避妊具事件 1
俺とミレーユさんは地面に落ちた避妊具を見て固まる。
(なんでポロッと落ちるの!?運命は俺に試練を与えたいのか!?)
そんな感じで、心の中で運命を呪う言葉をひたすら嘆き続ける。
そして5分後。
(ふぅ。まぁ落ち着け。クールになれ、日向真白)
パニックになっている時、唐突にやって来る『クールタイム』を迎える。
(俺が避妊具を落としてから5分くらい経っているが、ミレーユさんは動く気配がない。何かアクションを起こされる前に、とりあえず状況を整理しようか)
そう思って状況を整理する。
(えーっと、演技指導という理由で女の子の家に上がり込んだ男が、演技指導に全く必要のない避妊具を持って来てたという状況か。ふむふむ……え、ヤバくね?この状況)
状況を整理したことで現在の状況がいかにマズイ状況かを理解する。
(おい!訴えられてもおかしくない案件だぞ!と、とりあえず弁明しないと!)
そう思うが一瞬遅く、ミレーユさんが口を開く。
「あ、あのぉシロ様?こ、これは確かエッチの時に使うもの……ですよね?」
恥ずかしいのか、顔を赤くしながら聞いてくる。
(くっ!弁明する前にミレーユさんから聞かれてしまった!とりあえず誤魔化さないといけないが……誤魔化す方法が全く思いつかねぇ!)
「え、えーっと。こ、これはなんだろうね」
よって俺は、とぼける作戦に出る。
しかしミレーユさんは落とした物が何なのか確信しているようで、爆弾発言をする。
「も、もしかしてシロ様は私と……エ、エッチなことがしたいのですか?」
「っ!」
ミレーユさんの言葉に“ドキッ”と心臓が跳ねる。
「ち、違うぞ!?いや確かに、ここに持って来ている時点でそう思われても仕方ないけど、俺はミレーユさんを襲う予定はない!」
「じゃ、じゃあなんで持って来てるのですか?」
(ですよね。その返答は予期してました。マジでどうしよ)
そう思い様々な返答パターンを考えていると、一つの名案を思いつく。
(ミレーユさんには申し訳ないけど、この作戦で押し通す!)
俺はそう決意してミレーユさんに話しかける。
「ねぇ、ミレーユさん」
「は、はい!な、なんでしょうか!?」
「確かにミレーユさんの言う通り、これはエッチの時に使うものだよ。でも正方形の袋を見ただけでよくわかったね。もしかしてミレーユさんって……エッチなことが大好きな女の子なのかな?」
「っ!」
俺の言葉を聞いて、今まで以上に顔が真っ赤になる。
「そ、そんなことないです!」
(うん。そうだと思うよ。というより、俺って最低だなぁ)
俺が今から行う作戦は論点ずらし。
『なぜ俺が演技指導に必要のない避妊具を持っているのか』という話から、『なぜミレーユさんが袋を見ただけで避妊具だと分かったか』という話に論点を変えようとしている。
最低な行為をしている自覚はあるが今更引けないので、このまま作戦通りミレーユさんへ意地悪な質問を続ける。
「ふーん、そうなんだ。じゃあ何故これがエッチなことに使うものってわかったの?」
「え、えーっと。いざって時のために勉強した方がいいと、昨日リンスレットから教えてもらって」
(アイツ、絶対こんな展開になること予想してただろ!)
昨日ミレーユさんに教えた点からリンスレットの用意周到さに脱帽したくなる。
「そ、それとシロ様から絶対襲われるから準備はしておいた方がいいと使い方も教えてもらって」
「何で襲うって断定されてんの!?」
「えっ、だってシロ様がその……それを持ってくるからって」
チラッとミレーユさんが地面に落ちている避妊具に目を向ける。
(はい、後でリンスレットを絞めることが確定しました)
ミレーユさんに要らないことを吹き込んだおかげで話がややこしくなったため、後で問い詰めてやろうと心に決める。
「で、ですがシロ様がお望みならウチはいつでも大丈夫です!」
「大丈夫って何が!?」
「も、もちろん襲われる準備です!」
「しないから!一旦、俺が落とした物については忘れてくれ!」
「だ、ダメです!リンスレットから『準備して来たシロ様をガッカリさせないように』って言われてますから!」
「リンスレットぉぉっ!今すぐここに来いやぁぁっ!」
部屋の外で盗み聞きしてるであろうリンスレットを呼ぶ。
「はぁ、何でしょうか?」
案の定、聞き耳を立てていたようで、リンスレットが部屋に入る。
「リ、リンスレットっ!ウチはどうすればいいの!?」
「そうですね。とりあえず服を脱げは大丈夫です」
「わ、分かった!」
「なんでそうなる!?」
リンスレットが来ても状況が落ち着かないどころか逆に悪化している。
「リンスレットよ。とりあえずミレーユさんに服を脱がないよう説得してくれ」
「……本当によろしいのですか?」
「あぁ。俺を揶揄う分にはいいが、ミレーユさんを巻き込むのは辞めてほしい。もしミレーユさんが服を脱いだ姿を俺が見たら、ミレーユさんは心に大きな傷を負ってしまうからな」
「………」
俺の言葉を聞き、何故かリンスレットが固まる。
そして口角を上げる。
「なるほど。シロ様がどんな方か少し分かった気がします」
そう言ってミレーユさんに近づく。
「お嬢様。今、何をしようとしているか、よく考えてください」
「何って、シロ様をガッカリさせないために服を脱いで……」
そこまで言ってミレーユさんが固まる。
そして…
「―――――!!」
声にならない声を叫びながら、目をぐるぐると回してリンスレットの方に倒れ込む。
「あ、ありがとう。リンスレット」
「いえ、これくらいお安い御用です」
そう言いながらミレーユさんを横にする。
(ふぅ。リンスレットのおかげでなんとかなったな。いや全ての元凶はリンスレットだから感謝の言葉を告げる必要はないかもしれないが)
そう思いリンスレットに文句を言おうとするが、先にリンスレットが口を開く。
「シロ様。なぜ私からゴムを渡されたって言わなかったのですか?」
「ん?あぁ、そのことか。俺も一瞬考えたんだが、俺が真実を伝えたら二人の関係が悪くなると思ってな。言わなかったんだ」
俺は思っていたことを素直に話す。
「ふふっ。そんなことで私とお嬢様の関係が悪くなることはありませんよ」
するとリンスレットが今日1番の笑みを浮かべる。
「そうか。まぁ無事、誤魔化せたから良しとしよう。ミレーユさんには申し訳ないことをしたが。多分、俺のこと嫌いになっただろうなぁ」
「それに関しては大丈夫です。今回の件は私の責任でもありますので関係が悪くなることはしません。なので、これからもお嬢様と仲良くしていただけると嬉しいです」
「あぁ。もちろんだ」
俺はリンスレットに力強く応えた。
その後…
「なぁ。もし俺とミレーユさんがエッチなことを始めたら、どうするつもりだったんだ?」
「その場合はドアの隙間からこっそりと録画する予定でした」
「…………」
「ちなみに2人の間に面白いイベントが起きそうにない場合は、何らかの理由で部屋に入り、シロ様のポケットから避妊具が落ちたかのように、私が避妊具を落とす予定でした」
「…………」
(この人とは出来るだけ関わらない方がいいかもしれない)
そんなことを思った。




