表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/80

四十三話 レッド、回復する

 

「敗退した者も合格するチャンスは残っている。選抜が終わるまで待機しておくように」

「……はぁ、わかっただ」


 がっくりと肩を落としてベンは、控え室に向かう。

 実際、ベンは入団試験に受かる可能性が高いと、僕は思っていた。

 彼の使う地魔法はどれも高威力で、素晴らしいものだった。

 僕が作った土の槍や壁は、ベンを(まど)わせる為に外見だけを真似た偽物だ。

 魔法バトルなら僕は、ベンの足元にも及ばない。

 ちゃんとした詠唱もなく、得意属性もない僕の魔法は、すべて平均点レベルといったところだ。


 それでも、負ける気はしないけどね!


 僕の特性がバレなければ、どんなに強い敵にも勝つことができる。

 僕はゴーレムの中でドヤ顔をした。


「それと負傷したレッドは、回復魔法による治療を行う。クレアさん」

「はーーい、こっちにきて、レッドくん」


 試験官の横にずっといた女の人が手招きする。

 金髪ストレートロングのふくよかな女性だった。

 おっぱいが大きい。

 いや、見たくて見たんじゃない。

 僕が入っている位置が、ちょうどクレアさんの胸の前になるのだ。

 決して、クレアさんのおっぱいに興味があるというわけじゃない。


「負傷は右肩、左足、脇腹の三箇所でいいのかしら。思ったより、傷は深くないわね、血も止まってるわ」


 水を赤くしただけの血袋をゴーレムの身体に仕込んでいるが、調べられたらバレてしまう。

 事前に、処理して傷が治っているように見せかける。


「頑丈なのね。すぐ完治させるから待っててね」


 クレアさんの手がぽぅ、と光り、僕の身体にかざす。

 金の髪色は、光属性の影響だろう。

 きっと優秀な回復魔法を使えるのだろうが、ゴーレムの損傷は回復魔法では治らない。

 こっそりと、クレアさんが回復しているように、僕は地魔法でゴーレムを修復していく。


「あらあら、回復が早いわね。元気な証拠よ、えらいわ」


 クレアさんがそういって、使っていない方の手で僕の頭(正確にはゴーレムの頭)を撫でる。

 ぼよん、と目の前でおっぱいが揺れた。

 ゴーレムの中で僕は思わず視線を逸らす。


 ちがう。これはちがうよ、ハナさん。

 僕はおっぱいならなんでもいいわけじゃないんだ。

 一番、好きなのはハナさんのおっぱいなんだ。

 全体的にふくよかな人の大きいおっぱいじゃなくて、身体は細くてスタイルがいいのに、おっぱいが大きいハナさんのおっぱいが理想のおっぱいなんだっ!


 おっぱいを連呼しながら、心の中でハナさんにあやまる。

 ジト目で僕を見るハナさんの顔が頭に思い浮かんだ。


「はい、治ったわ。二回戦もがんばってね」

「……ありがとうございました」


 笑顔で手を振るクレアさんに礼を言って、すぐにその場から離れる。

 必要以上の会話はしない。

 優しそうな女性だが、彼女もガレアの街の兵士であることに変わりない。


 それは、やがて僕の敵になることを意味していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