再会
ツクヨはミカの二歩手前で足を止めた。視線を差し出された手から、彼の顔へと上げる。
「どういうつもり?」
「僕の心を読んでくれ。」ミカは手を下げない。「間近でね。直接触れた方が、よりはっきり分かるだろ? 僕には突きつけられる証拠なんて何一つない。だから、これが唯一の方法なんだ。」
「そうやってあっさりと心を差し出す奴ほど、隠し事があるものよ。」
「確かにある。」ミカは迷いなく言った。「君には言えないことがあるんだ。読めばすぐに分かることだから、先に言っておくよ。」
ツクヨは目を細めた。一瞬思い悩む様子を見せたが、火に触れるかのようなぎこちない手つきで、ミカの手を握った。
彼女の掌は冷たかった。
目を閉じる。指先に力が籠もる。一呼吸、二呼吸。ホールは天井から薄っすらと落ちる塵の音すら聞こえそうなほど静まり返っていた。
「……殺意はない。」彼女の眉が寄る。「貪欲さもない。あの兵器を手に入れようという欲望もない。悔しいくらいに、あなたの心は綺麗ね。」
「それは褒め言葉? それとも侮辱?」
「疑いよ。」彼女は目を開けた。その瞳は鋭い。「それと、閉ざされた部分がある。壁のようなもの。気配は感じるけれど、突き破ることができない。」
「言ったろ。」
「言われたからって安心できるわけないでしょ!」
ミカは息を吐き出した。「聞いてくれ、僕はここに落ちてきたんだ。何かを奪いに来たわけじゃない。」
「落ちてこようが入ってこようが、結果は同じよ。」ツクヨは手を離さなかったが、その声は硬くなった。「この地を踏んだ者は全員死ぬべきなの。それが私の受けている命令であり、あなたが生まれる前から私が実行してきたことよ。」
「誰からの命令なんだ?」
「あなたには関係ない。」
「その人はまだ生きているのか?」
「……」
「ってことは、もういないんだな。」ミカは眉をひそめた。「なら君は、もう存在しない人からの命令に今も従っていることになる。さっき自ら僕の心を読んで、殺す理由なんて一つも見つからなかったというのに。」
「理由なんて私には関係ない。私の任務はそれを実行することだけ。」
「それは任務じゃない。君が考えるのをやめるための言い訳だ。」
ツクヨの顎のラインが硬直した。「分かったような口をきかないで。」
「分かったとは言ってない。ただの言い訳に聞こえると言ったんだ。」
「なら、あなたが理解していないことを教えてあげるわ。」彼女は手を振り払おうとしたが、逃げられる前にミカが握り返した。ツクヨはその手を忌々しそうに見つめたが、そのままにさせた。「あの通路にある兵器は、放っておいていいようなものじゃないの。あの力に触れるたび、私の身体の一部が壊れていく。ランダムにね。指のときもあれば、目のときもある。見えない内部の何かが壊れることもある。私はそれをあの場所に留め置くためだけに、何度も自分自身を失ってきたのよ。私が好きでやってるとでも思ってるの!?」
「思ってない。」
「なら、これを責任と言わずして何と呼ぶのよ!?」
「罰だ。」
その言葉がぽろりとこぼれ落ち、ツクヨは身を強張らせた。
「君は身体が壊れるまで何かを守り続けている。お願いされたからという理由以外、何もないのに。」ミカは彼女の視線を受け止めた。「それが自分を罰することじゃなかったら、僕には何と呼べばいいのか分からないよ。」
「あなたにそんなことを言う権利はないわ!」
「そうかもしれない。」
「あなたは今出会ったばかりの部外者じゃない! なのにここに立ちつくして、私が数千年も守ってきたものについて説教する気!?」ツクヨの声が震えていた。それが単なる怒りではないことにミカは気づいた。「私は数えるのをやめるまで待ち続けた! 誰も来なかった! たった一人もね! それなのに今になってそんな顔で現れて、私にやめろと言うの!?」
「やめろとは言ってない。」
「さっき言ったじゃない—」
「それは罰みたいに聞こえると言ったんだ。放棄しろという意味じゃないよ。」
