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演技指導 2

 リンスレットの後に続き、ミレーユさんの部屋を目指す。

 しばらく歩くとリンスレットが1つの部屋の前で立ち止まる。


「こちらの部屋になります。ちなみに防音対策はバッチリですので、大きな声を出しての演技練習も奥様にはバレません。つまりエッチなことをしても大丈夫ということです」

「そんなことしないから!」


 防音対策の情報は必要だが最後の一言は不要すぎる。

 そう思ってのツッコミだったが、リンスレットは俺のツッコミを無視して何かを取り出す。


「あ、忘れなうちにコチラをお渡ししておきます」

「ん?なんだ?」


 俺はリンスレットから小さな正方形の物を数個渡される。


「コチラはしっかりと使用してください。でないとお嬢様が芸能活動できなくなりますので。ちなみに薄さは0.01mmのゴムとなります」

「いらんわ!」

「も、もしかしてそれを使わない予定ですか!?そ、それはメイドとして止めなければならない案件になるのですが」

「違うわ!俺は今日、ミレーユさんに演技するにあたってのコツを教えてもらいに来たんだよ!」

「はて?そのような予定、私は聞いておりませんが」

「さっきガッツリ俺が来た目的を口にしてただろうが!」


 ツッコミどころしかないやり取りに疲れてしまう。

 そのタイミングで「お待たせしました!」とミレーユさんが駆け寄って来た。


「ではお嬢様とのお部屋デートを楽しんでください。あ、手に持ってるゴムはポケットにしまった方がいいですよ」

「確かにそうだな。見つかる前にポケットへ……っていらんわ!」

「ではお嬢様。私は奥様が来られないよう見張っておりますので、頑張ってください」

「うん!ありがと、リンスレット!では行きましょう!シロ様っ!」

「いや待って!俺のポケットには必要のない物が――」


 そう言いながらリンスレットを見ると、可愛い顔してサムズアップしていた。


(確信犯かよぉぉっ!)


 こうして俺は爆弾とも言える物をポケットに忍ばせることとなった。




 ミレーユさんと一緒に部屋へ入る。


「さっそくお部屋デートを始めましょう!」

「あれ!?俺、そんなこと言ったっけ!?」

「はい!私に演技を教えてほしいということは、演技指導が終わった後はデートできるということです!」

「いや、そんなつもりで言ったわけでは――」

「時間がもったいないので、さっそくシロ様に演技のコツを教えたいと思います!」

「お、おう。よろしくお願いします」


 どこからデートという単語が出たのかは分からないがコツは教えてくれるようなので、深くは考えずにミレーユさんの言葉に耳を傾ける。


「演技をする上で大事なことは『声』、『表情』そして『表現』だと私は思ってます」

「なるほど。確かにその通りだな」


 俺はミレーユさんの言葉に納得する。


「相手が聞き取りやすい声でないと意味がないし、喜怒哀楽の表情は必須。そして最後の表現に至っては、自分の伝えたいことが見ている人に伝わらないと俳優として失格と言ってもいい」

「その通りです。なので私はきちんとした発声を得るため、腹式呼吸の練習や鏡を見て喜怒哀楽の練習、そして最後の表現に関しては、お母様やリンスレットに私の演技を見てもらい、私の意図したことが伝わっているかを確認してます」


(やっぱり女優として活躍するには才能だけじゃダメなんだな)


「これが演技のコツです。どうでしょうか?」

「さすがミレーユさん!俺、ミレーユさんに相談してよかったよ!」

「ホントですか!期待に応えることができて、とても嬉しいです!」


 俺の言葉にミレーユさんが笑顔を見せる。


(ホント、ミレーユさんは優しい女の子だなぁ)


 その笑顔を見て、そんなことを思った。




 その後、腹式呼吸の方法を教えてもらい、俺の喜怒哀楽の表情をチェックしてもらう。

 そして俺の演技をミレーユさんに見てもらい、俺の意図したことが伝わるかチェックをしてもらう。


 一通りの特訓を終え…


「はい!最初に比べればとても良くなったと思います!というより、シロ様はとても筋がいいですよ!初めてで今の演技ができる方は中々いらっしゃいませんので!」


 ミレーユさんはそう言っているが最初の方はダメ出しばかりだったので、今の言葉は俺が落ち込まないためのお世辞だろう。


「あとは監督の指導等で修正していけば、とても良い演技ができると思います!あ、私が教えた腹式呼吸や鏡の前で表情の練習、誰かに演技を見てもらうことは続けてください!」

「ありがとう、ミレーユさん」

「いえいえ!お役に立てて嬉しいです!」


 そう言ってミレーユさんが笑みを見せる。


(今回の件でミレーユさんには返しきれない恩ができたな。どこかのタイミングで返せるといいけど)


 そんなことを思っていると、ミレーユさんが口を開く。


「ではシロ様!ウチの演技指導は終わりました!なので早速、お部屋デートスタートです!」

「………え?」


 ミレーユさんの言葉に耳を疑う。


「まずは何をしましょうか?ゲームもいいですが私としてはシロ様とお話がしたいです!」

「え、えーっと……」

「ダメ……ですか?」


 ミレーユさんが目を潤ませながら、上目遣いで聞いてくる。


「っ!ま、まぁそれくらいなら」

「ありがとうございます!シロ様!」


 俺が了承すると、パーっと笑みを見せる。


(ホント、笑顔がかわいい女の子だなぁ)


 ミレーユさんの笑顔を見て、自然と俺も笑みをこぼす。

 そのタイミングでポケットに入れていたスマホが鳴る。


「ごめん、少しだけ電話に出てもいいか?」

「はい!」


 俺はミレーユさんから了承を得たため、ポケットからスマホを取り出す。

 その時、ポケットに入っていた物が何個か地面に落ちた。


「あ、シロ様。何か落ち――」


 俺が落とした物を拾おうとしたミレーユさんが固まる。

 そして俺も落とした物を見て固まる。


「「………」」


(それ、リンスレットから渡された避妊具ぅぅ!!)


 未だに鳴り続ける着信音を聴きつつ、渡してきたリンスレットを呪った。

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