ヒロインたちの襲来 1
元日を迎える。
今日は13時から俺の家にみんなが集まることになっており、桜と母さんが準備に取り掛かる。
ちなみに俺は涼宮さんたちが来たら部屋にこもる予定なので、準備している2人をくつろぎながら眺めている。
「涼宮さんって来れるのか?今日の朝1時くらいに生放送で歌ってたけど」
「来ると思うよ。ここで来なかったら私たち4人に先を越されちゃうからね」
「へー、涼宮さんも大変だなぁ」
「他人事だと思って」
桜にジト目で見られる。
「な、なんだよ?」
「ううん。新年を迎えたから、もしかしたら鈍感お兄ちゃんが敏感お兄ちゃんに進化してるかもって思ったけど、そんなことなかったね」
若干、呆れながら言われる。
(なんだよ敏感お兄ちゃんって)
そう思い問いかけようとすると、“ピンポーン”と玄関のチャイムが鳴る。
「あ、来たみたいだね!お兄ちゃん迎えに行ってー!」
「分かった。皆んなに新年の挨拶はしたいからな」
問いかけるのをやめた俺は4人を迎えに行く。
「あ!シロくん!あけましておめでとー!」
「シロ様!あけましておめでとうございます!」
「真白くん、あけましておめでとう」
「シロ、あけおめ」
「あぁ。あけましておめでとう。そして今年もよろしくな」
俺は4人に新年の挨拶をする。
そして用事がなくなったため、2階にある自分の部屋に向かう。
「じゃ、俺は部屋に戻ってゴロゴロするから――」
「あ!シロくん、部屋に戻ろうとしてるね!」
「それは許さない」
「そうですよ!正月なんですから皆んなで遊びましょうよ!」
「真白くんもアタシらと遊ぶぞ」
俺も混ざってほしいようで、皆んなに止められる。
そのタイミングで母さんが玄関に現れた。
「あけましておめでとう。今年も真白くんをよろしくね」
母さんの挨拶に皆んなが挨拶を返す。
そして挨拶が終わった頃を見計らい、俺は部屋に戻るため動き出す。
「じゃあ俺は部屋に戻るから。あとはよろしく、母さん」
「えぇ。私は真白くんの寝正月を邪魔するつもりはないから戻っていいわよ。私はね」
「私はね?私はねってことは――」
「シロ、どこに行こうとしてるの?はやくリビングに入って」
「ささっ!シロ様!はやくリビングに行きましょう!」
俺の行動を穂乃果とミレーユさんに止められる。
(やはり穂乃果たちが邪魔をしてきたか)
しかし事前に作戦を用意していたため、全く問題はない。
「悪いな、お前ら。俺は部屋で寝正月を確保するために色々と作戦を考えてきたんだ」
そこで一拍置き、高らかに告げる。
「強行突破だ!」
俺は自分の部屋に向けて走り出す。
「あっ!」
「しまった」
俺の行動を止めていた穂乃果とミレーユさんを振り切り、部屋へ向けて走り出す。
(部屋に入ってしまえば鍵をかけれる!勝った!俺は寝正月を勝ち取ったぞ!)
俺はルンルンで部屋に入り、鍵をかける。
「ふぅ、これで俺の寝正月は守れたな。結局、強行突破しか良い作戦を思いつかなかったが」
そんなことを呟きつつベッドにダイブする。
「シロ、入るよ」
するとドアの向こうから、そんな声が聞こえてきた。
(ん?入るよ?鍵かかってるから入れないだろ)
そんなことを思っていると“ガチャ”と部屋の鍵が開く。
そして…
「久々のシロの部屋」
「おー!綺麗にしてるね!お兄ちゃん!」
「わー!ここがシロ様のお部屋なんですね!」
「わ、私、初めて男の子の部屋に入ったよ」
「ア、アタシもなんだ」
5人が部屋に入ってくる。
「な、なんで!どうやって鍵を開けたの!?」
俺は急いでベッドから起き上がり、穂乃果を問い詰める。
「ん、さっきシロのお母さんから借りた」
「めっちゃ邪魔してくるやん!さっきの邪魔しない発言は何だったんだよ!」
「あら、私は邪魔なんてしてないわよ」
そう言って母さんがゆっくりと俺の部屋に入ってくる。
「私は、たまたま持っていた真白くんの部屋の合鍵を、手が滑って穂乃果ちゃんの前に落としただけだもの」
「待って。なんで今日、合鍵を持ってたの?必要なくね?」
「備えあれば憂なしっていい言葉よね。昔の人はいい言葉を残したわ」
「このタイミングでその言葉の素晴らしさを実感したくなかった!」
本気でそう思う。
「というわけで先人の言う通り備えていたら手が滑って穂乃果ちゃんの前に鍵を落としてしまったの。そしたら穂乃果ちゃんが「ちょっと借ります」と言って鍵を取ってしまったから、合鍵を使われる前に急いで取り返そうと、牛が歩くスピードでここに来たわ」
「取り返す気ゼロかよ!使われる前に取り返したいなら、せめて走れよ!」
「あら、これでも頑張った方よ。牛が歩くスピードを模倣するのに」
「そんなところ頑張らんでええわ!」
直接ではなく間接的に邪魔してきました。
(はぁ、今年の元日は寝正月なんてできないんだなぁ)
俺は抵抗するのを諦め、穂乃果たちとの遊びに付き合うことにした。
「やっぱりシロくんってお母さんに逆らえないんだね」
「うん。いつもあんな感じでお母さんの手のひらで踊らされてるよ」
「てか真白くんのお母さん。ポケットに合鍵を入れてたってことは、真白くんが部屋に逃げ込むこと予見してたんだな」
「さすがシロ様のお母様です!」
「ん、最強の味方」
(いや好きで踊らされてるわけじゃないから)
俺たちのやり取りを見ていた5人が、そんな会話をしていた。




