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砂上の月  作者: saltcandy
13/15

滑稽なる人形芝居

「どうした爺さん!

逃げてばかりじゃ埒が明かないぜ!」

「逃げてるのではない楽しんでるのじゃよ」


鉄で出来た壁をも楽々壊しそうな攻撃を紙一重で避けられる。

ちょこまかと小さな体を活かして避ける為目で追うのがやっとである。


「それではジジイの攻撃と行くかの!

人形達よ集え集え」

「来たか!」


俺は大剣を構え切り掛る用意をする。

すると爺さんの手が怪しく光る。そう思ったら爺さんが突如突進する。


「少々失礼」


そしてその手が俺の心臓を刺し、すぐに抜き取られる。

俺は咄嗟に大剣を振り爺さんに攻撃するがそれよりも早く後に避けられる。何だあの爺さんは?

心臓には傷一つ無かった。人形なんてそれこそ影も形も無かった。


「言葉に騙されるな若造が。

ジジイは思い出を少し吸い取っただけだ。

さてはて、それではいくかの」


すると爺さんは杖で影をつつく。

影はぐにゃりと歪みそこから二つの人形が現れる。

唯のマネキンにしか見えないそれは何故か人間らしい肉々しさがあった。


「ひっひひ、【魂降ろし】」


その人形に爺さんの怪しい光が乗り移る。


ぐきぎゃき、メキメキ、ミシミシ


人形達は気味の悪い、ホラー映画の様に体が動き肉体が形成される。

どちらも女性であると性別がはっきり分かった辺りで俺は何処かその二つの人形に近親感を覚えた。


「ひっひひ、もうそろそろ分かるぞ」


その声は何処までも邪悪であり、子供ぽくもあった。

そして、俺はえも言われぬ恐怖感、嫌悪感の二つが現れる。

何だ、なんなんだ之は?


その理由は判明した。


「菜緒!?それに姫那!

何でお前らがここに!?」


それは、まだ軍に入ったばかり、Lv3時代の同期にして恋人であったショートヘアの桜木菜緒、

数年前に行方不明になり、今まで所在が掴めなかったLv7の妻の姫那がそこにいた。


「ひっひひ、之くらいヒントをやればジジイの異能くらい分かるじゃろ!

