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LAST FLAME〜黒翼を焦がす炎〜  作者: 久遠恵悟
第一章 始まりの火

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第二話 三つの火種

 「ハァ……ハァ……」

魔の潜む森を独り、少女が駆ける。

 この森には魔獣という凶暴な獣がおり、付近の村の人々は誰も近付かない。この娘は付近で山菜を採っていたところ、迷い込んでしまったのだろう。

 少女の背後から地を蹴る重い音が段々と近づいてくる。

 「グォォォッ!」

少女が振り返った瞬間、獣が襲いかかった。

 「焼却(フレア)

少女を庇ったと同時、獣が断末魔をあげて燃えあがった。

 「ギリギリセーフ。君、大丈夫?」

 「うん…。ありがとう」

 しかし、魔獣は最期の力で襲いかかってきた。

 「グォォォォォッ!」

(なっ、まずい!今ので天力が尽きたから撃てない──)

 ザンッッ!

一瞬にして魔獣の頸を鋭い銀が通り抜けた。

 「まったく、危うく死ぬとこだったぞセイエン」

 「ごめん、ここに来るまでに天力使い過ぎたみたいだ。カイリのおかげでこの子を助けられたよ。ありがとう」

安堵の息をつき、カイリの手を借りて立ち上がった。

ふたりは森を出て少女を村まで送り、先生のもとへ帰った。

 

 「ふたりとも上出来です!こちらは周辺の村の人たちの怪我や病気の治療をエリスに手伝ってもらいました。これで周辺もしばらくは安泰でしょう」 

 「ふたりともお疲れ様!怪我があれば言ってね。私が治すから」

 「ああ俺らは大丈夫だ。ところで先生、修行の再開はいつです?」

 「まあ、今日のところはみんな疲れているでしょうし、明日にしましょう。今日はゆっくり休んでください」

 夜が更け、床についたセイエンとカイリは今までのことについて話していた。

 「カイリの天啓(イルミナ)は今どんな感じなの?」

 「うんともすんとも言わない。まだまだ時間がかかるかもな」

 「そっか。どんな力なのか気になるな〜」

 「そんなことより明日に備えてさっさと寝るぞ」

 「はーい」

 他愛のない会話も終わり二人は眠りに落ちた。


 「はい、みなさん!今日は天力の使い方を学んでもらいます!」

朝一番から先生の元気な声が響き渡る。

 「よーし。じゃあ早速始めよう先生!」

それに呼応するようにセイエンも返事をした。

 「待ってくださいセイエン!私が君にプレゼントした特製ライターはちゃんと使えてますか?」

 「もちろん。天力さえあれば誰でも使える優れ物って、先生自分で言ってたじゃん」

 「君のイルミナは火操(ランブル)、火を操る能力です。もうわかってるかもしれませんが自身で火を出すことはできないので、くれぐれもそのライターを失くさないように!」

先生はセイエンにしっかりと釘を刺した。

 「とまあこの話はこれくらいにして、始めていきましょうか!」

こうして三人の修行が始まった。


 「やはりエリスは天力の使い方が上手いですね。あなたの場合は天力の細かな調節(コントロール)が治癒能力に直結するので、どんどん鍛えていってください」

エリスの能力をしっかりと観察して先生は賞賛した。

 「はい!頑張ります!」

先生に褒められて嬉しそうに笑いながらそう言った。

 エリスの指導をすぐに終えて、セイエンとカイリを見にきた先生は少し離れて観察していた。

 カイリは木刀にしっかりと天力を込めて構えた。

セイエンも同様にして構え、カイリと向き合った。

 「いくぞセイエン。手加減はしない」

 「来いっ!」

カイリは素早く間合いを詰め、セイエンに刀を振るった。セイエンも押されながらカイリと打ち合った。

 バリリッッ!

 攻防が続き、天力のぶつかる音があたりに響いた。

 

 (やはり剣術ではカイリの方が一枚上手ですかね……)

セイエンが後手にまわっているのを見つつ、先生は分析を続けていた。

 「くっ……まだまだ!」

劣勢に追い込まれながらもセイエンは再び間合いをとって構えようとする。

 しかし、それはカイリにとっては大きな隙だった。

 「遅い!」

 ガンッ!

カイリの打ち込んだ一撃でセイエンの木刀が手から離れた。さらにその一瞬でセイエンに切先を向けた。

 「勝負あり、でいいよなセイエン?」

 「参りました……」

セイエンも負けを認めて勝負がついた。間髪入れずに先生が入ってくる。

 「素晴らしい!ふたりともいい打ち合いでしたよ。」

 「先生!見てたんですか?」

 「おや?まさかふたりとも気づいてなかったんですか?まさに真剣勝負ですね。お互いに集中していた証拠です。」

 「さて、カイリ。さっきの戦いを見る限り、あなたはやはり剣術の才があります。しかし終始セイエンを押してはいましたが、攻に力を注ぎ過ぎです。あの戦い方では相手のカウンターをモロに受けてしまう。防御にもしっかり注力してください」

 「攻に力を注ぎ過ぎというのは、要するに間合いを詰め過ぎだということですか?」

 「ええ、その通りです。戦場で相手の力量を量りちがえるのは命取り。まあ、実戦においてはの話ですが」

先生は実戦を意識した意見をカイリに投げかけた。

 「なるほど。次から気をつけて動いてみます」

 「しかし、よく戦えています。これから実戦経験を増やして、さらに伸ばしていきましょう」


 「そして、セイエン。よくカイリと打ち合いました。剣術の力量差がありながらあそこまでいなせたのは素晴らしいです。ただ、間合いを取り直すときの動きが軽率でした。常に相手と向き合うときは隙を見せないように動いてください」

 「うん!実戦のときに意識してみるよ」

 ふたりの返事を聞いて先生は微笑んだ。続けて、エリスを呼んで昼休憩の時間をとった。


 「いや〜、みなさん成長してますね。師として喜ばしいことです」

 「俺らがここまで成長できたのは先生のおかげですよ。先生が居なきゃ力をつけようなんて思いもしなかった」

カイリの言葉を聞いて先生は頭をかきながら照れ笑いをした。それも束の間、いつになく真剣な表情を浮かべた。

 「みなさんの力が付いてきた今が頃合いかもしれませんね。この世界の現状について話しましょう。今、この世界では──」

先生が話の途中で急に黙った。

 「!!」

先生が何かを感じ取った顔をして、振り返ったと同時──

 ゴゴゴゴッッッッ!

大地の揺れる大きな音がした。それは三人の少年たちの運命が動き始めた音でもあった。

 


天力はイルミナを使うためには必須で、天力が尽きればイルミナは一時的に使えなくなります。また、様々なイルミナが存在し、能力によって天力の効率が変わってきます。この世界では全ての人が天力を持っています。

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