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戦神子と六人の彼  作者: 火渡ユウ
一章 四護神《ガーディアン》集めの旅
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九話 襲撃

 セシール王国は海に面したリゾート国として有名である。

 高級ホテルが建ち並び、カジノやマリンスポーツも充実している。

 早朝のせいか、静かな住宅街を抜けた一行は、先に宿を取ることにした。

 柚葉は、疲れていながらもまだ、コートの男が忘れられずにいた。

 大通りに出たものの、通りに建ち並ぶのは外装からして高級なホテルや、ローマにあるコロッセオのようなスタジアム、そしてショッピングモールなどであった。


「帰りはここで遊んで行くとするかの」


 鼻歌を歌いながらご機嫌なライヤは、「両手には綺麗な花を持たせてな」と遊び人らしい思考を巡らせていた。

 そんな彼にため息をつきながらも、遊びたいという気持ちがわからないでもなく、呆れながらもレイはため息をついた。


 大型施設の何倍も大きい城が、この道の先に見える。

 高級ホテルに泊まる金がない一行は、人がいないこともあり、四護神探しより先に、王に会いに行くことにした。

 すると、お約束のように城の入り口には、兵士が立っていた。


「私はアゼーレ超大国から来た使者でございます。王に会わせていただきたく参りました」

「そんな話は聞いていない」


 当然のごとく追い返されそうになるも、柚葉もルシトと共に頭を下げる。


「お願いします」

「……まあ、どうしても会いたいなら、今日の午後に行われる格闘技大会で優勝することだな」

「四年に一度行われる武闘大会に優勝すれば、王から直々にトロフィーを授けられる」

「ま、予選も終わってるから今さら無理だけどな」


 それしか手段がないなら、優勝者に頼むしかない。だが、優勝する前に頼まなければ会えないだろう。

 そう考えたライヤは、兵士に聞いた。


「この町で格闘が得意で、勝ち残っている奴はおるかの」

「昔ならガイアがいたんだがな」

「でもあいつは何年も前に、突如行方不明になっただろう」

「ガイアってそんなにすごい人なんですか?」

「すごいも何も、ガイアが出た大会で彼以外に優勝した人はいない程、強者なんだ」

「この大陸一の格闘王だって言われてたな」


 ガイアについて語り出す兵士の話を折り、ライヤは再度聞いた。


「居ない奴の話はいいぜよ。他には誰がおる?」

「去年優勝した奴はロッカスだったっけ」

「初出場にして初優勝! いやあ、あいつの試合はよかった」

「その人はどこにいますか?」

「この時間なら、海辺を走っているんじゃないか」

「わかりました、ありがとうございます」


 一行は大通りから外れた道を歩き、高級ホテル街を抜けて一面に広がる浜辺に辿り着いた。

 すると、タイミングよく、一人の男性がランニングを行っているのを発見した。

 手から肘にかけて包帯を巻き、赤い鉢巻を頭で縛って、爽やかなミディの黒髪からは汗が滴る。

 青いタンクトップに長いスポーツ用の通気性が良いズボンを履いている。

 他に人は見当たらず、あれがロッカスという人物であろう。


「すみませーん」


 柚葉が叫ぶようにして声をかけると、ロッカスは顔を向けた。

 そして人差し指を自分に向け、「俺?」と聞いてくる。

 クールダウンするように徐々にスピードを緩めながらも走るロッカスは、四人の元へ近づくときには歩いていた。


「何の用だよ」

「あなたがロッカスですか?」

「あぁ。……って、初めて見る顔だな。手短に済ましてくれ」

「なぁ、あれって――」


 ライヤはロッカスに向けて指をさした。

 頭に疑問符を浮かべるロッカスの右肩には、緑で描かれた三つの山を示すような紋章があった。


「こんなに早く見つかるとは」

「おいおい、何の話してんだよ」


 すると、ルシトはロッカスに説明した。

 四護神の一人、山の護神であること、格闘技大会で優勝し、王に会わせてほしいという頼みも含めて。


「そういうことなんです。だから、協力してくれませんか」

「優勝するのは当たり前だ。その頼みは聞けるが、セシール王国を離れるのは御免だ」


 自分の腕に自信があるロッカスは、首を横に振った。

 ルシトのように、愛国心が強いからというわけではなさそうだ。


「何故だ?」

「俺は母さん一人に育てられてきたんだ。だから恩を何倍にもして返す、そう誓ったんだ」


 どうやら母子家庭らしいが、初対面ゆえにそれ以上先のことは聞けなかった。

 なぜ父親がいないのかなんて、柚葉は気になったが、言葉に出さないようにぐっと堪えた。


「それなら、旅が終わった後でもできると思いますが」

「いや、一人にさせられない。こう言ったら悪いが、アゼーレ超大国がどうなろうと、俺には関係ない」

「……」


 それはわかっていることだった。 

 柚葉やレイ、そしてライヤもアゼーレ超大国がどうなろうと関係ないのだ。だが、彼らは目的やそれぞれの抱える事情は違えど、ルシトのために、アゼーレ超大国の救国に協力してくれていたということを、改めて知る。


「スタジアムで行われる。あんたたちは決勝だけ来ればいい。王に会わせる約束は果たすから」

「ありがとさん」


 ライヤが黙っているルシトの代わりに礼を言うと、「じゃあ」と言って走り出したロッカスは、あっという間に遠い海沿いを走り去っていく。どうやら体力増幅のトレーニングと同時にウォーミングアップを行っていたようだ。


