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砂上の月  作者: saltcandy
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海の狩人

「どうした特務部隊!

逃げてばかりではいずれ捕まるぞ!」

『我が盟友よ、私を守ってくれ』


木の枝が自分にやってくるが滝の水、雷道さんがこっそりと海水に変えていた水が伸びてきて盾となるが如何せん水だ。

少し遅くなるだけで全く盾の役割を果たさない。


しかしそれでいい、そもそもエルフは森に住む種族。木の上を移動するなど動作もない。前方に木の束が現れる、が自分はナイフの形のエア・ドラードで切る。



「ちょこまかと卑怯な!」


「隠れてる奴に言われる筋合いはない」


あの爺が何処にいるのか全く分からない。木に取り囲まれたと思ったらどこかに行ってしまった。


あの爺の異能は巨大な木を生やしあやつるだけ。二つ名の困惑とはその巧みな指揮からついた名である。


「ゆけ、エント達よ!」


『我が盟友よ、あれらを飲み込め』


無数の木で出来た兵士が現れる。

しかし、それは海水で出来たクジラに飲み込まれ枯れ果てる。

だが、海水を更に変質させてすぐに枯れる様にしたが大樹、つまり本体は全く枯れない、それどころか海水を飲んでどんどん大きくなる。


既に屋根を突き破って外にまで出ている。


「エント兵士はまだいるぞ!」


「『我が盟...』流石に少し時間がいるか」


魔法には限度がある。ゲームでいう所のクール時間だ。自分は先程から大樹への水やりも兼ねて相当な魔法を使った。


「ならば切るだけ」


エントが自分の周りを囲む。しかし、自分は全く動じない。エア・ドラードを抜き、走る。


エントが前から襲ってくるが切る。エア・ドラードのナイフは只のナイフではなく海水の特性を持っている。


その為エントは枯れる様に消え去る。それを感慨深く見る暇など一切ない。


「ふん」


襲ってきたエントを蹴り遠くにやる。そのエントは枝から落ちる。


そして、自分はそのエントに向かって跳ぶ。あんなに沢山相手に出来ない。そのまま、エントを踏み台に近くの枝に飛び移る。


しかし、見計らった様に細かい枝が自分に向かう。

それを少し横に移動しナイフで大樹から離し枯れさせる。


それにしても全くキリが無い。もうそろそろ、頃合なのかもしれないが。自分は枝にナイフを突き刺す。

そんな事をしていたら頭上に浮かび上がっていた巨大な枝に気が付かなかった。





「ふははは!

やったぞ!特務部隊のあの生意気なガキを殺したぞ!」


エント達で囲み、目的の枝にまでおびき寄せる。全て計画通り!きっと、今頃ぺちゃんこになったガキが枝にあるだろう。


液体の様なものを木が吸収した感触があったからきっと全て吸い取られたのだ。

特務部隊、噂では聞いていたが中々厄介な奴だった。しかし、一人殺した。

上の者達から上役を授かれるだろうし、若しかしたら大将にも!


「ふっふっふ、ふはははははハハハ!

特務部隊様々だな!」


儂にもはや出世の道等ないと思っていたが御歳70歳、大将の道もついに開けた!

事故で死んでいった彼女も喜んでくれるだろう。


「サトミ!

見ているか!儂はまたお前の願いを叶える事が出来そうだぞ!」


その時だった、


「ガハッ」


儂の腹に何か違和感を感じた。思わず、腹を触る。するとドロドロと赤い血が流れていた。


「なっ!」


咄嗟に木を操り、枝の盾を作ったのは幸いだった。次の瞬間、木の盾は横に切り裂かれた。


「何故お前は生きている!?

いや、どうして此処に来れたのだ!」

「さぁ?」

「とぼけるな!

此処は、此処は木の中なのだぞ!」


本能的な恐怖を思い浮かべる仮面を被った特務部隊がそこにいた。







自分が何故ここが分かったか。それは自分の異能とこの木のおかげである。


自分の異能は兄弟と同じ、いや条件としては兄弟よりも少しだけ厳しいかもしれないが。海水と一体化する事が出来るのだ。


そして、この木は海水を思いっ切り飲んだ。植物には栄養を運ぶ師管と水分を運ぶ導管がある。自分はその導管の中にある海水を渡りここまで来た。


「どうやって来たかは知らぬ!

しかし、儂を1回で殺さなかったのはしくじったな!」


そう言うと【困惑の大樹】は手に槍を持ち突進する。

その槍は特務部隊の自分から見ても中々熟練していると思う。


しかし、それでも遅い。自分は横に避ける。

それでも老人は一度止まり自分を見て槍を突き出す。俗に言う乱れ打ちだ。


「オオォォォ!」

「何か勘違いしてる」


それをナイフでずらす。

すると、次は後から枝が突き出る。


「自分は殺せなかったから殺さなかった訳ではない」


その枝は枯れる。既に、限界寸前まで来てるのだろう。

ナイフで槍を弾き飛ばす。やはり、歳で槍もろくに持てないのか。


「見せしめとして素晴らしい恐怖の顔を残す為に殺さなかった」

「くっ!くぅぅっ!」


自分はそのまま目の前で止まる。仮面越しからでも分かるような冷淡な目で見る。

そして、


「ぎゃあああ!」


右目にナイフを突き刺す。そのまま一捻りして抜く。

次に左腕に肩から切る。またも絶叫が響く。

奴はふらふらとしながら後ろに仰け反りながら後ずさる。


絶叫が響く度に木が枯れてゆくのを感じる。


「いだぃ!いだいだぁぁぁい!

ダレがダレがだスゲェでくれぇぇえ」

「まだ恐怖が足りない」


足を切る


「ぐぎゃぁぁあ!」


五月蝿いから喉をきる


すると喉を抑えて芋虫の様に蠢く


べっちゃりと海水を付けてみる


すると更に蠢きが増す


内臓を腹から引き出す


御願するような顔で自分を見る


「いい、とてもいい。

もうそろそろ頃合いだろう」


そう言うとニコリ顔で歩きよる。


「ぁぁあ」

「さようなら」


目の前に立ち、ゴミを見やる。その顔は歓喜と絶望、相反する感情が渦巻いていた。

そして遂にナイフを真上に掲げ心臓に突き刺す。


「あっ、あぁぁ」


Lv9【困惑の大樹】はついに他界した。辛うじて残っていた左手には美しい女性の写真が入ったロケットを持ちながら。


「何だこれは?」


それを自分は拾い上げる。

どうやらあの老人にも何か譲れない核となるものがあったのだろう。

だからだろう、最期の死に顔は今までの顔がなかった様なとても穏やかな、優しい慈愛に満ちた笑顔であった。


「やっぱり、人って可笑しい」


でも、それが楽しい。そう自分は思った。

全ての敵役の過去も色々と考えていたりしますがそれを書く事は無いと思います。


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