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鈴の下駄  作者: 水瀬透
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秋の星

 

3 秋の星

 

 誰かを好きになることは、才能だよ。

 きっと、恋することや愛することは、心や、そこに近い場所をとっても使うから、たくさん傷ついたり、ひどく痛むこともあるさ。片思いがすべて成就するとは限らないし、みんな死んでしまう生き物だから、両想いになっても永遠に一緒にはいられない――だから、誰かを好きになることは、自分から傷つきにいくようなものなんだ。

 さて、きみはそれをどう思う? きみの持っている、その心についてさ。

 恋やら愛やら、誰かがいたずら心で生き物に組み込んだとしたら、とんだ出来損ないの設定だと思うかい? 救いようのない、だた痛いだけのかなしいお話だって、思っちゃうかな。――でも、でもね。どれだけ傷ついても、ひとはまた、誰かを好きになる。傷つきすぎて愛せなくなってても、愛されたいと、心は愛を求めるでしょう? 求めるのは、求められるのはさ――かなしいだけじゃないって、知ってるからだろ? それが、あたたかくて、やさしくて、嬉しくて、幸福だって、知っているからだ。

 痛みに負けても立ち上がり、傷をも受け入れて、命ある限り、たったひとりを探し求める。


 まるで冒険物語の主人公だ。ほんとに格好いいね、きみは。


 ★ 


 大きな松の樹のある御宮さんに、秋がきました。

 境内の裏手にある、大きないちょうの樹は燃えるような金色に輝いて、葉の降りつもった地面は、まるで黄金を敷き詰めたかのように、ぼうっと光っています。紅葉の赤、楓の黄色、松ぼっくりのあたたかな茶色。色づく御宮さんには、朝の散歩のおじいさんたちのほかにも、子供から大人まで、たぶん一年でいちばんひとが多く訪れます。はらはらと降る、ひとには作り出せない色彩を、懐かしむような、見蕩れるような、そんな眼差しでみんな見上げています。


 ひぃらり、ひらり。

 後から後から降る黄金色を、風変わりな格好の少年が見上げています。朱色の羽織に、同じ朱色の鼻緒の下駄。ぴょこぴょこ跳ねた飴色の髪は、妙にその風景に、――この場所に馴染んでいて。一心に樹を見上げる、髪と同じ飴色の瞳は、どこか夢見るように、すこしぼんやりとしています。

 ふ、と飴色の少年は黄金色に染まった地面に目をやると、葉を一枚空にかざして、ポケットにそっとしまいました。


 カラン、コロンと下駄を鳴らして、裏手から出てきた少年の足に、何かが転がって当たりました。

 それは、小ぶりの黄色いゴムボールでした。

「こんにちは。これ、きみのかい?」

 ぽーん、ぽーん、と軽く放って遊びながら、少年は駆けてきたちいさな男の子に言いました。幼稚園か何かのスモックを着たままのその子は、

「こんにちは! そう、ぼくのボール」

 と、走ったせいで真っ赤な頬っぺたで答えました。

「そうかい、どうぞ。」

「ありが、とう!」

 差し出されたボールをきちんとお礼を言って受け取った彼に「えらいねえ」と言っていると、「あらあら、ごめんなさいね」と、のんびりした声が、不意にかけられました。飴色の少年が振り向くと、境内の正面に白くて暖かそうなショールを羽織った女の人が困ったようにわらっています。「いいよ、大丈夫」少年が答えると「この子ったらほんとにやんちゃで…」と眉をハの字にしながら、愛しげに微笑む彼女。

「ねえおにいちゃん、一緒にあそぶ?」

 くいくいと、服の裾を控えめに引いて、男の子が少年に聞きました。

「いいよ、何がいい?」

 サッカー! とはしゃぐ男の子と、少年は御宮さん中を駆け回りました。途中で追いかけっこになり、キャットボールになり、かけっこを繰り返しては、また思い出したようにボールを少年に蹴り出す男の子はとっても楽しそうで――そんな二人を、彼女は嬉しそうに、ずっと見つめていました。