「さあて、どうするかの」

「四護神が集まればいいっていう話だが、そうでもないみたいだな」


 ルシトが持っている紙切れには、「四護神を集めろ」としか書かれていない。

 今、一瞬だが四護神が集まった。……と言えるだろうが、実際は何も起きていない。

 皆が柚葉を見るも、何ら変わりない柚葉に眉をひそめた。


「いっそ、あやつの母さんも一緒に連れて行くとかはどうじゃ?」

「そういう問題ではない気がするが」

「じゃあ、息子さんを説得するようにお願いでもするんか」

「そんなことしたら、ロッカスは本当に来てくれなくなると思う」


 頭を悩ませる三人に、ルシトは腕を組みながら、こう言った。


「ロッカスを応援しましょう」

「うん!そうしよう」


 この意見に柚葉も賛成する。宿を探すこと以外することがないため、この案は採用された。

 午後から格闘技大会が行われるため、午前中に宿を探すことになった。


 一方で、この様子を遠くから見つめている二人の男女がいた。


「戦神子一行は、足を止められているご様子」


 眼鏡をくいっと持ち上げて言うのは、黒ずくめの女。

 ふかふかの高級なソファーで寝ていた男は立ち上がり、視界いっぱいに広がる海が見える窓に近づいた。


「じゃあ、ここらでひと暴れしてやっか」

「本気出したら、彼ら、死にますよ。あくまでも使命を忘れないよう肝に銘じなさい」

「わかってらあ、優勝は譲ってやるよ。……ルール違反でな」


 高級ホテルの最上階、窓から海辺を見下ろすガタイのいい男は、手を組んで骨を鳴らす。


「四護神の中でも、彼が一番強いことはわかっていますか」

「フン! あの三人がクズなだけだろ」

「今は、そうですね」


 怪しげに微笑むと、女は部屋を出て行った。

















 格闘技大会が行われるため、各国だけでなく他の大陸からも大勢の人が来ていた。

 そのため、昨夜から高級ホテルはどの部屋も満室だった。

 住宅街近辺で安い宿を見つけた一行は、そこで体を休ませていた。

 宿主から「宿泊客には格安で格闘技大会のチケットを渡す」と言われ、そこでチケットを買う。

 同時に、格闘技大会の詳細を教えてくれた。


 男女年齢関係なく三万という人々がエントリーし、予選を勝ち抜いた強者十五人と前回の優勝者を合わせた計十六人が今日の大会で戦うらしい。

 試合形式は、トーナメント形式の勝ち抜き戦で、十分以内に相手を気絶させることがルールである。

 それが出来ない場合は、サドンデスに入り、相手を先に地面に伏せさせた者が勝ちとなる。

 そして優勝した者には、莫大な賞金と豊かな生活が約束される。

 ついでに、宿主は今年はケイルという名の男が優勝すると踏んでいる。

 ガイアには匹敵しないが、ロッカスと同等あるいはそれ以上の実力の持ち主らしい。


 そんな話を聞き、不安に思いながらも、一行は格闘技大会が行われるスタジアムに足を運んだ。

 席は人で埋め尽くされており、通路で立ち見をする客がいる程、人で溢れかえっていた。

 指定席のチケットを持っていたため、人混みを縫うようにして歩き、入場してから二十分程でようやく席に座れた。

 スタジアムの中ほどの位置から、下の広いリングを見下ろせる。

 テレビなどはないが、この位置からでも十分にリングの様子が窺える。

 盛大な音楽と共に四方から現れる選手たちは、観客に手を振りながらリングに向かって歩いていく。

 全員が集まると会場は暗くなり、ライトが選手一人一人に当てられていく。

 スピーカー設定にしたリンロンを通した声が、スタジアムに響き渡り、選手を一人ずつ紹介していく。

 その度に、スタジアムは歓声に包まれ、中にはタオルを振りまわしてリング内に向かって投げる人もいた。


「あ、ロッカスだ!」


 柚葉がロッカスを指し、思い切り手を振るも、こんな大勢の中気付くはずがなかった。

 当の本人は紹介されると、静かに手を上げ、「今年も優勝は俺が貰う」と断言した。


「あの人がケイル、ですね」

「見るからに只者じゃなさそうじゃのう」


 期待のルーキーとして紹介を受けたケイルと呼ばれる男は、黒いマントに身を隠していた。

 それでも、ガタイがいいのがわかる。

 試合進行を務める司会者に一言をお願いされ、ケイルはリンロンを受け取った。

 次の瞬間、ケイルは偶然にも、柚葉のいる方向に顔を向ける。


「可哀そうな犠牲者」


(……えっ?)


