絶はしているが、外傷はほとんどなくなっていた。

 魔法が使えないのに頑張るハクを、僕は予想以上に気に入っていたようだ。


「それまで、勝者レッドっ!」


 試験官が勝ち名乗りを上げ、僕はトーナメントに優勝する。

 しかし、その喜びに浸る暇はない。


 僕の復讐は、まだ始まってすらいなかった。



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