ツクヨは唇を結んだ。一瞬、自分がリードしたかとミカは思ったが、ツクヨは息を呑み、ずっと静かなトーンで答えた。しかし、それゆえに反論するのがいっそう難しかった。
「なら答えて。私が守るのをやめたら、どうなるの?」
「分からない。」
「私にも分からないわ。」ツクヨは背後の暗い通路を見つめた。「それが一番恐ろしいことなの。試したことなんて一度もない。たった一度でも気を緩めたら、何か恐ろしいことが起きるんじゃないかって、毎日怯えながら起きるの。そして、それが間違いだと証明する勇気なんて、一度も持てなかった。」
「つまり、それを守り続けることが本当に必要なのかどうかすら、君には分からないんだな。」
「必要だと知っているわ。」
「確信しているだけで、知っているわけじゃない。その二つは違う。」
「その確信だけで、これほど長く耐え抜くのに十分だとは思わないわけ?」彼女はミカを鋭く睨みつけた。「何も守ったことがない奴に限って、いつもそうやって言うのよ。自分が背負っていないなら、罰だなんて簡単に言えるわよね。」
ミカは口を開き、そして再び閉じた。その言葉は胸に刺さった。嘘偽りなく反論することはできなかった。
ツクヨはその隙を見逃さなかった。握りしめられた手の中で彼女の指が強張るのをミカは感じた。この会話の間中、自分がずっと読まれているのだと悟った。だが、それはかえって都合が良かった。言葉を飾る意味などない。何を言おうと、それが本気かどうかが丸見えになるのだから。
「いいわ。」ツクヨの声が低く、冷たく、そして鋭くなった。「なら私の番ね。あなたは私に素直になれと要求し、心を開けと要求した。けれど自分自身は心に壁を築いている。一体何の権利があって、何も手放そうとしないあなたが、私の唯一の心の拠り所を手放せなんて言えるの?」
ミカは絶句した。
「私に自分を罰していると言ったわね。」ツクヨが一歩踏み出す。その瞳に赤い光が宿る。「あなたの心は読めるのよ、ミカ。あなたの心は手当てされていない傷でいっぱいだわ。固く押し隠し、声すら出ないように押し殺した恐怖。震える手でここに立ちながら、私に向かって自虐的だなんてよく言えたものね!」
「それは違う。」
「何が違うのよ!?」
「僕は—」ミカは言葉を詰まらせた。喉に言葉が引っかかった。どうしてなのか説明できなかった。その傷は自分が望んで選んだものではないこと、やめようとしてもできなかったこと、心の壁は意図して作ったものではないことを言えなかった。彼はただ口を開けては閉じることしかできなかった。
「答弁拒否?」ツクヨは自虐的で苦い笑みを浮かべた。「私と同じね。」
息が詰まるような沈黙が二人の間に落ちた。
ミカは俯いた。握っていない方の手が、意識とは無関係に拳を作っていた。彼女の言う通りだ、と彼は思った。彼女は一切間違っていない。自分にはこの女性に何も要求する権利なんてないのだ。自分自身だって誰にも分かち合えないものを抱え込んでいる癖に、こうして偉そうに助言などしている。
だが、どうしても飲み込めないことが一つあった。ツクヨは自分の身体の一部を失いながら目の前に立ち、まるで何千回も繰り返してもはや言葉の体をなさないお呪いのように「責任」という言葉を口にしている。それが、説明のつかないほど深くミカの心を傷つけた。
「……君の言う通りだ。」彼は顔を上げた。「僕には権利なんてない。君に隠し事をしているし、その理由も説明できない。僕が悪いよ。」
ツクヨは瞬きをした。そんな返信が来るとは予想していなかったようだ。
ツクヨは長い間彼を見つめた。握りしめた力が少し緩む。諦めたからではなく、予想外の何かを読み取ったからだ。
「なら、どうして気にするの?」彼女はついに尋ねた。「私はあなたにとって何者でもないわ。少し前まで、私はあなたに投降しろと命じていたのよ。」
「さあね。」ミカは空いている方の手で、気まずそうに後頭部を掻いた。「痛みの伴う場所に留まり続けるのがどんな心地か知っているからかもしれない。そして、耐えられるかどうかを誰も聞いてくれなかった感覚を、知っているからだ。」