 柚葉は、ケイルと目が合ったように感じていた。

 当然、皆は柚葉に向かって言っているものではなく、選手たちに向かって発言したと思っている。

 会場の熱気は上がり、またもや歓声に包まれる。


「どうした」

「ううん、何でもない。大丈夫」


 何万もの人がいる中で、自分を見て言っているだなんてそんなことあるわけないと、そう思った柚葉は、隣に座っているレイに笑って見せた。

 そして、紹介が終わると、試合が始まった。

 さすが前回の優勝者と言えるロッカスの格闘技は、凄いものだった。

 目に見えない速さで攻撃を繰り返していく。それだけでなく、相手の軸足や弱点を狙い、反撃の隙間も与えずに二、三分もしないうちに気絶させる。

 ロッカスの勝利に大歓声があがり、それを祝してタオルやら花束やらを投げる観客がいた。ロッカスの熱狂的ファンらしい。


 それと比べ、ケイルは完全なパワープレイだった。

 一撃当たれば、相手は吹っ飛び、もう一度攻撃を食らえば、起き上がる者はいなかった。


「嫌な予感がするぜよ」

「……本当に勝てるのか」


 ライヤとレイが思ったことを口にすると、柚葉は「大丈夫」と根拠のない自信で発言した。

 ルシトはただ、試合の様子を見守っている。


 皆が待ちに待った決勝戦が行われる頃には、夜になっていた。

 だが、それでも熱は冷めるどころかヒートアップしていた。

 どちらが勝つのか皆が口にし、また賭けをしている輩もいた。

 王に会えるかどうか、全てはロッカスにかかっている。

 柚葉はロッカスの勝利を胸に、手を組んで祈る様に、二人の選手が立つリングを見つめていた。


「王者二連覇を前にするロッカスに対するは『二撃の殺し屋』ケイルだああ!」


 今までにない盛り上がりを見せる会場で、客のほとんどが席を立ち、それぞれの思いを叫んでいた。

 それに柚葉も乗っかり、「ロッカス頑張れ!」と声援を送った。


「始め!」


 ゴングが鳴ると、両者は一斉に構え出した。

 だが、どちらも睨み合い、攻撃に出る様子はまだ見られない。

 その瞬間を待つかのように、観客も息を呑んで静かに見守る。

 地面を蹴り、相手の懐に入ったのはロッカス。ケイルはその体型から想像できない軽やかな身のこなしで後ろに退ける。

 そしてすぐさま地面を蹴ったケイルがロッカスに殴りかかると思いきや、思いっきり飛ぶとロッカスを越えてリングから飛びだした。


「おっとぉ! ケイル、まさかのルール違反で失格だああ!」

「……」


 リングを抜けたことはルール違反で、この時点でロッカスの優勝は決まった。

 納得のいかないロッカスは、キッとケイルを睨みつけ、観客はブーイングを起こした。

 だが、ケイルの行動はここで終わらなかった。


 次の瞬間、ケイルは観客席に入り、人を踏み台にして飛びながら上に向かっていく。

 皆が慌てふためき、移動を開始するも、すぐに動けるはずもなく、ケイルに踏まれる人が続出する。

 二百キロはありそうな体が速度を増して落下し、踏み台にされた人は倒れ、皆が骨折だけでなく、酷い者は頭を踏みつぶされ、死んだ人もいた。何が起こっているのかわからない反対側の観客席でも、スタジアムに響く悲鳴を聞いてか、席を立ちあがる人が増えつつある。

