第四話「模擬戦2」
近衛が防水扉前に移動してトラップが仕掛けられていないかのチェックを素早く済ませる。扉を開け静かに別の区画に移動する。
扉を開けたらドカンと手榴弾が爆発したり斧が遊園地のバイキングみたいに襲いかかってきたりS○Wのゲームみたいにショットガンで頭をぶっ飛ばされたり等々痛い思いをして死にたくないのであればトラップ有無の確認は基本中の基本だ。
通路に点在しているドアの一部が取り替えられている。ゴム弾では絶対に貫通しない材質のドアからベニア板のドアに変わっている。職員の粋な計らいだ。
ゲームや映画等で銃弾が壁やドアなどの遮蔽物を貫き味方または敵が倒された光景を見たことがないだろうか? 見えない敵からの突然の攻撃が壁抜きだ。
スコット・ウォー監督の『ネイビーシールズ』という映画では特殊部隊員が壁抜きによってテロリストに倒されるシーンがある。戦闘のプロでも壁抜きを予期するのは不可能に近い。恐怖によってヴィーシャ一行の心拍数・血圧が跳ね上がる。
ヴィーシャ一行が廊下を一列になって進む。先頭は小鳥、その後ろに六人。最後尾の近衛は後方警戒要員(後方からの突然の奇襲または遭遇の対処)を担当する。
「眠い」と独り言を言いながら十字路の右側から一人の敵兵が歩いてきた。そしてばったり鉢合わせをする。ホルスター内の拳銃(ベレッタM93R)を抜こうとするが、小鳥に撃たれて力を失う。ダンっと船内に銃声が鳴り響きヴィーシャ一行の場所が露見してしまった。銃撃戦は免れないだろう。
壮絶な室内戦闘の始まりである。
「十二時方向っ敵六!」
ダリル(優しそうな顔つきの二十八歳くらいの男性)が叫ぶ。
二十メートル先の右側と左側の半開きのドアから半身を覗かせ敵兵がダダダダダンと撃ってくる。敵兵の武装はHK416。アサルトライフルだ。
小鳥とダリルがMk18とSG550をフルオート射撃しながら素早く前進――
――残りの六名は小鳥とダリルの後ろに隠れながら前進し四名(近衛を含む)が右側の通路に二名(ヴィーシャを含む)が左側の通路に進み。端から順番にドアを蹴り破ってクリアリング(安全確認)を行う。ホテルの通路のようだ。左側の壁に七つのドアがある。
小鳥とダリルは壁に半身を隠しながら前方に向けて牽制射撃を行う。
一~四つ目の部屋内のクリアリングが終わり、
五つ目のドアを蹴り破ろうとレイフ(熊のような男性)が足を振り上げたとき、ばこんという音とともに無数のパチンコ玉サイズのゴム弾がドアをぶち抜く。レイフが百裂拳を食らったかのような激痛に襲われ地面に倒れた。
痙攣している。
「ショットガンだっ!」「後方から敵っ」
敵兵が五つ目の部屋から姿を現す。瞬時に反応した近衛が敵兵の銃を奪った。クリアリングしたはずの部屋(二つ目)から二名の敵兵が出現する。
ばこんばこんと横移動しながら近衛たちを銃撃する。散弾がグワァと迫ってきた。ショットガンを装備する敵兵の目の前にいる、盾と拳銃を構える敵兵が小鳥に発砲。小鳥はMk18を身代わりにして被弾を防ぐ。
ホルスターからSIG P228を抜くと防弾盾持ちの敵兵の足首を撃ち隙を作った。防弾盾からはみ出た頭部を撃つ。
ヘクター(金髪碧眼の男性)が肉壁になり、近衛とグレン(顔の彫りが深く肩幅が広い六十代くらいの男性)を散弾の雨から庇う。ヘクターは苦悶の表情を浮かべながらもホルスターから拳銃を抜き連射する。
がむしゃらに放たれた弾丸の一発がショットガン持ちの敵兵の肩に命中する。手からショットガン(M1014)がするりと落下する。武装を無力化した、ヘクターは気持ちよさそうに眠り込む。しばらく起きそうもない。
近衛がもみ合う敵兵の腹部を撃つ。グレンが五つ目の部屋内にスタングレネードを放り投げる。そして肩を押さえる敵兵に鉛をプレゼントする。
爆発と同時に五つ目の部屋内に突入し制圧する。そして二つ目の部屋に移動。天井に一メートルほどの穴が空いていた。クリアリングのときにはなかった穴だ。頑丈な天井をどうやって円形にくりぬいたんだ? と近衛は驚愕する。同時に修理に金かかりそうだな。不安になる。




