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神様がいない異世界新生活  作者: 出佐由乃
ユズ市の道具屋 編
23/42

23 異世界フシギ発見!

 ふぉっくす……だぁぁぁ、じゃないっ!!!


 あぶねぇあぶねぇ。危うく最終回になるところだった。

 しかし、尻尾の破壊力はえげつねぇわ。ケモ耳にケモ尻尾に照れ顔は反則だと思いますまる。

 さて、あの後倒れて火憐に運ばれて、おそらくここは道具屋の二階、私の布団。

 頭に濡れたタオルが置いてあるのは、何かの病気かと思われたからかな。

 まあ、いいや。とにかく勤務初日だし、早く店に行かないと。

 階段を下りて、暖簾を潜る。この先から道具屋の店内だ。

 まずは何をするのかな。品出し?掃除?


「おはようございます」

「えみぃぃぃっ!」

「おぅふっ」


 火憐が私の腹に飛びついてきた。30ダメージ。

 火憐、めっちゃうるうる涙目。


「ちょ、ちょっと火憐、大丈夫?」

「えみ、えみこそ、大丈夫なのか!?えみが血を吹いて倒れたから、危険な病なんじゃ……」

「あぁ、ちがうちがう。あれは……その、生理現象?」

「せえり、げんしょう?よくわからんが、大丈夫ならよかったのじゃ……」

「ごめんごめん、心配かけたね」

「むぅ」

「本当にごめんってぇ」


 むすっとして、ぷいっとむこう向いちゃう。かわいい。


「わかったのじゃ。でも次はやめてほしいのじゃ」

「わかったわかった、次は気をつけるよ。それでさ火憐、店は?」

「ん?まだじゃが」

「え、まだなの?私どれくらい寝てた?」

「一時間ほどじゃ」


 起きたのが日の出の6時だとして、それから2、3時間は経っていることになる。起きたときには他の店はもう開いていた。


「そうだ、あそこに行くときに分けてあげるって言われた物はどうしたの?寄ったの?」

「わしが慌ててえみを抱えて帰っていくときに、寄れるわけないのじゃ」

「ごめんて」

「帰る時に、また後で行くと伝えたから大丈夫じゃ」

「……伝える余裕はあるのね」


 しょうがないから後で、お詫びも兼ねて出向くとしよう。それにしてもうちの道具屋は、こんなに開店が遅くて大丈夫なのだろうか。

 朝からせんせいの姿も見ていないし。まだ寝てるのだろうか。


「せんせいなら出かけて行ったのじゃ。お昼に戻ってくると思うのじゃ」

「出かけた?どこに?」

「それは」

「ただいま~!」


 火憐が言いかけたところでせんせいが店の戸を開いて入場。朝からテンション高いなぁ。


「えみちゃんほどじゃないわよ~?」

「んぐっ」

「せんせい!早かったのじゃ!」

「うん、早く終わったから早く帰ってきたわ~。えみちゃんも心配だったから~」

「ごめんなさい。もう大丈夫です……」

「いいのよ~。でも、謝っておきなさい?」

「火憐には謝りました」

「火憐ちゃんじゃなくて~百引(もびき)さんによ~」

「えみちゃん、大丈夫?」


 せんせいの後ろからひょこっと現れたのは、向かいで野菜を売ってる百引さん。


「火憐ちゃんが、鼻から血を流したえみちゃんを背負って走ってたから。私、心配したのよ?」

「ご、ごめんなさいぃぃ!」

「怪我とかじゃないの?もしかして病気?」

「あ、いえ、あの、だ、大丈夫です!」

「そうなの?それならいいのだけれど」

「菜々ちゃん、お茶していかない?」

「いいんですか?それじゃあ……」

「なな?」

「あ、私の名前、菜々っていうの。えみちゃんには言ってなかったね」


 百引さんの下の名前は菜々さんというらしい。


「菜々さんは21だったりします?それとも93?」

「え?」

「なんでもないです」


 頭が数学を欲しているのかもしれない。……やめよう。

 それにしてもせんせいが“ちゃん”呼びするってことは、歳は……


「20代よ。せんせいは私が子供の頃から全然見た目が」

「菜々ちゃん~?」

「あ!えっと、せんせいは永遠の二十歳です」

「ふふふ」

「……」


 せんせいは一体何歳なんだ……


「ま、いいわ。とにかく入りなさい~?火憐ちゃん、お茶用意してくれる?」

「わかったのじゃ!」

「えみちゃんはそこ座って~」

「あ、はい」


 店のテーブルの席に腰掛ける。……あの、お仕事は?開店は?