さぁ、お主達奴を殺せ」

「「はい」」


その殺せの部分がどれ程邪悪な響きであったか、そして感情の無い完全な人形になっているかつて愛した人と妻を見るのがどれ程辛かったか。


「お主は根は心優しい者なのだろう。

だからこそこういった手段が有効であろうな」


敵は笑いながらそう言う。


菜緒がロングソードの形をした異能を持ち俺に切り掛る。菜緒の攻撃は痛覚を倍増するという中々にえぐい異能だ。

しかし、それは当たらなければ意味が無い。


俺は常人では考えられない速さで菜緒の後に行く。俺の異能は鬼化、鬼になる事が出来る。

現状、俺の額には角が生え、体もでかくなっている。それでも爺さんには追いつけなかったが。


「許せ!」


俺は切り掛る。自然その剣筋は震えていた。

だが 、その攻撃は防がれる。


「くっ、姫那そこをどけ!」


薙刀を持った姫那が俺の剣を止める。

俺は咄嗟に目を閉じ後に行く。姫那の目を見てはいけない、姫那の異能は目が合った物を動かなくする異能だ。


「ぐあぁぁ!」


その隙に菜緒が後に回り込み俺の背中を切る。激痛、熱々のナイフで切られ更にそこに塩水を濡らしたよりも痛いだろう傷を受ける。

だが意識は途切れない、いや途切れてはいけないな。


どうする?俺は柄もなく考える。

俺は、もう斬りたくない、愛する人を斬りたくない。


俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、

俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、


俺は、敵目掛けて走っていた。







ふーん、中々にいい選択をしたみたいだ。


「オオォォォォォォオ!」

「ひっひひ、老いぼれジジイを攻撃するの()()?」


僕が地の言葉になりかける位にはいい選択だ。しかし、それは僕に白兵戦で勝てる自信があればだが。

僕は杖に入れられた刀、まぁ仕込み刀というものを抜く。


「くっ、この外道がぁぁああ?」

「ひっひひ、戦いに外道も常道もないぞ?」


その今にも折れそうな仕込み刀で巨大な大剣を支える。彼の鬼人の力を使った異能は確かに強力だ。何度か鬼人と戦った事はあるが並の鬼人よりも強いだろう。


しかし、それだけ。所詮、腐敗し、平和ボケし、大量の国に犯された今の極東帝国でのLv9等はLv8に届くかどうかなのかと思ってしまうレベルに低下している。


「ほっ!」

「ぐはっ!」


僕は小柄の体に見合わずとても力強い蹴りで彼を大剣ごと吹き飛ばす。僕はこう見えて特務部隊でも一二を争う程その身体能力が高い。


「ひっひひ、そもそも外道と言うならばお主も戦闘以外でも中々の外道ではないか?」

「何だと!」


遠くから叫び飛ばす。事実を言ったのに何故起こるのだろうか?本当に人間とは不思議な物だ。

僕は仕方なく彼の罪状を告げる。


「そこにいる桜木菜緒を殺したのはお主じゃろ?」

「何を戯言を!

俺が菜緒を殺すがぁ!ゲホゲホ」

「血気盛んな事よ。

それでは、お主が彼女をどう殺したか詳細に教えてやろう。

皇紀3500年、六の月の丁度梅雨が始まった頃じゃったらしいな。

お主は、社会主義共和国及び自由社会主義国の調査をしていた彼女を姉龍川の辺に大事な話がしたいと言って呼んだ」

「黙れ!」


吠え叫ぶ犬はからかいたくなるものだよ?巨大な大剣を縦に降るがそんな見え見えの攻撃に当たるわけない。

そのまま、彼の右腕を切る。


「っ!」

「ひっひひ、やはり再生するのか」


しかし、それはずくに再生する。全く、鬼人達の再生能力も織り込み済みかい。

グチュグチュと液体が腕から溢れ出て腕が形成される。いつ見ても再生する光景は美しくない。


「ひっひひ、そしてお主は彼女が来た所でこう告げる。『今調査しているのを中止にしろ』


当時お主はLv7、既に社会主義共和国等から相当なお金と名誉、地位を得ていた。 そして、上からは邪魔者を殺せと告げられていた。

あれは奴らの一種の通過儀礼なのじゃがな!罪に囚われ縛るためのな。


当然彼女は、『馬鹿言わないでよ!』と激昴、裏の関係に察した彼女は逆に自首を進めるがそれに逆ギレした、愚かなお主はその手で...」

「それ以上言うなあぁぁぁぁああ!」


「殺した」


声にならない絶叫が響く。


「彼女から聞いたぞ?

しかし、安心するがよい。彼女は今は恨んではいない。何でも、哀れだとさ。

私がしっかりしていれば等とも言っとるの。未だにお前を愛してるとは健気な娘じゃのぉ」


僕の異能は二つその一つはあの世から人の魂を呼び下界に降ろし人形として使役する事。

その時に様々な情報も確保する事が出来る。感覚で言えば小説や本の物語を読む気分だ。そう、あくまで読者気分。


「奥さんの方は、社会主義共和国に最近言う事を聞かないお主の見せしめに殺害らしいぞ?

彼女が言うには、そのまま魔の手から逃れてほしいとな。出来た奥さんじゃ」

「ぐはっ!」


彼は気が緩んだようで、大剣を持つ手も同じく緩めた。その隙を逃さず滑るように懐に行き、心臓を一突き。


「がっ、あっあぁ」

「鬼人の再生能力は吸血鬼の様に致命傷は逃れられないのじゃよ?知っとるか」


その顔には燃え尽きた、何もかも馬鹿みたいに思えた男の顔であった。


「久しぶりにジジイは楽しめたぞ。

礼を言おう。

さて、あの世で奥さん()を大事にするのじゃよ?」


仕込み刀を彼の首にやる。

彼は、その言葉を聞いてポツンと唖然とした顔になり次に笑った。


「分かったよ。

俺の負けだ、こいつ等に行った罪を地獄で償い続ける」

「それが良い。

まぁ、地獄等じじぃの知る限り知らないがな。

さらばじゃ若造」


僕はそのまま首を跳ねる。彼は幸せそうな笑みで()()()()()()


「お主らも、末永く幸せにな」


()()()()()に言う。すると二人は笑いながらこくりと頷いてドロドロになって消えていった。


「誠に、人間とはおかしな生物じゃ」

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