「ぼく木登りするからねえ、見ててねー!」

 あれこれひとしきり駆けて、投げて、蹴って、拾って、描くと、男の子は少年に境内のところで待っているように言い、御宮さんのすみっこの木まで一人で走って行くと、手を振って叫びました。「あいよー、気をつけるんだぞー」と、少年はひらひらと手を振り返すと、女の人の隣に座って、木に手をかけて格闘する男の子を、一緒に眺めました。

「遊んでもらっちゃって、ごめんなさいね」

 男の子を見つめたまま彼女が「ありがとうね」と言いました。「思うように私が動けないのもあって、もうついていけなくなっちゃったのよ」と。よく見れば彼女は柱にもたれるように腰掛けていて、少しやつれた頬も、あまりいい色をしていません。

「ま、元気いっぱいでなによりじゃないか。大きくなったってことだろ?」

 さっぱりと答える飴色の髪を、涼しい風が、すうっと揺らします。冬が近いのを感じさせる、少し冷たい秋の風。

「そうねえ、あの子は生まれたとき、とても小さくて。とても心配したもの」

 懐かしむように、愛おしむように目を細めて、彼女は男の子がいまよりもっと小さかった頃の話をしてくれました。

 生まれて一歳になるまでは身体が弱く、入院したこともあって、とても心配したこと。

 寝返りをうって、はいはいをするようになったと思ったら、つかまり立ちをして、よちよちと歩いてひやひやしたこと。

 「まま」と初めて呼んでくれた時には、嬉しくって力任せに抱きしめてしまったこと。

 大きくなる毎に、私に似たところ、旦那さんに似たところを見つけて、夫婦でわらったこと。

 外になかなか出られなかった頃が嘘のように、あっという間にたくましくなっていくことが、嬉しくて、少しさびしくて、――やっぱり、本当に嬉しかったこと。

 旦那さんと自分の真ん中にあの子と手をつないで散歩するのが、一日で一番の楽しみだったこと。

 身体が弱くて寝込むことが多い自分を、ちいさな手で撫でてくれる優しさに泣きそうになったこと。

 やんちゃで、優しくて、格好よくなっていくあの子が――本当に可愛くて仕方ないこと。

 のろけるように呟いて、彼女はゆるくため息をつきました。


「あの子が可愛くて、心配が尽きないのだけれど――私のエゴなのよね」

 ずっと、見ていたいのになあ。夢見るように、目を伏せて、


「傷ついてほしくないけれど、傷つくことで見つけられる幸せもあるって、私は知ってしまったから」


 一生病院と離れられない自分が、結婚できるとは思わなかったもの、彼女はクスリとわらいました。

 きっと反対されると思ったのに、旦那さんの家族はびっくりするくらいあたたかく迎えてくれた。ウエディングドレスだって着れた。彼女の身体のことを考えて、病院に近いからと、職場からは遠いのに、彼女の実家のすぐ近くのアパートを新居に選んでくれた、おおらかな笑顔がよく似合う旦那さんのことを、彼女はささやくように語りました。

 目を開けて見つめるのは――そんな大切な、大好きな人との間に生まれてきてくれた、愛しいあの子。


「あの子はこれから、どんな人と出会って、どんな人を好きになるのかしら」


 過去も未来も愛おしみ、願うような囁きが、そっとこぼれました。

 ささやかな、星の光のような。――それは時を越える、やさしい祈り。


「さあ、ね。傷つきながら生きていくことだけは確かだろうさ」

 カランコロンと鳴る下駄が、言葉とはうらはらに柔らかな音を響かせます。

「転ばぬ先の杖は、さ。人生の酸いも甘いもたっぷり味わったひとのもんでしょう。それにさ、完璧な愛も、完全な人生も、きっと味気ないもんだろ?」

 さっき、駆け回っていたときに男の子が二回ほど転びました。

 立てるか? と少年が駆け寄ると、男の子は「だいじょーぶ!」と言って、自分で立ちました。「ぼく泣かないよ」そう言って、また走って行ったのです。それを、彼女も見ていました。