「それがあなたの理由?」
「僕が持っている唯一の理由だよ。」
ツクヨの眉間に皺が寄った。彼女は読み取っていた。そしてミカには分かっていた——そこに一切の嘘がないことを。拒絶するにはあまりにも剥き出しな誠実さ。それがツクヨをいっそう焦燥させた。疑うべき余地がもはや存在しなかったからだ。
「だけど、僕は権利の話をしているんじゃない!」ミカの声が高くなり、荒々しく、制御を失っていった。「明らかに苦しんでいる人が、それを当たり前だと言っているのを見るのに耐えられないんだ! それがカッコいいとでも思ってるのか!? 体が一つずつ壊れていくまで、誰にも知られずに一人で全部耐え抜くのが、そんなに立派なことなのかよ!?」
「私は慈悲なんて要ら—」
「可哀想だなんて思ってない!」ミカは半ば叫ぶように言った。「哀れんでいるわけじゃない! 僕は怒ってるんだ! どうしてそんな扱いを受け入れる!? どうしてそんな長い間、こんな寂しい場所で一人で待ち続けて、それを命令だなんて言えるんだよ!?」
「ここに留まるよう頼まれたからよ!」ツクヨも叫び返し、初めてその防壁に亀裂が入った。「守るように頼まれたから! 耐えるように頼まれたからよ! 私に他の選択肢があったとでもいうの!?」
「あるさ!」ミカ自身、どこからその言葉が湧き出たのか分からなかった。ただ、もう言葉を吟味するのに疲れ果てていた。「ここに留まってもいい! 守ってもいい! だけど、自分を罰しながら待つのはやめろ! まずはちゃんと生きろよ! 時が来れば、その人は必ず自分でやって来るはずだ!」
その言葉が、静まり返ったホールにこだました。
ミカは自分が息を切らしていることに気づいた。僕は何を言ったんだ? 彼は何か付け加えようとしたが、ツクヨの顔を見て言葉を失った。
彼女は微動だにしなかった。
手はまだ握られたままだが、指の強張りは消えていた。怒りに燃えていた瞳は大きく見開かれ、瞬き一つしない。怒声も、反論も、一言の言葉すら出ない。彼女はただミカを見つめており、ミカには彼女がそこで何を見ているのか分からなかった。
「……ツクヨ?」
返事はない。
そしてその時初めて、ミカは異変に気づいた。ホールの奥で響いていた亀裂の轟音が消えていた。天井から落ちていた塵は相変わらず舞い降りていたが、音はない。自分の吐息すら耳に届かない。ホール全体が、目の前の少女と共に息を殺しているかのようだった。
ツクヨの表情がゆっくりと変化していく。和らいでいく怒り、崩れ去る疑心、そしてそのどちらよりも脆い何か——度重なる絶望の末に、期待することすら恐れている者の表情。彼女の唇が動いたが、声は出ない。一度、二度。あまりにも長く自分に向けられるはずもなかった言葉を、呼び起こす術を忘れかけたかのように。
そして、吐息よりも僅かに強い程度の声が漏れた。
「あ———?」
それは声ではなかった。少なくとも、ミカが認識できるものではなかった。彼の耳には、その名前が突き刺さるような鋭いノイズへと砕け散った。ガラスを擦り合わせたような、あらゆる周波数を一度に呑み込む壊れたラジオのような雑音。ツクヨの唇の形だけが、かすかに、途切れ途切れに伝わってくる。
激しい脈動が彼の頭を襲った。あの草原の時と同じだった。名前が唱えられようとした瞬間、見えない何かに呑み込まれたあの時と。ミカは顔を顰め、空いている手でこめかみを押さえた。
「待って……」彼の声は掠れていた。「今、なんて言った? 聞こえなかった。ノイズしか聞こえないんだ。」
ツクヨはすぐには答えなかった。彼女の瞳が僅かに動き、ミカは彼女がまた読んでいるのだと察した。彼女は彼の心の中から何かを探し、そして一つの事実に辿り着いて立ち止まった——雑音以外何も聞こえていない、彼の心からの困惑に。
「……聞こえなかったのね。」彼女は呟いた。
「何の話をしているのか分からないんだ。」