「それで、菜々ちゃんのところは最近ど~う?」

「それがですね……」



 1時間後……



「宿の山土井さん、ご結婚されるそうなのよ~」

「ええ!そうなんですか!」

「そ~なのよ~ふふ」


 さらに1時間後……


「えみちゃん、これ食べてみてくれるかしら~?」

「これはクッキーですか?」

「さすが、よく知ってるわね~。旅の商人から買ったのよ~」

「せんせいはいつもあの商人から仕入れていますよね。何か特別なんですか?」

「あの商人はね~西の方から……」


 それから2時間後……


「これ、おいしいでしょう?うちで作ってるお漬物」

「ええ、とてもおいしいです」

「えみ、おかわりするか?」

「私はもうお腹いっぱいだからいいや」


 その1時間後……


「あら、もうこんな時間。そろそろ上小沢(かみこざわ)さん来るから店に戻るわね」

「またいつでもいらっしゃい~?」

「はい、では。またね火憐ちゃん、えみちゃん」

「またなのじゃ」

「はい」


 ……仕事はっ!?


「それでは、今日はもうお店閉めましょ~」

「わかったのじゃ!」

「ちょ、ちょっと待ったあああ!」

「え、えみ、どうした!?」

「そうしたもこうしたもあるかぁっ!私のお仕事は!?」

「え?もう終わりよ~?」

「んな!?」


 私、座ってせんせいと菜々さんと火憐とお喋りしながらクッキー食って、お昼喰って、片づけただけなんだけど!?商売は?ここ、道具屋だよねぇ?喫茶店じゃないよねぇ?


「今日はお客さんが少なかったのよ~」

「少ないっていうか、ゼロじゃないですか!ゼロ!」

「ぜろではないのじゃ。ななが来ておったではないか」

「菜々さんはお客さんだけど、商売としてのお客さんではないでしょうが。菜々さんだから七人ってか?面白くないわっ!」

「まあまあえみちゃん、落ち着きなさ~い?うちは毎日こんな感じなのよ~」

「ええ!?それで経営が成り立つんですか!?」

「この町の人が店の客として来ることはまずないわ~」

「だめじゃん!」

「たまに旅の人が物珍しさに寄るくらいなものよ~」

「私のお給金はちゃんと払われるんですか!?」

「もちろん、ちゃんと払うわよ~。お店の店員さんだもの~」

「あたりまえなのじゃ!」


 ……おかしいのは私なのか!?こんなんでお店がやっていけるはずがない。

 税金があまりかからないとか?商品の単価がむちゃくちゃ高くて、1個売れれば1か月生活できます、とか?実は国から給付金が……


「まあまあ、えみちゃんは深く考えなくていいのよ~」

「いやいやいや、考えるでしょう、これは」

「わしは考えたことがなかったのじゃ」

「火憐は魔法馬鹿だからね」

「ばかじゃないのじゃ!」

「そういう意味じゃ……いや、そういう意味、か?」

「んぐぐ……」

「喧嘩はよしなさ~い?」

「はい、なのじゃ」

「とにかく、えみちゃんは心配しなくて大丈夫よ~」

「はぁ」

「ま、お店はこんな感じだから、よろしくね~?」

「は、はぁ……」


 納得いかねぇ……

 せんせいはこの辺では高そうな物をホイホイ買ってるみたいだし、火憐にもちゃんとお給料出してるみたいだし、私にも出すっていうし、将来上げるかもなんて言ってたし……

 魔法よりもせんせいの収入の方がよっぽど不思議だわ!

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