光の覚醒
黒い7を退けたアル一行の旅は続く。
ヌークの北西、カイティアクの町へ辿り着いたアル一行。
濃厚な潮の臭いが吹き抜ける。
「あっしは、獣車で待ってやす」
小男のユタは獣車場へ残った。
町で聞いた所、現在、ノームダイトへ出ている船はないという。
ノームダイトは島。
そこへ向かうならば、船は必須であった。
「マジかよ…どうやって海渡るんだよ?」
「走りますか?」
無表情で提案するアル。
「「「無理!!!」」」
全会一致。
「冗談に決まってるじゃないですか、ははは」
借りられる船もない、この町で何が起こっているのか分からない。
「まずは情報収集ですね」
「そうだな」
一先ず町の中心部にある、傭兵・冒険者合同ギルドへ向かう。
合同のギルドは珍しかった、そもそも傭兵と冒険者は合性が悪いからだ。
「バチバチやってんのかね?」
茶化すラインハルト。
「そんな訳ないでしょ」
リイアに一蹴される軽口。
この町は、傭兵団”斧の鞘”が両方を取り持っているのでそれ程の諍いは起こらないらしい。
斧の鞘の団長、ロジャー=バイオットは、第三崩壊を戦い抜いた英雄である、発言力が段違いだ。
誰しもが耳を傾ける存在。
「なる程、英雄様には逆らえないか」
「言い方、良くないですよ…」
「悪かったな」
窘めるジルに、舌を出すラインハルト。
合同ギルドで話を聞いた所、魔獣の襲撃が続き、海へ出られないのだと言う。
その期間、約一カ月。
「なんか、前の町もそんな感じだったなぁ」
「この国に、何か起こってるんでしょうか?」
「うーん、今考えても答えは出ないでしょ?取り敢えず海の魔獣を、退治しましょう」
段々と考え方が、傭兵のそれになってきたリイア。
「そうだな」
とは言ったものの、海の光景を見て、考えを改めた。
「多すぎる…」
ざっと見た所、1000体はいるようだ。
魚人の魔獣、マーマン一色。
「自分とアルでここは持ちこたえますから、ラインハルトとお嬢はこの町の傭兵に助けを求めに行って下さい」
ジルの提案を、即座に受け入れるリイアとラインハルト。
「了解」
「わかったわ」
「え?今なんて?」
黒眼本部へ行き、協力要請した瞬間に返された言葉を瞬時には理解出来ないリイア。
「だから、協力は出来ないと言った」
受付の男性はそれを繰り返した。
「なんでよ?」
「…怖いからだ!」
清々しい程の弱腰、何故、傭兵団など名乗っているのか甚だ疑問である。
「…もう良いわ、邪魔だけはしないでよ!」
そう吐き捨てるとリイアは乱暴にドアを閉めて出て行った。
「…まあ、そう思うわな」
自虐の笑みを浮かべる受付の男性だった。
ラインハルトは、斧の鞘を頼る為、町の南部へと走った。
「まぁ、良いじゃろ」と、斧の鞘、団長のロジャー=バイオット。
「討ち漏らしを叩くくらい、どうってことないわな!」と斧の鞘、副長のトロイ=マクワ。
トロイは、ジルとヌークの町の祭で戦った仲である。
黒眼と違い快く協力してくれる、ドワーフの二人。
アルとジルが戦う砂浜へ、ラインハルトとドワーフ二人が駆け付けた。
「ほう、あの武器は?」
アルの武器を見て目を細めるロジャー。
「流星牙って言うんだよ」
ラインハルトがロジャーにそう教える。
「知らん武器だな」
「うむ、面白い!」
ドワーフ二人は目を輝かせる。
ドワーフは職人、職人は未知の武器に胸を躍らせる生き物だ。
「だいぶ逃げた、そっちはお願いします!」
ジルが盾になり、アルが攻撃する。
その破壊力は凄まじいが、やはり二人では限度がある。
討ち漏らしが次々と町の方に進軍していく。
「俺らの出番だな」
ラインハルトはダガーを構える。
「よっし!わしも久々に暴れるかの!」
二人共、武器は大槌。
ぶん回すだけで脅威、凶器となる。
暴れ回るロジャーとトロイ。
それの更に討ち漏らしたマーマンを、ラインハルトが狩る。
とても良い連携が取れていた。
「これで、最後じゃ!!」
トロイの打ち下ろした大槌がマーマンを押しつぶした。
その時、港の反対側から、爆発音が鳴った。
町の東の方向だった。
「なんだ!?」
「今度はなんなんだよ!」
「向こうに行きましょう!あっちにはリイアが向かった黒眼の本部がある」
焦るジル。
「分かった!急ごう!」
ラインハルトとジルは走り出した。
「その武器、ちょいと貸してはくれんかの?」
「ふむ…別にいいですけど…」
何も考えずに即座に渡してしまうアル。
「おお!そうかそうか、それは有難い」
「変わりと言っちゃ何だが、暫くはそれを使ってくれ!」
代替の武器、オリハルコンのダガーを受け取る。
「随分と軽いですね?」
「オリハルコンで出来とるんじゃ」
「…たしか、伝説の金属、そんなものを貸してもいいんですか?」
本で見た知識を引っ張り出すアル。