「ええ。」彼女の唇の端が、微笑みとより深い苦味の間で震えた。「あなたには分からないのね。」
涙がこぼれ落ちた。一粒、また一粒。彼女自身、それに驚いているようだった。
「計算された言葉じゃなかった。」彼女は空いている手の甲で頬を拭ったが、意味はなかった。「そこには説得しようという意図も、計算もなかった。あなたはただ、怒りに満ちた心でそれを言った。……あの子と、まったく同じように。」
「あの子?」
「私にここに留まるよう頼んだ人よ。」ツクヨは震える息を吸い込んだ。「命令されたんじゃない、頼まれたの。ほとんど同じ言葉でね。『ここにいていい、守っていい、でも待つことで自分を嫌いにならないで』って。『いつかその人が来るから』って。」
ミカは何も言えなかった。喉が狭まったように感じた。
「諦めそうになるたび、私はその言葉を繰り返したわ。」彼女の声が破綻する。「身体が壊れて、再び起き上がれるか分からなくなるたびに。言葉が擦り切れるまで繰り返した。正しい記憶なのか、それとも息をし続けるために自分で捏造しただけなのか分からなくなるまで。」
「この神殿は、本当に静かすぎるわ。」彼女は二人の間の床を見つめた。「人は静寂が安らぎをくれると言うけれど、それは嘘よ。長すぎる静寂は壁に話しかけさせ、自分自身に話しかけさせ、そして二度と返事が来ないんじゃないかって恐怖させる。この門の前に座って、自分がまだ存在していることを確かめるためだけに、ただ自分の呼吸を数えていた夜が何度もあったの。」
ミカは息を呑んだ。彼はそのような静寂を知っていた。胸を説明のつかない何かで殴られたような衝撃を覚えた。
「あの子を憎んだ時期もあったわ。」彼女の声は沈み込み、まるで告白のようだった。「私を去らせず、やめさせず、穏やかに死なせてもくれないあの子を憎んだ。でも、諦めそうになるたびに、あの言葉が浮かんでくるの。そして私には、どうしてもそれを裏切ることができなかった。」
「ツクヨ、僕は—」
「知らないなんて言わないで。」彼女は静かに首を振った。「あなたが本当に知らないのは分かっているわ。それを感じるから。だからこそ、こんなにも苦しいの。あなたが振りなら、拒絶できたのに。でもあなたは振りをしているわけじゃない。私をずっと待っていた約束を、自分が果たしていることすら気づいていないのね。」
彼女の膝から力が抜けた。ゆっくりと崩れ落ちる彼女を、ミカは反射的に支えた。二人は冷たい石の床に膝をつき、手は固く握り締められたままだった。ツクヨは深く頭を垂れ、額がミカの指背に触れんばかりだった。
「疲れたわ、ミカ。」彼女は囁いた。その声はもはや守護者のものではなかった。「あまりにも長すぎたの。誰にも言えなかった。誰もいなかったから。疲れて、怖くて……あなたが来てくれるなんて、もう信じるのをやめかけていたのよ。」
「僕……」ミカは唾を飲み込んだ。ツクヨが誰を待っていたのか、彼には分からない。自分がその「適切な人物」である確信すら持てない。だが、握りしめた手はあまりにも激しく震えており、何かを長く抱え込みすぎることがどんな感覚なのかを、彼は痛いほど知っていた。「僕は、ここにいるよ。」
言えるのはそれだけだった。そして彼は、それを心から伝えた。
ツクヨは今度こそ堪えきれずに押し殺した咽び泣きを漏らした。肩が震え、息が詰まり、涙が決壊した。計り知れない時の間、たった一人で背負い続けてきた重荷を全て吐き出すかのような泣き声だった。握る手が白くなるほど強まり、手を離せばその存在が消えてしまうのを恐れているかのようだった。
ミカは空いている手の手持ち無沙汰さに戸惑った。やがて、迷いながらもそれをツクヨの肩に置いた。彼女は拒絶しなかった。それどころか、少し寄りかかり、額をミカの肩に預けた。泣き声は静かに、より深く変わっていった。
「ごめんなさい。」しゃくりあげながら彼女は呟いた。「酷いことを言ったわ。あなたを殺すなんて脅して……本当はあなたなのに……」
「いいんだ。」