 ケイルが登って行く方向には、柚葉がいた。

 そんなケイルと目が合った柚葉は、彼がにやりと笑んだことに悪寒がした。


「柚葉っ!」


 危険を感じたレイは座ったままの柚葉の前に立つ。

 ルシトとライヤも立ちあがるが、このままではケイルの下敷きになってしまう。


「柚葉、離れてください!」


 ルシトが動けないでいる柚葉を抱え、移動しようとするも、混乱した人々が邪魔して場外に行けない。

 二人を守る様にして前後に立つライヤとレイであるが、ケイルは確実に柚葉たちを狙っているかのような動きを取り、方向転換を図った。


「何であやつはこっちに来るんじゃ!」

「知るか!」

「死ねえええ!!!」


 ケイルは高く飛びあがると、着地地点にいる柚葉共々に向かって落ちていく。

 人が蜘蛛の子を散らすようにして逃げるとき、流れに逆らえず、ライヤとレイが二人から離れていく。


「俺が止めます! 柚葉は逃げてください!」


 ルシトは柚葉を遠くに投げ、それを運よく戻ってきたライヤがキャッチする。


「ルシト!」

「柚葉をお願いします!」

「だめ、ルシト!!」


 ライヤは頷くと、「下ろして!」と胸を叩く柚葉を抱えながら場外へと逃げて行った。

 同時に、ケイルはルシトに飛び降りた。


「させるかよっ!!」


 そのとき、ルシトを踏み潰すはずだったケイルの姿が消えた。

 呻き声がする方に目を向けると、すぐ隣でケイルが倒れていた。


「ロッカス!」


 ライヤの胸で暴れ、強引に降りた柚葉が戻り、ルシトに駆け寄りながらも、視界に入った人物を見て名を呼んだ。

 膝をついていたルシトはすぐに立ち上がり、安堵のため息をついた。

 レイとライヤも走って来る。


「ありがとうございます」

「礼は後だ! 早く逃げろ!」


 顔を歪めながら、脇腹を押さえつつ立ち上がるケイル。

 何を考えているのかわからないが、自分が辿って来た道を見下ろし、そこで犠牲になった人々を視界に入れると、次は柚葉に視線を移した。


「本当、可哀そうな犠牲者だなあ!」

「何じゃ、こいつ」


 あまりにも怖い形相と目が合い、柚葉は肩をビクつかせる。

 ケイルから隠すように柚葉の前にライヤが立ち、ルシト同様に睨みつける。


「俺としちゃあ、お前とはこの続きがやりたいがな。まあ、できないことを祈るとするか」

「今すぐ此処で決着をつけてやる!」


 ロッカスが一歩前に出て、構えに入る。

 だがそれを見ようともせず、ケイルは後ろを向くと、颯爽とその場を飛ぶようにして去って行った。

 追うことはせず、ロッカスは構えを解く。


「あいつを知っているのか」


 ロッカスが柚葉に聞くが、もちろん初対面であるため、首を横に振る。


「そうか」

「お前も知らないのか」

「強いとは聞いていたが、それだけだ。俺も初めて会った」


 するとロッカスは、すぐに階段を降りて行った。

 骨折した人を助けるために手を貸し、何とか立たせようとする。それを見た柚葉たちも加勢し、まだ息がある人を助ける手伝いをする。

