第1話 再び目覚めた場所
目が覚めた。
まるで刃物で刺されたかのような激痛が、全身を襲った。視界が赤く染まり、やがて何も見えなくなった。
そのまま再び目を閉じ、眠ってしまえたらよかったのに。
暖かく、優しい季節だった。
新たな命が芽吹く、春。
私は自分の手を見つめた。
手を開き、握る。
それを何度も繰り返した。
私は……生きているのか?
空を見上げた。
目が眩むほどに眩しい太陽が、私がまだ現実にいることを教えてくれた。
私は草原に横たわっていた。
視線を下ろすと、風に揺れる花々が私の身体をそっと撫でていった。
静かだった。
私は再び目を閉じた。
あまりにも疲れ果てていた。
もう、一歩たりとも歩く力は残っていない。
花は揺れ、時には枯れていく。
どれほど眠っていたのだろう。
目の前には、ただ広大な草原が広がっていた。
いつの間にか、日が傾いていた。
今夜、休める場所を探さねばな。
私はゆっくりと身体を起こし、杖をついた。
……どうやら、私も寒さを感じるらしい。
身体が少しずつ震え始めた。
弱くなったものだ。
あまりにも。
白い息が漏れる。
私は杖に身体を預けながら、一歩ずつ、ゆっくりと歩き始めた。
周囲ではウサギたちが跳ね回り、鳥たちは日が暮れると、それぞれの巣へと帰っていった。
皆、自分たちの生きる世界で生き延びるための術を知っている。
私だけが、その世界のことを知らなかった。
歩き続けていると、見覚えのある町が目に入った。
初めてこの町を訪れた頃は、木造の小さな家が数軒あるだけだった。
木に、用途のわからぬ釘が打ちつけられている場所もあったな。
それが今では、巨大な城壁に囲まれた町……いや、領地が目の前に広がっていた。
もう、あの小さな木造の家々の間を、エルフや妖精たちが駆け回っていた頃の町ではないのだな。
今では、人間たちのものか。
自然と、うつむいていた。
町が変わったことを、喜べるはずもなかった。
……それでも、あの場所の匂いだけは変わっていなかった。
まだ、この町に私との縁は残っているのだろうか。
仮に残っていたとしても、誰とも顔を合わせたくはなかった。
私はうなだれ、拳を胸元に当てた。
こんなにも弱り果てた姿を見れば、皆、私を嘲笑うだろう。
表情を作ろうとした。
だが、顔の筋肉は思いどおりに動かなかった。
いや、そもそも私は、どんな顔をすればよかったのかさえ覚えていなかった。
結局、私の顔には何の表情も残らなかった。
どれほど歩いただろうか。
ようやく、城壁の門が見えてきた。
その前には、大勢の人々が列を作っていた。
誰もが、私の知らない種類の人間だった。
家一軒を埋め尽くせそうなほどの荷物を背負っている者もいれば、武器を大量に携えた者もいる。
杖を持つ者もいれば、何人かで一団を組み、賑やかに話している者たちもいた。
果ては、巨大な魔獣を連れ歩いている者までいる。
……この列に並べばよいのか?
私は特に何も考えず、列の最後尾に加わった。
人々の間に身を置いていると、身体が勝手に震え始めた。
そのときだった。
「おい、あんた。聞いたか?」
「何をだ?」
「この町の伝説の勇者、ルーデン様が帰還されるらしいぞ!」
「何だと? あの魔王を倒したという勇者様か?」
「そうだ! この町の出身だろ? 今度、ここに戻ってこられるんだとよ!」
「ほう……。死ぬ前に一度くらい、お目にかかりたいものだな」
「なら、凱旋されるときに見に行こうぜ!」
……ルーデン?
私はしばし考え込んだ。
あの小僧のことか?
いや、まさかな。
私は特に気に留めることもなく、視線を逸らした。
あの小僧が、もうそんな年齢になっているはずがないだろう。
……いや、待て。
どれほどの時が流れた?
