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アルブス  作者: シバザキアツシ
復活編

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33/36

光の覚醒

黒い7(アビスナイトメア)を退けたアル一行の旅は続く。


ヌークの北西、カイティアクの町へ辿り着いたアル一行。

濃厚な潮の臭いが吹き抜ける。

「あっしは、獣車で待ってやす」

小男のユタは獣車場へ残った。


町で聞いた所、現在、ノームダイトへ出ている船はないという。

ノームダイトは島。

そこへ向かうならば、船は必須であった。

「マジかよ…どうやって海渡るんだよ?」

「走りますか?」

無表情で提案するアル。

「「「無理!!!」」」

全会一致。

「冗談に決まってるじゃないですか、ははは」


借りられる船もない、この町で何が起こっているのか分からない。

「まずは情報収集ですね」

「そうだな」

一先ず町の中心部にある、傭兵・冒険者合同ギルドへ向かう。

合同のギルドは珍しかった、そもそも傭兵と冒険者は合性が悪いからだ。

「バチバチやってんのかね?」

茶化すラインハルト。

「そんな訳ないでしょ」

リイアに一蹴される軽口。

この町は、傭兵団”斧の鞘”が両方を取り持っているのでそれ程の諍いは起こらないらしい。

斧の鞘の団長、ロジャー=バイオットは、第三崩壊を戦い抜いた英雄である、発言力が段違いだ。

誰しもが耳を傾ける存在。

「なる程、英雄様には逆らえないか」

「言い方、良くないですよ…」

「悪かったな」

窘めるジルに、舌を出すラインハルト。


合同ギルドで話を聞いた所、魔獣の襲撃が続き、海へ出られないのだと言う。

その期間、約一カ月。

「なんか、前の町もそんな感じだったなぁ」

「この国に、何か起こってるんでしょうか?」

「うーん、今考えても答えは出ないでしょ?取り敢えず海の魔獣を、退治しましょう」

段々と考え方が、傭兵のそれになってきたリイア。

「そうだな」

とは言ったものの、海の光景を見て、考えを改めた。

「多すぎる…」

ざっと見た所、1000体はいるようだ。

魚人の魔獣、マーマン一色。

「自分とアルでここは持ちこたえますから、ラインハルトとお嬢はこの町の傭兵に助けを求めに行って下さい」

ジルの提案を、即座に受け入れるリイアとラインハルト。

「了解」

「わかったわ」



「え?今なんて?」

黒眼本部へ行き、協力要請した瞬間に返された言葉を瞬時には理解出来ないリイア。

「だから、協力は出来ないと言った」

受付の男性はそれを繰り返した。

「なんでよ?」

「…怖いからだ!」

清々しい程の弱腰、何故、傭兵団など名乗っているのか甚だ疑問である。

「…もう良いわ、邪魔だけはしないでよ!」

そう吐き捨てるとリイアは乱暴にドアを閉めて出て行った。

「…まあ、そう思うわな」

自虐の笑みを浮かべる受付の男性だった。



ラインハルトは、斧の鞘を頼る為、町の南部へと走った。

「まぁ、良いじゃろ」と、斧の鞘、団長のロジャー=バイオット。

「討ち漏らしを叩くくらい、どうってことないわな!」と斧の鞘、副長のトロイ=マクワ。

トロイは、ジルとヌークの町の祭で戦った仲である。

黒眼と違い快く協力してくれる、ドワーフの二人。



アルとジルが戦う砂浜へ、ラインハルトとドワーフ二人が駆け付けた。

「ほう、あの武器は?」

アルの武器を見て目を細めるロジャー。

流星牙(メテオファング)って言うんだよ」

ラインハルトがロジャーにそう教える。

「知らん武器だな」

「うむ、面白い!」

ドワーフ二人は目を輝かせる。

ドワーフは職人、職人は未知の武器に胸を躍らせる生き物だ。


「だいぶ逃げた、そっちはお願いします!」

ジルが盾になり、アルが攻撃する。

その破壊力は凄まじいが、やはり二人では限度がある。

討ち漏らしが次々と町の方に進軍していく。

「俺らの出番だな」

ラインハルトはダガーを構える。

「よっし!わしも久々に暴れるかの!」

二人共、武器は大槌。

ぶん回すだけで脅威、凶器となる。

暴れ回るロジャーとトロイ。

それの更に討ち漏らしたマーマンを、ラインハルトが狩る。

とても良い連携が取れていた。

「これで、最後じゃ!!」

トロイの打ち下ろした大槌がマーマンを押しつぶした。


その時、港の反対側から、爆発音が鳴った。

町の東の方向だった。

「なんだ!?」

「今度はなんなんだよ!」

「向こうに行きましょう!あっちにはリイアが向かった黒眼の本部がある」

焦るジル。

「分かった!急ごう!」

ラインハルトとジルは走り出した。


「その武器、ちょいと貸してはくれんかの?」

「ふむ…別にいいですけど…」

何も考えずに即座に渡してしまうアル。

「おお!そうかそうか、それは有難い」

「変わりと言っちゃ何だが、暫くはそれを使ってくれ!」

代替の武器、オリハルコンのダガーを受け取る。

「随分と軽いですね?」

「オリハルコンで出来とるんじゃ」

