第五話「模擬戦3」
二つ目の部屋を後にした近衛とグレンが階段を上る。学校の階段のように途中に踊り場があった。踊り場へと足を半歩踏み入れたときMP5から射出された弾丸が襲いかかってきた。
階段になぜか置かれていた巨大段ボールに流れ弾がぶつかる。くずが埃が舞い散り視界が悪くなる。グレンがインパクトグレネードを階段上に放り投げ衝撃波を生む。
近衛は一応巨大段ボールの中を確認するが誰もいなかった。
「ぐがぁああああ」
敵兵が衝撃波によって吹き飛ばされ壁に激突する。意識をもうろうとさせているが、戦意は失っていないのか力が入らない弱々しい手を必死に動かして拳銃を握り構える。銃口が近衛を睨む。
グレンがもうろうとする敵兵の腹部に二発撃ち込み気絶させた。
『こちらヴィーシャ。敵チームリーダと交戦中。応援を求む』
「先を急ごう」
「ああ」
近衛とグレンがヴィーシャのもとに向かおうとしたのだが、パリンと後方から音がしたため歩みを止め、百八十度回転して銃を構える。そこには窓ガラスの破片と体中にインパクトグレネードをダクトテープを使って貼り付けている、マッチョがいた。
右腕を引っ張ると安全ピンがすべて外れる細工が施してある。自爆するつもりのようだ。
「一人で死ぬのは寂しいからさぁ! 一緒に地獄にいこうよぉ」
マッチョが不気味に微笑み――
――そして走る走る走る! 男気を見せつけてくる!
「自爆だぁあああああっ」
近衛がマッチョの足を銃撃するのだが止まらない! 止まらない!? 痛覚がないのか? 興奮しすぎて感覚が麻痺しているのか? 近衛が困惑する。
グレンが全力疾走をする。マッチョにタックルをして地面に倒した。反動によってマッチョの右腕が後ろに引っ張られ安全ピンがすべて外れる。
無数の衝撃波が生成されベニア板のドアや窓ガラスともども吹き飛ばしていく。グレンとマッチョが通路を転がり動かなくなる。息があることを確認した近衛が安堵する。
「グレンが衝撃波に巻き込まれた!」
『くそっ生き残りは?』
「自分以外は全員やられました」
『最悪すぎる展開だな。合流しろ。大将を討ち取る』
「了解」
近衛が急行する。ヴィーシャと大将がドンパチを繰り広げていた。ヴィーシャの隣には小鳥の姿がある。ダリルの亡骸(演技)が転がっていた。
大将は大笑いしながらM2重機関銃をぶっ放している。それも手持ちで扱いながら。近衛は二つの意味で驚愕する。重いし反動が激やばだから生身の人間が扱える銃じゃないはずなのに。ゴム弾でも被弾したら死ぬだろ。近衛は心の中でつっこむ。
ヴィーシャが戦っている場所はテニスコート二面分あるかないか程度の大きさの倉庫だ。消耗品の備蓄が保管されている。それらをM2重機関銃が粉砕する。ヴィーシャと小鳥は消耗品が入った段ボールの山や棚を障害物として活用して猛攻を退けつつ攻撃を加えていた。
参戦したくないなと近衛は思った。近衛とダリルの視線が合う。とりあえず被弾したことにして亡骸のフリでもしようぜとダリルが近衛を誘う。その手があったか! と近衛は手をぽんと叩くが、こちらをじとぉと見る小鳥に気がつき断念する。
「敵を牽制して動きを一時的に封じる。近衛がんば」
ヴィーシャが近衛に防弾盾を手渡す。そして射線に押し出す。実弾なら一昔前の装甲車の装甲を貫通する威力があるM2重機関銃の弾雨が近衛を襲う。泣き叫ぶ近衛の背後でヴィーシャが銃撃をする。
大将の意識が近衛とヴィーシャに向かい、小鳥が見えなくなった。小鳥が飛び出し背後を取る。危険を感じ取った大将がM2重機関銃を放り投げ、拳銃を抜く。小鳥と大将が近接戦闘を楽しむ。
「エネミーダウン突入っ」
大将が倒れた。倉庫内にあるちょっとした作業部屋のドアノブをヴィーシャが掴む。大将が問題児が残っているぜと不適に笑う。




