四十六話 レッド、休憩する
「二回戦は午後から行う。こちらで昼食を用意しているので、希望者は取りに来てくれ」
一回戦が終わり、30人弱いた入団候補者は16名になっていた。
回復担当のクレアさんが笑顔で弁当を配っている。
一回戦で使った魔力を回復させる為に、候補者達が弁当を取りにいく中、僕は座ったまま動かない。
生後半年の僕には、離乳食かミルクを飲むしか出来ないのだ。
ゴーレムの中で、僕はもぞもぞと動く。
僕が入っているゴーレムの胸部には結構なスペースがあり、色々なアイテムを搭載していた。
ハナさんが僕の為にアマゾーンで買ってくれた哺乳瓶もそのうちの一つだ。
いただきます、ハナさん。
心の中で、そう言って、ミルクを飲みはじめる。
目を閉じるとハナさんの顔とおっぱいを思い出した。
幸せな気分の中、じわぁ、と魔力が回復していくのを感じている時だった。
「ごはん、食べないの?」
いきなり話しかけられて、ぶっ、とミルクを吹き出した。
まったく気配に気づかなかった。
いつの間にか、弁当を持ったハクが僕の隣に座っていた。
すぐに返事をしようとしたが、むせてしまい話せない。
ハクが僕の顔をじっ、と見ている。
ゴーレムの顔ではない。
胸部にいる、本体の僕の方を、だ。
「そう、中で食べてたのね」
バ、バレてるっ!?
ど、どうしてっ?
魔法でも探知されないように、光魔法でガードしているはずなのにっ!?
「……な、な、な、なんのことだか、わからないが」
精一杯の強がりでそう言ったが、声が震えて動揺が伝わってしまう。
「大丈夫。隠してるようなら内緒にしてあげる」
ハクはもう僕の方を見ていなかった。
無表情で弁当を食べながら、僕だけに聞こえるような小さな声で話す。
「ワタシは生まれた時から魔力がないけど、魔力の流れや人の気配には敏感なんだ」
なんてこったい。
それは、『ウィッキーペディア』でもわからなかった。
どうやらハクは魔法以外の能力で、僕の気配を察知出来るみたいだ。
「なんで、そんなことしてるかわからないけどワタシにはどちらでもいい。ここで兵士になってお金を稼げたら他のことはなんでもいいの」
「……そうか、で、見返りに何をしてほしい?」
わざわざ僕に話しかけてきたのは、何か目的があるからだろう。
その内容によっては、かなりのリスクは伴うがここでハクを始末しなくてはならない。
「一回戦のアレ、気持ちよかったから、またやって」
「へ? そんなんでいいの? あっ」
ハクのお願いがあまりに拍子抜けだったので、声を変換するのを忘れて、思わずそのままの声で答えてしまう。
「声可愛いね。お願い追加していい? ワタシと二人で話す時は、そっちで話して」
ハクがそう言ってにこっ、と笑った。
普段は無表情でちょっと怖い感じだが、笑うとふわっ、とした優しい空気が流れてくる。
おっぱいは小ぶりたが、顔はけっこう可愛い。
「さらに追加。おっぱい見るの禁止」
笑っていたハクが、胸を隠して、キッ、と僕を睨んだ。
ハクの前では、全部お見通しらしい。
「ご、ごめんなさい」
僕がそのままの声でそう言うと、ハクは満足そうにまた笑った。