「…たしか、伝説の金属、そんなものを貸してもいいんですか?」

本で見た知識を引っ張り出すアル。

「お前さんの武器も伝説級だから、等価交換じゃよ」

「まぁ、それなら…あ…」

大きな気配を感じ取ったアル。

「なんだ?」

「もう一匹いますね」

「…の、ようじゃの」

「僕は一人で大丈夫なんで、二人はさっきの爆発の方にいってもらえますか?」

「構わんよ」

「よし、ここは任せた!」

二人のドワーフはどたどたと走っていった。

「さて」


「こんな時に、冒険者ギルドは何してんのよ!?」

リイアと合流したラインハルト。

ジルはリイアの安全を確認した後、住人の避難誘導にあたっている。

「貴族様の護衛だとよ」

「また貴族!私貴族嫌い!!」

リイアも王族なので余り立場は変わらないのだが、今は言う時ではないと口を噤むラインハルト。



「思ったよりデカい…」

上陸したマーマンは、今までのより数倍デカい。

「まぁ、やる事は変わらないんですけどね…」

そう言うとアルは、一瞬でマーマンの懐へ入り込み、腹にオリハルコンダガーを差し込み、上へ斬り上げる。

断末魔を上げる、ボスマーマン。

勝負は一瞬でついた。

「僕も向こう行こう」

アルは弾丸のように飛び出した。


東の死の森からリッチキングが現れ、黒眼本部を破壊して町に侵入しようとしている。

「パッと見ヤバい奴だってわかるな」

「そうね」

爆発音は黒眼本部を破壊する音だった。

通常のリッチより背が高い、3mはある。

『目が、目…見えない…』

リッチキングはそう言い無差別に腕を振り回す。

『あ…あぁ…あ、見つけた』

リッチキングは骨の人差し指をリイアに向けた。

「え?」

「マズイ!」

咄嗟にリイアの前に飛び出すラインハルト。

『デス』

人差し指とリイアの間に滑り込んだラインハルトが、そのスキルをモロに喰らった。

「!!」

「嘘…」

リッチキングの即死攻撃から、リイアを守り死に至ったラインハルト。

地に伏したラインハルトはピクリともしない。

『あ、あ…違う…そっちじゃない…』

目は見えなくとも、気配で感じられるリッチキングは、自身のミスを悟る。

「ダメ!そんなの絶対ダメ!!」

熱い涙を流すリイアの身体が、金色の光に包まれる。

『条件を達成しました、強制ジョブチェンジします』

ユニーク職∶戦女神(アスタルテ)

銀色の光がリイアを包み込む。

衣装も銀色の軽鎧に変わっている。

「お願いサラマンダー」

リイアの胸元から、ポンと飛び出る火蜥蜴。

『アレの相手じゃそんなに長く保たないよ?』

「すぐ済むわ」

『りょーかい!』

サラマンダーはリッチキングへと飛んで行った。

『あ、あ?精霊…?』

『そ、僕は精霊さ、君は誰にやらされてるの?』

リイアはラインハルトの傍らへと歩を進める。

サラマンダーがリッチキングの足止めをしてくれている。

《リザレクションは生涯三回しか行使出来ません》

警告がリイアの脳内に響く。

「構わない!リザレクション!」

迷いはない当然だ、彼はこんな所で死んでいい人物じゃない。

七つの力とか、そんな事は関係ない、仲間を思う使命感がリイアを満たしていた。

途端にラインハルトが息を吹き返す。

「っ、くはぁ!!」

飛び起きるラインハルト。

「?今…何が…」

「ちょっとそこで待ってて」

「お前…リイアか?」

リイアの姿が、ラインハルトの意識が途絶える前と明らかに違っていた。


リイアの手にしていた月のメイスが、月の細剣へ変化する。

瞬間移動したように、リイアの姿がリッチキングの後ろへ現れた。

銀色の輝きがリッチキングを両断していた。

『あ…』

「なんだそりゃ、速すぎて見えなかった…」

ラインハルトが目を見張る。

速さだけなら、アルをも超えていたかもしれない。

リッチキングは頭から順に、塵へと姿を変えていった。


マーマンの襲撃により、港の船は全滅。

北西の広場に合流したアル一行。

「どーすんだよ?」

「ホントにね…」

考えが浮かばない一同。

ちなみにリイアの姿は、戦闘終了と共に元に戻っていた。

「こりゃ、陸路で持ってくるしかねぇな」

「え?」

「陸路でチムフトから持ってきるしかないわな」

「は?」

「チムフトからは、ノームダイトへ行けないんですか?」

地図的にはカイティアクからより、チムフトからの方が、ノームダイトに近い。

「あそこは今、港がダメになっていて、船は出せん」

「残るは要塞都市サンゲイルからだが、あそこはこの国の首都、余所者が船を借りられる訳がない」

「なる程、それでチムフトから船を持ってくると?」

「そう言う事じゃ」

「はぁ…選択肢がないのが辛すぎる…」

「手段が無いよりマシじゃねぇか?」

「そうですね、準備をしましょうか」

アルが手を上げ発言をする。

「その前に、一休みしませんか?」

一斉にアルの方を向く三人。

「そうね、すっかり忘れてたわ」

アルの提案に乗り、ユタを連れホテルへ向かう。

翌日出発する事に決めた。

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