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砂上の月  作者: saltcandy
14/15

不死者達の宴

()()()()()()も終わったの?」

「ひっひひ、霧草殿か。

その豚の頭は何じゃ?」


するとチッチッチッ、指を動かし否定的な目で僕を見る。


「うふふ、折角可愛いのにそんなジジ臭い言葉は嫌よ?昔みたいに、お姉ちゃんと言いなさい」

「ひっひひ、()でもそれは流石に無理!

というよりも、霧草さんは僕よりも遥かにおば...」


僕の頭スレスレに蹴りが入る。近くにあった柱がガシャンと崩れる。

僕は思わず冷や汗をたらりと額に現れる。女性に年齢の話はターブーなんだよね〜。


「何か言った?」

「いえ何も」

「それならいいわよ。

私も、特務部隊の仲間を之と同じにしたくないし」


そう言うと腐りきった豚の頭をプラプラと僕に見せる。その言葉真か偽りか、僕には判別出来ない。

この人は、僕が特務部隊に入るずっと以前、特務部隊が設立された時からいる竹さんや隊長、副隊長と同じ古参の一人だ。


「竹の奴もすぐに終わって、今は大将達と話してるわよ。隊長は負ける事ないし、後は若い子だけね」

「ふーん成程ね。

そういえば、咲さんはどう思う?神代三兄弟を」


僕は最近加入した三人について尋ねる。あの希少性物に値する三人を。


「私が思うに、()()()()()から見ればエルフ三兄弟よりも将来厄介になるでしょうね。

敵国からしたら来夢ちゃんの未来予知なんて戦略や情報戦という概念をぐちゃぐちゃにするし、

命琴ちゃんの異能は下手したらネクロちゃんのよりも完璧な死者蘇生が出来る、有能な者を生き返らせる事も可能でしょ、

雷道ちゃんの転移能力、血統力も合わさって大軍を移動させることも将来できるでしょうね」

「だから、多くが姿を消すか討伐されたんだろうね()()()()

「違いないわね」


僕達は屍山血河の中立っていた。








「大口を叩いた割にはただの念動力じゃないですか?」

「ふん、あんなチンケな物と一緒にするな」


私の周囲の石が浮き上がる。それを見て馬鹿女達は念動力と誤解したらしい。あんな物と一緒にされるとはなんという屈辱だろうか?

私は、腹の中に煮えたぎる様な怒りを覚え、それを排出するかの様に石を飛ばす。


「死ね」

『ウォォォォオ!』


すると石たちは気持ちの良い(禍々しい)雄叫び(絶叫)をしながら奴らに向かう。


「二人ともどけ、私が処理する」


そこに【剣姫】がしゃしゃり出る。剣を抜いたかと思ったら周りの石が千切りみたいに切れる。


「ふん、弱すぎるな特務部隊」

「それは糞みたいな傲慢だな」

「なっ!」


私は手を百合の茎の様に揺らす、


『ウォォォォ!』


神々しい(不気味な)雰囲気を出して、石は元通りに、いや奴の持つエル・ドラードを形どった剣となる。


「さて、耐えられるか?」


私は再び手を揺らす。

剣は奴らに向かう、それら全てがまるで奴らに恨みがあるかのように。


「騎士達、守って」


流石に【剣姫】にはあれら全てを切り落とすのは不可能だったのだろう、【闇姫】が代わりに前に出てきて木偶の坊達を盾にする。

それが目隠しになるものを。


剣と騎士の人形が衝突する、私はその時に奴らに向かって走り出す。どうやら、騎士の人形が勝ったらしい、まぁいくら恨みの魂がこもっていようが素材が素材じゃな。


「はぁ!」


しかし、そんな事を私は気にしない、私はそのまま健在の騎士の人形を飛び越える。

そして、奴らに向かって鎌を振る。


「かかりましたね!」


【光姫】の歓喜の声を聞こえたと思ったら私の胸の部分に違和感が感じる。何事かとチラリと目で見ると【光姫】の槍が私の心臓を刺していた。







「ちっ、すばしっこい!」

「どうした【俊足】?

そんなノロマな攻撃が当たるわけないが」


そう嘲笑うと銃を謎の雲の上に乗って俺を追う、染めて雰囲気を出してるのだろうか?緑色の髪をしている【俊足】の足に向けて撃つ。


「隼颯、どけ!」


しかし、その銃弾は都合の良い肉壁そとスポーツ頭の【鉄壁】に防がれる。もう少し、銃弾に貯めるエネルギーを入れれば打ち破れるだろうがそれには時間がかかる。

案の定、体を硬化する異能により防がれた。


「うん?」

「足止めしました!」


突如、体が動かなくなる。体に黒い靄がかかっている。

之は確か【魔女】の時間をかけて見た者の動きを少し止めるだっけ?