「良くないわ。全然良くない。」彼女はミカの肩で小さく首を振った。「私、待っていた唯一の人を殺しかけたのよ。」
ミカは反論しなかった。ただ静かに、彼女が泣き止むまでそこにいた。
彼女が口にした名前は何だったのだろう、と彼は思った。どうして僕には聞こえなかったんだろう。けれど、この涙が自分ゆえに流されているのなら……せめて最後まで、ここに居させてくれ。
二人がどれほどそこに膝をついていたか分からない。塵は二人の間に粉雪のように静かに舞い降り、やがて音が少しずつ戻ってきた。ホールの遠くで響く轟音、二人の呼吸音、そして自分の鼓動。
ツクヨがようやく顔を上げた時、その目は赤く腫れ上がり、赤茶色の髪が頬に乱れていた。彼女は記憶に刻み込もうとするかのように、長くミカの顔を見つめた。守護者でも、処刑人でもない。ただ、ようやく休息を許された一人の少女として。
彼女は空いている手を躊躇いがちに上げ、震える指先でミカの頬に触れた。壊れ物に触れるかのような、極めて軽い触れ合いだった。
「あなた、本物なのね。」彼女は囁いた。「私、あの人の顔を何度も思い浮かべたけれど、そのたびにぼやけてしまっていたの。もう二度と会えないのかもしれないって思っていた。」
「君の想像通りじゃなくて悪かったね。」
「あなたの方がずっと不恰好よ。」ツクヨは涙の合間にくすりと笑った。「もっとがさつで、粗忽で、頑固すぎるわ。……でも、だからこそ本物なのかもしれないわね。」
そして残った涙の雫のただ中で、ゆっくりと微笑みが浮かんだ。あまりにも長く待ち続け、笑顔の作り方すら忘れていた者の、温かく、そして脆い微笑みが。
「あぁ、そうなのね。」彼女は愛おしそうに呟いた。「分かったわ、ミカ。あなたは本当に、あの人なのね。」
*
ミカは石の床に膝をついたまま深呼吸をし、頭の中の目眩が治まるのを待った。目の前では、ツクヨが手の甲で残った涙を拭っていた。
溢れ出る問いが山ほどあった。だが、最も切実で、どうしても抑えきれない質問が一つ。
「ツクヨ。」彼は唾を飲み込んだ。「君が言っていた『その人』って、本当は誰—」
二人の下の床が突如激しく跳ね上がった。
先ほどのような微かな揺れではない。下から突き上げる荒々しい衝撃。ホールの奥から響き渡る咆哮のような轟音。ミカの声は、打ち砕かれる石の響きに呑み込まれた。壁を這っていた黒い亀裂が、無理やり引き裂かれた血管のように広がる。天井から分厚い塵が落ち、遠くの柱が一つ傾いて、胸を揺るがす響きと共に崩れ落ちた。
ツクヨは音の源へと振り向いた。ミカへ視線を戻した時、その顔には先ほど泣いていた少女の面影はどこにもなかった。その瞳は澄み渡り、鋭く、そして冷静だった。
「ミカ。」彼女は立ち上がり、ミカの手を引いて立たせた。「行くわよ。もう時間を無駄にはできない。今すぐあの兵器の場所へ辿り着かないと。」
「待ってくれ、僕はまだ—」
「後よ。」彼女は言葉を遮ったが、その声にトゲはなかった。「あなたの質問には全部答えるわ。私が知っている限りね。約束する。でも、辿り着く前にこの神殿が崩壊したら、答えるべき何もかもが残らないわ。」
ミカは口を閉じた。疑問を飲み込み、頷いた。
ツクヨは即座に走り出した。ミカもそれに続いた。
*
かつて囚人として、あるいは死体として通り過ぎるだけだった神殿の通路が目の前に広がっていた。そして初めて、彼は一人で走っていなかった。それだけで不思議な感覚だった。
曲がり角を曲がるたびに、より深くへと足を踏み入れていく。彫刻の施された壁が揺れ、天井に沿って樹木の根が石を内側から破壊するように黒い亀裂が伸びていく。幾つかの場所では、人間ほどの大きさの岩が予告もなく落ち、床を叩き割って鋭い破片を四方に散らした。
この道は……ミカは走りながら息を整えた。知っている。すべての曲がり角を。崩れ落ちるであろうすべての柱を。
それが彼を焦らせた。ツクヨより先に曲がったり、道を指し示したり、「こっちだ」と口走ったりしないよう、何度も自分を抑えなければならなかった。最もやってはならないのは、知りすぎている素振りを見せることだ。