 間もなく、白衣を着た人々が来て、持ってきた担架に怪我人を乗せていく。

 人々がいなくなったスタジアムに残っていたのは、司会者とロッカス、柚葉たちであった。


「優勝はロッカス選手! ……ですが、此処が危険だと判断されたため、授賞式は城にて行われます」

「あぁ、わかった」


 一行はスタジアムから城に移動を開始した。
















 スタジアムの後処理などに追われ、兵士は二人と王しかおらず、その王も書類に目を通してはハンコを押す作業を行っていた。

 だが、授賞式を行うために一時中断し、隣にいた兵士からトロフィーを受け取ると、目の前にいるロッカスに授けた。


「形はどのようであれ、二連覇おめでとう、ロッカス」

「ありがとうございます、王様」


 すでに賞金は家に送り、別荘が用意されただけでなく、電気代やらガス代は四年間無料で使い放題であり、税金も納めなくていいらしい。


「それで、そなたたちはアゼ―レ超大国から参った使者と聞いたが……」


 王座から立ちあがり、ロッカスにトロフィーを渡し終えた王は、ロッカスの後ろに立つルシト達に声をかけた。

 そこで、ルシトがいつも通り説明すると、やはり反応は同じだった。


「そのようなことになっておるとは知らなかったが、事実なのか」

「なぜ他国にも伝わってないんだ」


 王だけでなく、ロッカスも驚いていた。


「それは私たちも知らないんだ」

「まあ、いい。今回のケイルとやらが、襲ってきたのも関係があるのか」

「関係性の有無ははっきり言えんが、奴とは初対面じゃ」


 ライヤがありのままを話すと、王は眉を顰めた。


「……今日は此処に泊るがよい。アゼ―レ超大国と連絡を取ろう」


 今度こそ連絡が取れると信じ、ルシトは感謝を述べる。

 だが、レイは首を横に振った。


「心遣いは有り難いですが、既に宿を取ってありますので」

「そうか、それは残念だ」


 レイの話にライヤと柚葉も頷いた。

 もしロセリア王国のときと同じようなことになったらと考えると、確かに安心して寝られない。


「連絡がついたら、すぐにそなたらに伝えよう。あとロッカス、あの話だが」

「前向きに考えさせて下さい」

「そうか、承知した」


 ロッカスが頭を下げると、王は笑みを浮かべ大きく頷いた。

 何の話かわからないが、柚葉たちとロッカスは、王の間を後にする。


「約束は果たした。じゃあな」

「待って!」


 前を歩いていた柚葉を抜かし、スッと手を上げて軽く振った。

 柚葉が後を追おうとするも、それはルシトによって止められる。


「ルシト、でも」

「今日は彼も疲れたでしょう。宿に戻って、今後どうするか決めませんか」

「そうだな」


 気付けば、深夜を迎えていた。

 伸ばした手を下ろし、柚葉は「そうだね」と言うと、城を出て宿に向かった。

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