「転ぶと、泣いて抱っこをせがんでいたのにね」

 はらり、はらり、色彩が舞う視界の向こうで、男の子は木登りに夢中になっています。手をかけ、足を片方ずつ考えながら枝やうろにかけて、失敗したら、またはじめから手をかけて、もう一度。――赤、黄色、茶色が降る中を、青いスモックが登っていきます。

 ちいさくて、まだ少し危なっかしいけれど、たくましい手と、足取りで。

「ちいさいままでいてほしい、なんて、これじゃあ私の方が子供ね」

 少し泣き笑いのように微笑んで、彼女がつぶやくと、カランと下駄が鳴りました。

「ばかだなあ。あの子がどれだけ大きくなったって、きみの子供に変わりないだろ」

 あたたかい音で、カラン、コロン、と。

 舞い落ちる赤、黄色、茶とよく似た色で、下駄がなります。

「だから心配なんていつまでも尽きないさ。きみも、おとうさんも、おじいさんやおばあさんだって、あの子がどんなに大きくなっても変わらないよ。きみが、きみの両親たちにいまだに心配されてるのとおんなじさ。でも――それがきっと、家族ってものなのさ」

 にっ、と飴色を細めた少年は、きょとんとする彼女にいたずらっぽくわらってみせました。


「ね、知らなかったでしょう。だからぼくが知ってて、いまこうして教えてるのさ」


 赤く色付いた紅葉がさらさら揺れて、カラン、コロンと下駄を鳴らす少年の、朱色の羽織に重なります。

「きみが生まれたから、きみのおかあさんは母親になれた。父親も、おばあちゃんも、おじいちゃんも、きみと一緒に生まれたんだ。きみのおかあさんのおかあさんも、おとうさんのおとうさんも。ずうっとそうやって繋がってきて、ずうっとそうやって心配し続けてる。ずっと、ずっと――いなくなったあとだって、変わらないさ。いなくならないもの、無かったことにはならずに、ちゃあんと残るんだよ」

 朱色の羽織に黄金色。ひらりと落ちては降り積もって、地面を光らせます。

「ね。大丈夫だよ。きみがどんなに傷ついても痛くっても、諦めながら、それでも誰かと生きることを選べたように――あの子だって、何回でも手を伸ばせる。」

 鮮やかな色彩の中、ふわりとわらって少年は空を仰ぎます。高い高い、青い空を。

「転ばない人生を、痛みのない人生を、あの子に願うんじゃあないだろ? それはさ、そう願えるのは、きみがきみの生きた時間を愛せたから。愛せるような人生を、きみはきみに、贈れたんだ。だからさ――あの子はもう、大丈夫。」


「きみの心残りになるような、そんな子じゃあない。」


 ――それはきみも知ってるでしょう?

 カラン、コロンと、下駄の音だけが響いて、風が飴色の髪にぱさぱさとじゃれては通り過ぎてゆきます。

「手を離しても、大丈夫。あの子のこれからは、あの子が自分で大丈夫にできるって、ぼくがちゃんと知ってる。――きみがひとを心から愛せる、素敵な心の持ち主だってことも、きみが生まれる前からぼくが知ってたんだ」