前方で通路が狭まり、天井の半分が既に亀裂で覆われた長い廊下となった。ツクヨは速度を落とし、そして足を止めた。
「伏せて!」
ミカが問い返す間もなく、天井の亀裂が開き、巨大な岩が彼らの進路へと崩れ落ちてきた。ミカは反射的に頭を庇ったが、予期した衝撃は来なかった。
ツクヨが片手を掲げて彼の前に立っていた。岩は宙で粉砕され、砂の雨となって降り注いだ。彼女の掌の周りでかすかな赤い光が脈動し、そして消えた。
次の瞬間、掲げられた手の指がひび割れた。繊細な亀裂が薬指と小指の先から関節へと走り、二本の指が灰色の塵となって廊下の風に浚われていった。
ツクヨは無言で手を下ろした。
「ツクヨ!」ミカは彼女の腕を掴んだ。「指が—」
「問題ないわ。」
「そんなわけないだろ—」
「呪いが奪うのは、さほど重要でない部分だけよ。」彼女はマントの陰に手を隠しながら、淡々とした口調で答えた。目元だけが一瞬引き攣る。「いつもランダムに選ばれるの。今日は運が良かったわ。もし目を奪われていたら、私は置き去りにされて、あなたに引っぱってもらうハメになっていたでしょうね。」
「冗談めかして言っていいことじゃない!」
「冗談じゃないわ。」彼女は彼を見つめた。「そしてあなたには、怒っている時間なんてないの。走って。」
ミカは奥歯を噛み締め、怒りを抑えた。反論したかった。自分だって拒絶する間もなく身体の一部を失う痛みを知っていること、その呪いがどれほど恐ろしいか、そしてツクヨがこれ以上何かを失うのを見たくないのだと叫びたかった。だが彼はただ頷き、重いものを胸に抱えたまま彼女の後を追って走った。
彼女の指。彼は自分の拳を握りしめた。彼女は不平一つ言わなかった。
*
奥へ進むにつれ、神殿の惨状は悪化していった。交差点となっている大広間では、床の半分が底なしの闇へと崩落していた。ツクヨはその亀裂を軽々と飛び越えて対岸に着地し、振り返って待った。
ミカは崖の淵で立ち止まった。胸が激しく上下する。底から奇妙な風の音が聞こえ、闇の深淵から呟きに酷似した何かが聞こえてきた。
「ミカ!」ツクヨの声が呼ぶ。「聞いちゃダメ! 跳んで!」
彼は跳んだ。着地した足は足場を捉えきれず滑りかけたが、間一髪で手が彼の腕を掴んだ。二本の指を失ったツクヨの手が、ありったけの力で彼を強く引き上げた。
「私は呪いにかかっているけれど、愚かじゃないわ。」彼女はミカを引き上げながら悪態をついた。「今あなたが落ちたら、さっき話したこと全部が無駄になるじゃない。」
「……ありがとう。」
「お礼はまだ早いわ。まだ着いていないんだから。」
二人は走りを再開した。通路をいくつも駆け抜け、ミカは足元から伝わる揺れが単なる神殿の崩壊ではないことに気づき始めた。そこにはリズムがあった。深く規則正しい鼓動。深淵から響く巨大な心臓の鼓動のような。
「あなたも感じているの?」ツクヨが前を向いたまま尋ねた。
「あぁ。」
「兵器よ。」彼女の声が低くなる。「私たちが来るのを悟っているのね。」
*
最後の扉は、ミカがこれまで見た中で最も長い廊下の突き当たりに立っていた。高さ数十メートルにおよぶ二枚の石の扉。見覚えのない模様が刻まれ、その彫刻の一部は鼓動が響くたびにうっすらと紫に光っていた。
彼はその扉を知っていた。その奥にある廊下を知っていた。
そして彼の身体は、頭よりも早くそれを記憶していた。手に冷や汗が滲み、両膝から力が抜け、胃から込み上げるような吐き気が襲う。胸を貫く何かのイメージが、鮮明かつ鋭利に脳裏に蘇る。
ダメだ。今じゃない。
彼は深く息を吸い込んだ。一度、二度。指先はまだ震えていたが、震えるままにして立ち続けた。恐怖を感じるのは構わない。立ち止まることこそが許されないのだ。
ツクヨは無事な方の掌を扉の表面に当てた。紫色の彫刻が激しく脈動し、やがて重々しい石の軋み音と共に、扉がゆっくりと開いた。