「之でも喰らいやがれ!」


そこを雲の上に乗り移動する事が出来る異能を持つ【俊足】が距離を詰める。


「ふん」


だが俺は転移で消える。

次に現れたのは魔女のすぐ後ろ。俺は、銃を【魔女】の頭に定めて、引き金を引こうとする...


「させるか!」


が俺はそんな敵に攻撃を悟らせるような叫び声を聞き、後に跳ぶ。


「ふんぬ!」

「っう」


しかし、少々遅かったらしい。俺の体に、茶色の髪の【剛力】金棒が当たる。俺は吹き飛ばされる。

骨を何本か折れたな。走るのは無理そうだから転移で移動するか。


「なっ、連続転移だと!?」

「之くらいやらねば命が幾つあっても足りない戦場にいるのでな【勇者】」


その後、【魔女】達と合流した【勇者】達を円の中心にぐるぐると転移する。

【剛力】の異能は、【山の拳】と同じ身体能力を上げる、【勇者】の異能は確か...


「隼颯、堅翔!こっちに来い!」

「「分かった」ぜ」


急に奴らは一箇所に集まる。何がしたいのか俺にはよく分からない。

って、そうか勇者の異能が確か。


「之で終わりだ!」


黒い球状の物体が奴らの周りに集まる。【勇者】の異能は爆発する球を生み出す異能である。

その数は、()()の転移能力者が短時間で移動出来る範囲を越えていた。

だが、俺ならば転移出来るがそれでは面白くない。


「クソ!」


俺は焦った振りをしながら奴らの近くに転移する。取り敢えず、厄介な【勇者】と【魔女】を優先的に殺す振りをする。


「かかったな!」


銃を持つ手に痛み、喪失感を感じる。そして、したり顔の【勇者】、あぁ、なんてウザいんだ?

更に、金棒で足を潰され、ナイフで内臓がぐちゃぐちゃにされ、鉄のような拳で顔面を仮面ごと殴られる。

その顔はどこまでも勝利に満ち満ちていた。








「しゃっ!」

「先から(エル・ドラード)での攻撃だけど異能は使わないの?」


僕は真っ白な刀が横にくるのを見て、すぐに避ける。その速さは中々の物で、エル・ドラードを使った戦いならば()()の極東帝国でもTOP10には入るだろう。


「そちらこそ、先程から逃げてばかりでエル・ドラードすら使っていないが?」


挑発しながら僕の腹目掛けて蹴りが入る、それを予知ししていた僕はその足を掴み、投げる。


「何!?」


彼は机の方に放り投げれた。その衝撃で木で作られた机や椅子は粉々になった。まぁ、之くらいでは死なないだろう。


極東帝国の制服は、人類が産んだ13の天才科学者(狂科学者)の一人MDが作った身体能力やらなんやらが倍増するという馬鹿げた性能を持っている。

つい最近までは、極東帝国のそれは秘匿だったのだが時が経つ程増えていく自称国際主義者(グローバリスト)兼平和主義者のせいで全世界に公開された、馬鹿だろ!

因みにその事についてMDは、

「あない旧式未だに使っとるなんてアホやろ」

とのお言葉です。


その制服にはちょっとした治癒能力まであるからLv8までいくと今のはノーカンなのだろう。

まぁ、起き上がる前に殺りますが。


「っ!糸だと」


彼は目を見開き、自分の左腕に巻かれた糸を見る。さて、腕一本いきましょうか。

今回のオーダーは見せしめの意味合いも強い為事前に隊長から惨たらしく殺れと言われている。


「ぐっ!」


悲鳴が聞こえる。そして、糸から何かを奪った感覚が伝わった。程なくして僕の近くに腕がぼとりと落ちる。


「さっさと異能を使えばよかったのに」

「使っている」


僕が呟いた独り言、それをどうやら彼はつぶさに聞いていたらしい。

そして、周りに真っ白な紙切れが舞う。


「油断禁物、どうせ資料か何かで私の異能は知っていただろう。

その通り、私の異能は脆い、使い所が大変難しい」


千羽博文の異能は、念動力と物体の硬化だ。しかし、念動力は紙切れくらいの物しか動かせない、物体を硬くしてもエル・ドラードで容易く切られるレベル、片方だけなら外れと言われるが両方ならば厄介だ、という訳でもない。