 名残惜しそうに、心配そうに。けれど、どこか吹っ切れたように。

 大きく息を吐くと、彼女は木の上から手を振る我が子を、目を細くして、心底愛しげに見て、手を振り返しながら、ぽつり。

「あんなにおおきくなったのね――まだあんなに、ちいさいのにね」

 愛しさを隠さない声で呟くので、少年はカランっと明るく下駄を鳴らしてやりました。

「ばかだなあ。誰の子だと思ってるのさ。大冒険を成し遂げたきみの、そして旦那さんの子供だよ?」


 大丈夫なことなんて、ぼくがずっと知ってたさ。


 生意気に言うと、少年は手を振る男の子のもとへ歩いていきました。

 少年の目の高さくらいのところで、青色が得意げにわらっています。

「すごいなあ、ひとりでこんなとこまで登れたんだね」

「うん! だってね、おかあさんに教えてもらったんだ」

「そっか、いつも遊びにきてたもんな」

「おにいちゃん、ぼくのおかあさん知ってるの?」

「知ってるさ、――きみは、おかあさん好きかい?」

 男の子は、ぱあっと、秋空みたいにまっすぐな笑顔で答えました。

「うん! ――いまはね、死んじゃってお星さまになっちゃったから、もう会えないんだ。まだ、ちょっとだけさびしいけど、でもぼくが泣いてばっかりだと、きっとおかあさんもかなしいっておとうさんと約束したんだ。でもね、ぼくずっと、ずっとだいすきなんだよ」

  ――ほらね、大丈夫って、だから言ったろ?

 ちらりと振り向いた境内に、彼女の姿はもうありませんでした。

 カラン、コロンと、さくさく落ち葉を踏みながら、木から降りてきた男の子と、置きっぱなしだったボールを拾って、「おまいりする」という男の子と手をつないで、少年はお社に向かいます。いつもおとうさんとおかあさんと来ると、お参りしてから帰ったんだよと、男の子が教えてくれました。


「そういえば、なんで今日はひとりなの?」

「おとうさんがお仕事でおそくなるから、おじいちゃんとこにいたんだけど、急にご用事できたから、御宮さんで待っててねって、いわれたんだ」

「そっか、さびしくなかった?」

「おにいちゃんいてくれたから、たのしかったよ」

「そらよかった、……あ、これやるよ」

 飴色の少年は、つないだ手と反対の手を突っ込んでいたポケットから、どんぐりをみっつ取り出すと、男の子のスモックのポケットに入れてやりました。

「わああ! ありがと! どこにあったの?」

 驚いたのも無理はありません。この御宮さんに、どんぐりの樹はありませんでしたからね。

「どういたしまして。――さあね、ずっとここにあったのさ。」

「?」

「ま。とにかく、きみのこと大好きな人がいたんだよ」

 ほら、着いた。

 要領を得ないような顔つきで頷く男の子にクスリとわらって、境内の正面に立つと、つないでいた手をほどいて、男の子は「のんのん」と、両親に教わったように手を合わせておじぎをしました。


 ――ありがとう、     。


 ざあっと、不意に風が吹いて、男の子は開けようとしていた目を、ぎゅっとつむりました。風は、髪をやさしくなでて、何かをささやいてゆきました。「ありがとう」のあとにもなにか言っていたのですが、うまく聞き取れませんでした。――まだ男の子が、知らないことでしたからね。

 そして目を開けた男の子の隣から、朱色の羽織を着たお兄さんがいなくなっていました。

 御宮さん中をさがしましたが、どこにも姿がありません。おかしいなあ、と首をかしげていると、おじいさんが大きな声で男の子を呼びながら、大急ぎでやってきました。

「おそくなってごめんな」

 と言って、頭をなでるおじいさんに、男の子はどんぐりを見せて、不思議なお兄さんに遊んでもらった話をしました。目を丸くしたまま、おしまいまで話を聞くと、おじいさんは男の子がびっくりするくらい大きな声でわらい出しました。

