空蝉の君とのお話5
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あれから数日たった。
「姫宮さま、帝から氷が届いております。」
父から氷が届いたどうなので、おやつに削り氷(かき氷)をいただく。父にお礼の文を書きながら、女房から聞いた情報を思い出す。紀伊守が任国へ向かったそうだ。
そう。兄が行動を起こすのである。もう一通私は文を書いた。
数日後、兄が訪ねてきた。さあ、話してもらおう。
「紀伊守が任国へ行っていたそうですが、もしや・・・」
そこで言葉を切り兄を待つ。しばらくの沈黙のあと、兄は御簾の中に入ってきた。
几帳を隔て、扇越しに兄を見る。疲れが見える。
「紀伊守の館には行ったよ。」
「あら、それにしては浮かない顔でございますわね。」
「ああ。うまく逃げられてしまった。」
「まあ。今度はどのように逃げられてしまったのです?」
「小君の策が悪かったんだ。」
「とは?」
「はあ・・・」
兄はため息をついて話し始めた。天下の光源氏のため息だ。私以外の人はみな、心動かされるのだろう。
「あの日、小君から、紀伊守が任国へ下ったと聞き、夕闇に紛れて小君の車で屋敷へ向かったんだ。」
「あら、よく考えましたわね。それなら目立ちませんね。」
「そうなんだよ。子供の車だと、屋敷の人も何も気にせず通してくれてすんなり入れたんだ。東の妻戸で待たされ、小君が中の様子を確認に行ったんだ。」
「そこまでは順調ですわね。」
「まあまあかな。小君がいつもより締め切っている格子などを変だと思い、確認したところ、西の対に住む義理の娘が来ていると聞いた。」
「あら、困りましたわね。」
「そうなんだ。だけどとりあえず、見たいなと思って垣間見れる場所へ移動したんだ。」
「見れましたの?」
「ああ。灯りが近くによく見れたよ。」
「どんな方でしたの?」
「思っていた通り小柄な方だったよ。濃き綾(濃い紫の綾織物)の単襲に小袿を来ていて、頭つきも細やかで小さくて見栄えがしない人だった。顔を少し隠しがちであったのではっきりはわからなかったが、まぶたが少し腫れているような感じで、鼻もすっきりとしてなくて老けて見えて、器量は良くはなかった。でも身だしなみはきちんとしていてたしなみ深い人に感じたよ。」
「そ、そうですの。」
こ、細かい。
「義理の娘のほうは、白い薄物の単襲を来て、二藍の小袿のようなものを適当に着て、紅の袴のところまで胸元をざっくり開けていたよ。背が高く、とても色白で美しくふっくとしていて、頭つきも額付きもはっきりとしていて、目元、口元もはなやかで、髪は長くはないがたっぷりとあってまっすぐで美しかったよ。」
義理の娘(軒端荻と呼ばれる)、見た目は美人なんだね。てか、女性のこと話させると細かくて長いな!
「あら?西の対の方のほうがお気に召しましたの?」
「嫌いではないし、興味もあった。だが・・・」
「かの方(空蝉の君)の方が気になりますのね。」
「ああ。そうだったんだ。」
「それで、どうされましたの?」
「小君が出てきたから見るのをやめたよ。」
今更・・・
「帰られましたの?」
「まさか。小君にも、帰らせるつもりか?と聞くと、娘が帰ったら案内するといわれて待ってたんだ。」
「じゃあ、しばらくお待ちになりましたのね。」
「うん。でも、しばらく待っても娘は帰らなかったんだ。」
「あら、それでは帰るしかございませんわね。」
「いや、でも帰るわけにはいかないと思い、小君にどうにかしろと言ったんだ。」
小君、大変だったね。と思いながら先をうながした。
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