「普通に賞賛に値するね。

こんなに細かく念動力を使うなんて」


大量の紙切れを一枚一枚、自由に動かす、それを行える者は極東帝国軍の中では彼くらいだろう。


「之が使えるのは五分、使う前に集中する必要もある為異能は使わなかったのだよ」


ニヤリと彼は笑う。いやはや売国奴でなければ彼は大将に登り詰める可能性もあっただろうね。


「私の勝ちだな」


紙切れが僕の体に一斉に向かう。肉や骨、内臓が切れる感覚がする。

きっと僕はマントもズタボロになり、その下の服までもズタズタなのだろう。辺り一面に血が舞い散る。

しかし、痛みはあまり感じない。


「ふっ」


僕はその状態でありながら笑った。


「何だ?」


彼は怪訝そうな顔で僕を見る。そして、彼の表情が驚愕に変わる。

僕の痛みの質が変わる。まるで、強引に体が変化しているような歪な痛みだ。

傷が塞ぐ、骨や内臓が液体から個体になる様に修復する。


「生憎種族が違うからね」


僕は走り抜ける。紙切れの群れを強引に、傷付きながら。

それを見た彼は焦りと喜びを交えた顔で紙を動かす。


「死ぬまで殺すのみ!」


そう言うと、彼は大量の紙切れを群れを成す小魚の様に一つに集める。

その形は、さながら巨大な魚といった所か、その巨大な紙切れ魚は僕目掛けて猪猛突進する。


「喰らえ!」

「そんなので死ぬと思う?」


その紙切れ魚は僕を食おうと大きく口を開く。避けること無く突撃した僕はまさに化け物に喰われる気分を味わう。

しかし、ただそれだけだ。


すぐさま、凄まじいまでの激痛を伴い回復する。この激痛にはもう慣れた。

昔は、ちょっとした回復でも絶叫したのにね。


そんな、昔を懐かしみながら僕は糸を動かす。


「ぐあっ!」


彼の上半身と下半身が別れる。普通の人間ならば即死だが、例の制服を着ている為ほっといても死なない。


「ばっ、化け物が...」

「化け物なんで酷いね、同じ人種でしょ?」


笑いながら彼は言った。笑ってるけどその目はどこまでも諦め、そしてようやくゴールに付けたという達成感で満ちていた。

僕は彼がどんな思いで国を裏切り、犯罪に手を染めたのかなんて知らないし興味もない。

しかし、子供の時、いや軍に入った当初はきっと国の為にという思いでいっぱいだったのだろう。


「さて、もうそろそろ終わりだけど何か言い残す事ある?」

「特にない、ただただ後悔してるだけだ。

強いて言うなら、地獄で悔い改める」

「そうかい」


僕は、彼の首を糸で断ち切る。中々、マトモで狂った人間だった。

何故だって?彼は終始笑いながら戦っていたのだ。






「何故生きてるのでしょうか?」

「私が生きたいから生きてる、ただそれだけなのだが?」


私は槍が突き刺さったまま【光姫】に近寄る。その目は理解する事が出来ない恐怖に染まっていた。


「取り敢えず、お前のその薄汚い顔を矯正してやろう」


私は奴の顔目掛けて蹴りを入れる。


「ぎゃはは!」


【光姫】の顔の骨格が変わったとおもったら遠くに飛んで行ってしまった。


「騎士達、殺りなさい」


四方から黒い騎士人形が迫る。


「英霊達よ、私を守れ」


私は懐から袋を取り出し、その中から十個の小石を出す。この袋は兄とMDが作った某青い狸のポケットの様な物である。


「えっ!」


人形達が謎の透明な壁に遮られる。【闇姫】は目を開けて驚く。

どうやら私の異能を未だに念動力だと誤解しているらしい。

この防御結界といえよう私を守る壁はこの石に封じられた十人のその様な異能力を持った者達のおかげだ。

私の異能は、死んだ者の魂を物体に封じ活用する。魂を扱う所業から私の異能を知る敵側からは【女神】、仲間からは北欧神話のヴァルキリーと言われている。


例えば、先程の念動力の真似物、あれは潜入していた時に壁に虫の魂を封じ込め虫達に命令したのだ。

通常ならば、虫にそんな命令して上手く動かないだろう、しかしそこで私の血統力、長く封じ込める程難しい命令も、人間ならば生前の異能も扱える事が出来るのだ。


「お前等の異能も私が有効活用してやろう」


小声でそう呟くと、四つの小石を取り出す。


