エピローグ
「おい、そこの美人ども」
俺の声に気づかないはずはないのだが、目の前にいる美人三人は、手に持っているトランプを置く気がないらしい。
こちらを一瞥してすぐさま目の前のカードに目を戻した青髪の少女。
にこっと笑いながらこちらを振り向く赤髪の女の子。
そして、こちらを死んだ魚のような目でぼーっと眺める緑髪の女性。
クリスマスの日から俺と美樹は付き合い始めた。しかし、やはりと言うべきか俺たちのいる奨学生部にはなんら変わりがない。
「克人くん? 流石に彼女のいる前で他の女性に対して美人というのはいかがなものでしょうか」
「あ、ごめん。じゃ、言い直すわ。おいそこの美人とその他二人」
「まさかもう半年以上の付き合いのはずなのに、克人さんの中であたしたちの存在がモブになってるっすよ!」
「そうですよね……。どうせ、私は最初からモブ……」
「ちょっと、せっちゃん何心折られてんすか! ほらメガネっす!」
「悠陽ちゃんありがとう……おい志島。何度言えばわかるんだ? 部室でいちゃつくな」
やっぱり少し変わったような気もする。
だが、ここにいる美樹、悠陽、せっちゃん、そして俺がくだらなく笑いあっていることには変わりない。
「今週末はどこかに行きますか?」
「良いよ。どこに行く?」
「あたしも行きたいっす!」
「良いですよ。それじゃあ悠陽さんも含んだ三人で出かけましょうか」
「冗談っすよ!? 何が悲しくてカップルと一緒に出掛けなきゃならないんすか! ってか、美樹さんなんで断らないんすか! あれっすか、正妻の余裕ってやつっすか!?」
「うーん。別に克人くんは悠陽さんがいてもいなくても、私のことを一番に考えてくれますから。そうですよね、克人くん?」
「ははは」
「あのな、いちゃつくなって言葉には会話によるいちゃつきも含まれてるからな!?」
せっちゃんと悠陽から文句を言われながらも、美樹は楽しそうに笑っている。悠陽も美樹をおもちゃにして楽しそうだ。せっちゃんは……本気でイライラしているような気がするが放っておこう。
「ほら、片付けるぞ」
俺は昨日も掃除をしたはずなのだが、なぜか汚れている部屋。
俺は誰の手も借りずに掃除を開始する。
「克人くん、私にも何か手伝わせてください」
「そうか、じゃああそこで遊びたがっている悠陽を連れて校舎内を探検してきてくれ」
「ひどくないですか!?」
「適材適所だ。掃除を手伝われてさらに汚されちゃ、いつまで経っても終わらないからな」
「あの、そこはもう少し歯の浮くようなセリフを言って欲しいんですが」
「美樹と一緒に掃除がしたいな。掃除が」
「分かりましたよ! 私にもできないってことの自覚くらいありますから!」
「克人さん、すみません! 彼女さんお借りするっすよ!」
そう言うと、美樹と悠陽は仲良く部室の外へと出かけて行った。
「それで、せっちゃんはこの前言っていたお見合い、どうなったんですか?」
「ん? あぁ、あれか。きっぱりと断ったぞ」
「なぜ!?」
「料理の得意な女性が好みなんですー、とかほざいたからな」
「いや、別に良くありそな希望じゃないですか」
「ダメだ。少なくとも私はそんなことを言う奴が嫌いで嫌いで仕方がない」
こっちもこっちで平常運転。まぁ、人間そう簡単には変われないということだろう。
「それじゃ、私は職員室に行って仕事を片付けてくる」
「行ってらっしゃい」
せっちゃんも部室を出て行ったため、残っているのは俺一人。
掃除がはかどるって素晴らしい。
確かに俺と美樹は付き合うようになった。だが、それ以外は何も変わらない。学校に行けばお母さんと呼ばれるし、部室に行けば掃除すらも出来ない生活力低め女子たちが俺を待ち受けている。
色々とあったが俺のやるべきことは変わらない。
本当にこんなんで良いのかどうかは俺には分からないが、できる限りのことはやって行こう。
俺は適当に思考を放棄し、いつものように部屋の掃除をし始めた。
END
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。どこか一か所でもクスリと笑っていただける部分があれば幸いです。
ここまでたくさんの方にブックマークを頂けるとは思ってもみませんでした。勿論、上には上がいる訳ですが……。しかし、私のモチベーションになっていたことに変わりはありません!
別作品も投稿中ですので、もしよろしければそちらにも目を通してやってください。私が喜びます。
それでは、最終話まで読んでいただき本当にありがとうございました。また、別の作品でお会いしましょう!




