家の近くの小さな池
わたし 8歳
イサムくん 8歳
「ヒロちゃん、こっちやで〜! ほら見てみ」
家の近くの公園に大きな池があった。私を呼んでいるのは近所の男の子のイサムくんだ。私は八歳でイサムくんも同い年だ。
「どうしたん? なんかあったん〜?」
今日は二人で公園で遊んでいる。イサムくんは両手を体の前で合わせて、何か隠してるみたい。
「ほら、もっとこっち来てや」
イサムくんの方に歩いていき、手の方を覗く。
イサムくんが急に開いた手には小さなアマガエルがいて、飛び出してきた。
「きゃあっ!!」
蛙が苦手とか、そんなヤワな女の子みたいなことは言わないんだけど、急に顔の方に飛んできたから、それはびっくりした。
「あはは、ヒロちゃんはほんまビビりやなぁ〜」
「私、ビビりやないもん! もぉ〜!」
その公園は、そんなに大きくはなくて。どちらかというと公園よりも池が中心という感じだった。長細い瓢箪のような形の池の周りを遊歩道が囲っていて、所々に木製のベンチがあったり、植木が植わっていたりした。
池の周りには柵はなく、池自体もたぶんそんなに深くはないのだろうけど、今日みたいな夏の暑い日には、池のへりに座って、素足で池をパシャパシャとしたりして、涼んだりもしていた。
二人で並んで池の縁石に座る。
「ほんまいい天気やなぁ〜! お昼から原っぱの方まで行こっか?」
「うんうん、じゃあ私、家に帰ってお母ちゃんと握り飯こさえてこよかな。イサムくんは具は何を入れてほしい?」
イサムくんは私の方を見てにっこりと微笑んで、
「そやなぁ、俺は梅干しと昆布がええかなぁ。あとはヒロちゃんに任せるで。ヒロちゃんが握ってくれた握り飯、俺好きやわぁ」
池の真ん中あたりで、鯉が跳ねたのか、
ぱしゃん
と、水音がした。
——ぽとり
ん? なんか雫が落ちる音がしたような。私は空を見上げたけど、空はめちゃくちゃ晴れているし、雨なんか降りそうもない。
「どうしたん? ヒロちゃん。なんか空から降ってきたん?」
「ううん、なんでもないで。ねぇイサムくん……こうやって、ずっと大人にならんと、いつまでも無邪気に遊んでいれたらいいのになぁ〜」
イサムくんは、一瞬だけ真面目な顔をした。
でも、次の瞬間にはまた笑って、
「何を言うとるんや、ヒロちゃん。大人になったほうが、今よりももっともっと色んなことが出来るようになるんやで。今よりもっと科学も発達して、世の中も暮らしやすくなって。その方が幸せになれるやろ」
幸せ……
イサムくんと、私で……
——ぽとり
まただ。
天気雨……じゃないよな。
「あ、ほなそろそろ家に帰って握り飯作ってこよかな。イサムくんも来る?」
「いや、いったん俺も帰ってから、またここに来るわ。じゃあまた」
「うん、じゃあまたね」
じゃあ、
またね。
——ぽとり