「お前の色はまだ持っていないから丁度いい!」


私を守る結界の周りから大量の赤、黄、白、緑の騎士が現れる。


「私と同じ!?」

「ほざけ馬鹿、お前の全くもって使いこなせていない騎士達と一緒にするな」


現に、私の騎士達は赤なら炎を纏い、黄色なら風をたびなかし、白は光の球を浮かせ、緑は歩いた所から植物を生やしている。


「之は、姉さん達の...」


そうだとも、以前殺したお前の姉妹兄弟の異能だ。


「さて、殺れ!」

「させるかあぁ!」


騎士達が黒い人形達を鎧袖一触、蹴散らしながら【闇姫】に向かう。それを【剣姫】が防ごうとする。


「無駄だ」


五個の石を更に取り出す。


「死ね!」


突風が起きる。【剣姫】はそれに直撃すると奴の体が切れる。之らは全て鎌鼬の様な現象を起こす異能だ。一つ一つは弱いが、集まると力を合わせてくれる。


「ぎゃああああ!」


そして、【剣姫】は風の刃によりバラバラになる。同じくして、【闇姫】も丁度騎士達にミンチにされてしまった。


「残るはお前だけだ」


私はそれに近寄る。それは、怯えた子供のように寝転がりながら震えていた。


「起きろ」

「ひいぃぃ!」


私はそれの今ではくすんだ金色の髪を掴み、立ち上がらせる。その顔には、今まで何度も見た恐怖が塗りつけられていた。


「何故戦わなかった?」


醜くなった顔を更に殴り問う。それが何故蹴られてからずっと戦闘放棄したのかを。


「じにたなぃ!

わだじは、まだぁ死にだグゥなィ」

「ぎゃはは!

それは傑作、傑作、大傑作!お前が殺してきた奴らやお前が汚い金を受け取ったせいで死んだ奴らも同じだっただろうな?」

「わだしの、顔がぁぁぁあ!」


更に殴る。私は三つの石を取り出す。それらは全て之の異能と同じ物を持っていた者達が封じられている。


「私が死ぬまで悔い改めよ」

「いやぁぁぁ!

だすげて()()ぅぅ!」

「誰だそれ?」


その名前を口にした時、それはどこか狂信的な信者のような不気味な声をした。

思わず殺してしまう程に。光の束がそれを包んだ。


「佐藤ねぇ、あの女も洗脳されてた口かね?

一応、心の隅に留めとくか、戻ったら教えろよ三人」

『『『はい!命琴様』』』


適当な石に入れた魂達が元気よく応える。一応応答可能なのである。







「その程度か?」

「ばっ、化け物...」


冷淡な声で言う。

体がまるで逆再生の様に元に戻る。再生される時が一番痛いと俺達は思う。


それにしても化け物か。確かに俺たち兄弟の種族はそう呼ばれるだろう。


「やはり急激な再生はキツいな」


俺は懐から金属製の瓶を取り出し、その中身を飲む。口一面に鉄の味がまわる。そして、回復するスピードが更に早くなる。

之が俺達の種族、超絶希少種の吸血鬼(ヴァンパイア)の力だ。


「さて、もうそろそろ終わりにするか」


俺は銃を取り出し、【勇者】の頭に照準を当てる。そして、軽く引き金を引く。

すぐさま、【鉄壁】が【勇者】の前に出て、銃弾を弾こうとする...。


「がっ!」


【勇者】の頭から血と弾丸が弾き飛ぶ。続け様に四発、適当な所に発砲する。

そして、四つの頭から弾丸が飛び出る。


最初っからこうして終わらせたかったが程々に長引かせといた方が特務部隊の力がよく分かるらしい。俺のした事は簡単だ、銃弾を奴らの頭に転移しただけだ。

普通、人体の中に転移させるなんて事は不可能だと思われている。そもそも、生物には異能の力が効きにくいのだ。

しかし、別に効きにくいだけであって、無効な訳ではない。俺は、血統力のおかけで強引に行っている。


「さて、回収しに行くか」


俺は宛てがわれた仕事、全員の回収には向かう。一度全員を集めて隊長の方へと向かう。といっても、終わったのはフランム、傀儡師の爺さん、霧草さん、竹さんだろう。

俺は、そのまま死体を置いて転移したのだった。

竹さん、霧草の戦闘はとばします。

理由は、一瞬で終わってしまうからです。

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