「お前さんの武器も伝説級だから、等価交換じゃよ」
「まぁ、それなら…あ…」
大きな気配を感じ取ったアル。
「なんだ?」
「もう一匹いますね」
「…の、ようじゃの」
「僕は一人で大丈夫なんで、二人はさっきの爆発の方にいってもらえますか?」
「構わんよ」
「よし、ここは任せた!」
二人のドワーフはどたどたと走っていった。
「さて」
「こんな時に、冒険者ギルドは何してんのよ!?」
リイアと合流したラインハルト。
ジルはリイアの安全を確認した後、住人の避難誘導にあたっている。
「貴族様の護衛だとよ」
「また貴族!私貴族嫌い!!」
リイアも王族なので余り立場は変わらないのだが、今は言う時ではないと口を噤むラインハルト。
「思ったよりデカい…」
上陸したマーマンは、今までのより数倍デカい。
「まぁ、やる事は変わらないんですけどね…」
そう言うとアルは、一瞬でマーマンの懐へ入り込み、腹にオリハルコンダガーを差し込み、上へ斬り上げる。
断末魔を上げる、ボスマーマン。
勝負は一瞬でついた。
「僕も向こう行こう」
アルは弾丸のように飛び出した。
東の死の森からリッチキングが現れ、黒眼本部を破壊して町に侵入しようとしている。
「パッと見ヤバい奴だってわかるな」
「そうね」
爆発音は黒眼本部を破壊する音だった。
通常のリッチより背が高い、3mはある。
『目が、目…見えない…』
リッチキングはそう言い無差別に腕を振り回す。
『あ…あぁ…あ、見つけた』
リッチキングは骨の人差し指をリイアに向けた。
「え?」
「マズイ!」
咄嗟にリイアの前に飛び出すラインハルト。
『デス』
人差し指とリイアの間に滑り込んだラインハルトが、そのスキルをモロに喰らった。
「!!」
「嘘…」
リッチキングの即死攻撃から、リイアを守り死に至ったラインハルト。
地に伏したラインハルトはピクリともしない。
『あ、あ…違う…そっちじゃない…』
目は見えなくとも、気配で感じられるリッチキングは、自身のミスを悟る。
「ダメ!そんなの絶対ダメ!!」
熱い涙を流すリイアの身体が、金色の光に包まれる。
『条件を達成しました、強制ジョブチェンジします』
ユニーク職∶戦女神。
銀色の光がリイアを包み込む。
衣装も銀色の軽鎧に変わっている。
「お願いサラマンダー」
リイアの胸元から、ポンと飛び出る火蜥蜴。
『アレの相手じゃそんなに長く保たないよ?』
「すぐ済むわ」
『りょーかい!』
サラマンダーはリッチキングへと飛んで行った。
『あ、あ?精霊…?』
『そ、僕は精霊さ、君は誰にやらされてるの?』
リイアはラインハルトの傍らへと歩を進める。
サラマンダーがリッチキングの足止めをしてくれている。
《リザレクションは生涯三回しか行使出来ません》
警告がリイアの脳内に響く。
「構わない!リザレクション!」
迷いはない当然だ、彼はこんな所で死んでいい人物じゃない。
七つの力とか、そんな事は関係ない、仲間を思う使命感がリイアを満たしていた。
途端にラインハルトが息を吹き返す。
「っ、くはぁ!!」
飛び起きるラインハルト。
「?今…何が…」
「ちょっとそこで待ってて」
「お前…リイアか?」
リイアの姿が、ラインハルトの意識が途絶える前と明らかに違っていた。
リイアの手にしていた月のメイスが、月の細剣へ変化する。
瞬間移動したように、リイアの姿がリッチキングの後ろへ現れた。
銀色の輝きがリッチキングを両断していた。
『あ…』
「なんだそりゃ、速すぎて見えなかった…」
ラインハルトが目を見張る。
速さだけなら、アルをも超えていたかもしれない。
リッチキングは頭から順に、塵へと姿を変えていった。
マーマンの襲撃により、港の船は全滅。
北西の広場に合流したアル一行。
「どーすんだよ?」
「ホントにね…」
考えが浮かばない一同。
ちなみにリイアの姿は、戦闘終了と共に元に戻っていた。
「こりゃ、陸路で持ってくるしかねぇな」
「え?」
「陸路でチムフトから持ってきるしかないわな」
「は?」
「チムフトからは、ノームダイトへ行けないんですか?」
地図的にはカイティアクからより、チムフトからの方が、ノームダイトに近い。
「あそこは今、港がダメになっていて、船は出せん」
「残るは要塞都市サンゲイルからだが、あそこはこの国の首都、余所者が船を借りられる訳がない」
「なる程、それでチムフトから船を持ってくると?」
「そう言う事じゃ」
「はぁ…選択肢がないのが辛すぎる…」
「手段が無いよりマシじゃねぇか?」
「そうですね、準備をしましょうか」
アルが手を上げ発言をする。
「その前に、一休みしませんか?」
一斉にアルの方を向く三人。
「そうね、すっかり忘れてたわ」
アルの提案に乗り、ユタを連れホテルへ向かう。
翌日出発する事に決めた。




