クリスマスデートを終えて
「おかえり、真白くん。皆んなとのデートはどうだったかしら?」
玄関で出迎えた母さんが聞いてくる。
「そうだな。どれも面白かったよ」
「そう。それなら良かったわ。じゃあ今からいくつか質問するから正直に答えてね」
「ん?わかった」
何故、今から質問責めが起こるのかは分からないが、母さんに付き合う。
「1つ目よ。今日のデートで誰かから襲われたりしてないわね?」
「そんなことなかったよ!」
1つ目からおかしな質問をされる。
「そう。ホントのようね。じゃあ3時間という時間制限はしっかりと守れたかしら?」
「あぁ。そこは問題ない。俺が待たせるわけにはいかないから、3時間経たないくらいで次の集合場所に向かった。まぁ集合場所に着いた時にはすでに皆んないたけど」
「なるほど。なら最後の質問よ。真白くんが女の子とデートしてる時に誰かが邪魔してきたとかはないかしら?」
「そうだな。それもなかったな」
リンスレットさんは怪しいところだがミレーユさんのことを想っての行動だったので黙っておく。
「なるほどね。なら皆んな合格よ。ご褒美をあげないとね」
「ん?」
(誰が、何に合格したんだ?)
そう思い不思議に思った俺は問いかけようとするが、詳しく聞く前に母さんが口を開く。
「そうだ、真白くん。1/1は空いてるかしら?仕事はないと神野さんから聞いてるから空いてると嬉しいのだけど」
「その日は仕事もないし1日中家にはいるが、空いてはない」
「なるほど、暇なのね」
「違うわ!忙しいの!」
「どうせ寝正月でしょ?」
「うっ!」
(さすが母さん。俺のやりたいことを熟知している。だが、クリスマスは一日外出したんだ。元日くらい家でゴロゴロしてもいいだろ)
とは思うが、そう母さんに伝えても無駄なのは学習済み。
そのため、寝正月を勝ち取るために動き出す。
「そ、そんなことないぞ?」
「あら、じゃあ何をするのかしら?」
「そ、それは――掃除とか?」
「年末に大掃除をするから掃除の必要はないわよ。それに新年早々、掃除をすることは縁起が悪いらしいわ」
「マジで!?」
「えぇ」
(し、知らなかった。いや新年早々、掃除をする気なんてなかったけど)
「ということで暇になったわね」
(くっ!やはり嘘を言っても無駄か!だったらここは誠心誠意お願いして、寝正月を勝ち取るしかない!)
「ホントは寝正月をしたかったんです。だから家でゴロゴロさせてください」
「あら。そうだったのね。なら最初からそう言えばよかったのに」
「えっ!そう言えば俺に寝正月をさせてくれたの!?」
「そんなわけないでしょ」
「デスヨネー」
わかってました。
「でも私も鬼ではないわ。だから真白くんを家から連れ出すようなことはしないわよ」
「な、なんだと!?」
(じゃあ俺は寝正月をすることができるじゃないか!本当に今日の母さんは鬼ではないぞ!)
「とりあえず手洗いが終わったらリビングに来て。私は皆んなに合格のお知らせとご褒美の話をするから」
そう言って母さんはスマホで何かを始める。
その間、俺は母さんに言われた通り、手を洗ってからリビングに向かう。
すると母さんがリビングにあるソファーに座っていたため、俺も母さんの隣に座る。
「さっきの話の続きなんだけど、皆んな合格のお知らせに喜んでいたわ」
「うん、それはよかった。何に合格したのか全く分からないけど」
「そこで皆んなにご褒美をあげようと思うの。どうかしら?」
「それは良いことだと思うぞ。合格したのであればご褒美は大事だからな」
「そうよね。じゃあ元日に今日デートした5人――いえ桜はウチの子だから4人を我が家に招待することにしたわ。そのつもりでよろしくね」
「………はい?」
(この家に招待?なんで?)
「困惑してるわね。でも安心して。さっきも言ったように真白くんを家から連れ出すつもりはないわ。それに寝正月を邪魔するつもりもない。私はね」
「私はね!?ってことは穂乃果たちが邪魔するってことに――」
「そういうことだから元日に予定を入れないでね」
「嫌だ!俺は寝正月を――ってどっか行きやがったし!」
言いたいことだけ言って母さんがリビングを出て行く。
「………」
(部屋に引きこもれる方法を考えるか)
そんなことを思った。
あれから数日が過ぎ、今年最後のドラマ撮影に臨む。
今日の撮影には桜が同行しており、俺やヒナちゃんの演技を見学していた。
「よし!今日はここまで!」
監督の一声で撮影が終わる。
そして監督がみんなを集める。
「来月からこのドラマが放送される。人気を勝ち取るかはみんなの宣伝にかかっている。だからドラマ放送日やテレビ番組での収録の際は、このドラマの宣伝をお願いしたい」
俺たちキャストが頷く。
「よし!じゃあ来年もよろしくな!良いお年を!」
監督に挨拶をした俺は控え室に戻る。
そして着替えて神野さんと桜の3人で車に向かっていると…
「ま、真白くん。ちょっといいか?」
ミクさんが声をかけてきた。
後ろにはヒナちゃんとお母さんもいる。
「どうしたんだ?」
俺が聞き返すとモジモジし始めて中々言葉を発しない。
そんなミクさんに首を傾げつつ待っていると、意を決した表情で口を開く。
「そ、その……つ、付き合ってほしい!私には真白くんが必要なんだ!」
「…………え?」
周囲の空気が凍った。