「驚いた、お前はママにほんとにそっくりだ――ママも、おんなじことを言ってたんだよ」

 そして男の子と手をつないで、秋の夕暮れの中、帰り道を歩きながら教えてくれました。


 あの大きな松の樹のある御宮さんには、怒らせると怖いが、人好きな神さまが住んでいて、ときどき人の姿で、御宮さんに現れるのだと。

 それは朱色の羽織に不思議によく鳴る下駄を履いた、子供の姿だと云われていて――


「お前のママが子供の頃は、御宮さんに、どんぐりの樹があったんだよ。」


 帰ってからポケットを覗くと、不思議なことにどんぐりがふたつ消えていました。

 ひとつだけ残ったどんぐりを、彼はなんとなく、ずっと持っていました。


 ★


「ぱーぱ!」

 とてとて、とて。

 危なっかしい足取りで、彼の娘が秋の色彩に染まった公園を歩いています。

 休日の午後、彼は奥さんと娘と、近所の公園に遊びにきていました。きゃあきゃあはしゃいでは、すとんと転ぶように座り込み、また立ち上がって歩き出すのを飽きることなく繰り返す娘を、こちらも飽きることなく心配してついていってしまうので「まるでカルガモの親子ね? あの娘が親で、あなたが子供だけれど」と奥さんがわらいます。「転んだって自分で起きるから大丈夫よ」そう言うわりには、娘が転べば彼女もすっ飛んでくるのですがね。

「ぱーぱ! ぱーぱ!」

 呼ばれて、なにやら渡したいらしい彼女に手を差し出すと、――どんぐりが、ふたつ。

 この公園には、いちょうの並木道や紅葉はありますが、どんぐりの樹はありません。

「これ、どこにあった?」

 彼が尋ねると、娘は「う!」と言って奥さんを指さしました。「まーま!」と。

 ひらひらと手を振る奥さんは、紅葉の葉を片手にわらっていました。拾った落ち葉がずらりと並んでいます。

 おやつと水分補給にと娘を連れて戻ってきた彼が奥さんに聞くと、彼女は「ん?」という顔をして、どんぐりを見ると「ああ!」とわらいました。

「なんでかね、この子の上着のポッケに入ってたのよ。」

 買って初めて着たから、なんにも入ってないはずなのにね。

 手当たりしだいお菓子を引っ掴もうとする娘をなだめながら、奥さんは答えました。

「不思議でしょ? でもどんぐりだから喜ぶかなってこの子にあげたのよ。そしたら、この子はあなたにあげたのね」

 彼がぼんやり、手の中のどんぐりをなでていると、いたずらな風が並べられた落ち葉を舞い上げました。いつかの秋の匂いが、唐突によみがえって――彼はあの日の落ち葉の匂いを、つかんだ木の手触りを、不思議に揺れる朱色の羽織と下駄の音を、――何かをささやいた風を、思い出しました。

 突然「あ」と声を上げた彼に、奥さんと娘がきょとんとしています。

「なに、どしたの?」

「いや、なんでもないよ」 

 彼は娘をひょいと抱きかかえると、そのままごろんと芝生に寝そべりました。きゃいきゃいと娘は楽しそうに、彼の腹の上でじたばたしています。

 見上げれば、高い高い、青い空。


『星ってね、見えないだけで、昼間も空にあるんだよ。』


 彼は目を伏せて、出会ってすぐの頃に、奥さんが教えてくれたことを思い出していました。――幼い頃に星になってしまった、母親のことを。

 身体こそ弱かったけれど、幼かった彼がおぼろだけれど覚えているくらいに、心と身体ぜんぶで、めいっぱいに愛してくれたひとでした。とても自由な人だったと、父親はいまでも懐かしそうに、お酒をのむと語ります。懐かしむように、愛おしそうに。


 ――かあさん、


 彼は心の中で、いつかのささやきに答えました。

 いまの彼はそれを知ったから、もう、ちゃんと聞こえるのです。


 ――おれもだよ。


 星の光は時を越えて、囁きはここに届いたから。

 いつかによく似た秋の風が、少し、わらったような気がしました。



 『ありがとう、あいしてる。』






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