思い出そうとしたが、頭がずきりと痛んだ。
やめておこう。
今は、そんなことを考えている場合ではない。
「次! 出身地と通行証を提示しろ!」
門の前まで来ると、門番が私に向かって怒鳴った。
出身地?
通行証?
何のことだ?
「入領の目的も答えろ!」
……さっぱりわからぬ。
「そんなものはないが」
「は?」
門番の顔が引きつった。
「おい、ふざけているのか? 出身地もなければ、通行証もないだと?」
私は彼をじっと見つめた。
門番は私の古びた服装と杖を交互に眺め、深いため息をついた。
「はぁ……またか……」
一日に何度も同じやり取りをしているのだろう。
彼は心底うんざりした様子で叫んだ。
「帰れ!」
そう言って、槍で門の外を指し示した。
ふむ。
困ったな。何か、入る方法はないものか。
門番は私の前に地図を広げた。
「ここを見ろ。お前みたいに出身地もなく、通行証を買う金もない奴は、まずこの町へ行って金を稼ぐんだ。それから入領証を買って、入領許可証も取得する! わかったか?」
「……何だと?」
「だから!」
門番のこめかみがぴくりと動いた。
「この町へ行って金を稼ぐ! 入領証を買う! 入領許可証を取得する! わかったか!」
「理解できぬのだが」
「だーかーら……!」
門番は再び説明を始めた。
出身地のない者はどこへ行くべきなのか。
通行証はどこで発行してもらうのか。
入領許可証を取得するには、どのような手続きを踏まなければならないのか。
長々と続く説明。
私はうなずいた。
そして、尋ねた。
「……理解できぬのだが」
「おいぃぃぃぃっ!!」
門番の絶叫が、城門の前に響き渡った。
……ああ。
思っていたよりも、面倒なことになったな。
結局、門番は最初から最後まで、もう一度説明する羽目になった。
ようやく説明を終えた彼は、すっかり疲れ切った顔で、遠くを走る馬車を指差した。
「はぁ……あそこに馬車が見えるだろ? あれに乗れ。無料だから。乗っていけば、目的地に着く。頼むから、何も考えずにあれに乗ってくれ!」
私はうなずいた。
「恩に着る、そなた」
「……別に、老人ってわけでもないのに」
門番が小さくつぶやいた。
見たところ若い男なのに、まるで老人のような話し方をする。
彼にはどうにも理解できないらしかった。
……多くのものが変わったのだな。
私は馬車の停留所へ向かって、ゆっくりと歩き出した。
馬車の中には、すでに何人かが座っていた。
仮面をつけた女はリンゴをかじっており、別の一人は布で顔を覆っていた。
ほかにも数人いたが、わざわざ話しかける気にはなれなかった。
私は隅の席に腰を下ろし、杖を膝の上に置いた。
ガタン。
ゴトン。
馬車が動き始めた。
「うぐっ……」
思わず、うめき声が漏れた。
乗り心地が最悪だった。
まるで竜の背中に乗っているかのようだ。
……いや、竜の背中は、これよりも快適だったはずだ。
私は頭をもたせかけ、窓の外を眺めた。
日が暮れていく。
赤い夕焼けが野原を染め、闇が少しずつ世界を呑み込んでいった。
私はゆっくりと手を開いた。
震える手。
かつては、何でもできた手。
今では、杖に頼らなければ歩くことさえままならない手。
……どうせ。
私は目を閉じた。
もう、疲れ果ててしまった。
息をすることも。
何かを見ることも。
何かを感じることさえも。
何もかも、これで最後になればいい。
まつげが、かすかに震えた。
最期を迎える場所は、どこがいいだろうか。
私は、揺れる馬車の中で考えた。
今度こそ……誰にも見つからない場所へ。
私は外国人で、文章全体の翻訳はAIに任せています。