紫色の光が溢れ出す。
その奥の空間は、山の中心をくり抜いたかのように広大で円形だった。壁面はミカの知らない文字の彫刻で埋め尽くされ、石の床は中央の地点へと向かって同心円状に配置されていた。その中央、亀裂の入った低い祭壇の上に、一振りの剣が垂直に突き刺さっていた。
刀身は濃密な紫色で、神殿の揺れと同調するように鈍い光を放っていた。装飾もなく、豪華な柄もない。ただそこに存在するだけで、周囲の空気の密度を変えてしまうようなシンプルな剣。
ミカは息を呑んだ。
神殿が激しく揺れた。天井が少しずつ崩落し始め、黒い亀裂が部屋の床にも広がっていく。足元からは、崖で聞こえた囁き声がよりはっきりと、近く、重なり合って響いてきた。
「もう時間がないわ。」ツクヨが息を切らせて彼を振り返った。「この神殿は数分以内に崩壊する。あの剣だけが唯一—」
ミカには彼女の言葉の続きが聞こえていなかった。
彼は既に歩き出していた。
思考していなかった。思案もしていなかった。三十三回、彼はこの場所へ来、三十三回、考えすぎてきた。初めて自分の背後に誰かが立っている。それだけで、彼の歩みから迷いを消し去るには十分だった。
「ミカ、待って、焦っちゃダメ—」
彼の手は既に剣の柄に触れていた。
冷たい。
そして、切り裂くような熱さ。
次の瞬間、彼が何かを感じ取る間もなく、世界は真っ白に弾け、そして暗転した。
*
暗闇。
床もない。空気もない。肉体すらない。全てを呑み込む黒だけが存在し、その黒の中に何かが流れ込んできた。
閉じられた瞼の裏に広がる、オレンジ色の光。どこか遠くで響く、幼い子供の笑い声。誰のものかは分からない。
大きな指を握りしめる、小さな掌。
屋根を叩く雨。濡れた土の匂い。椀とスプーンが触れ合う音。
光を背にして立つ男。口元を動かして何かを呼んでいるが、その顔はぼやけて見えない。
炎。悲鳴。ひび割れる赤い空。
背中から抱きしめてくる、温かい両腕。思い出せそうな香りを残して。
崩れ落ちる石の門。風に髪をなびかせて立つ少女の影。誰かが、彼の耳には届かない何かを告げている。
廃墟の合間に咲く、小さな花々。
誰かが泣いている。誰かが笑っている。誰かが震える声で、何かを約束している。
剣を握る手。自分の手ではないのに、まるで己のものであるかのように感じられる手。
全てがあまりにも速く流れていく。認識する間もない顔々、途中で途切れる声、風に煽られて捲れる本のように過ぎ去っていく光景。一つとして留めることはできない。一つとして自分のものである感覚はないのに、全てがかつて忘れ去った何かのように感じられた。
そして遠く、動き続ける暗闇の遥か奥底から、呼ぶ声がした。
かすかに。途切れ途切れに。ほとんど聞き取れない声で。
*
そして何の前触れもなく、全てが停止した。
頭の中で渦巻いていた顔や声、炎の欠片が、夢が覚める時のように一つずつ剥がれ落ちていく。ミカはその名残を繋ぎ止めようとしたが、試みれば試みるほど、疾走するように消え去っていった。残されたのは胸の詰まるような苦しさと、頭蓋骨の奥の鈍い脈動だけだった。
やがて、遠くから声が闇を穿った。
「……カ! ミカ!」
声が明瞭になっていく。塵の匂いが鼻を突く。足の裏に石の冷たさが伝わり、床から骨へと微かな揺れが伝播する。
ミカは目を開けた。
円形の部屋の天井は各所でひび割れていた。紫色の光が今も彼の周囲で脈動している。彼は右手を出した状態で祭壇の前に立っており、その手には濃紫色の刀身が石から引き抜かれて握られていた。
ツクヨが目と鼻の先に立ち、無事な方の手で彼の肩を強く掴んでいた。彼女の顔は蒼白だった。
「ミカ! 私の声が聞こえる!? ミカ!」
「……聞こえるよ。」声が掠れていた。彼は瞬きをし、息を吸い、こめかみを伝う冷や汗を感じた。「聞こえてる。大声を出さないでくれ、頭が痛い。」
ツクヨの肩が安堵で落ちたが、掴む力は緩まなかった。「目を開けたまま半分近く固まっていたのよ。私、てっきり……」彼女は言葉を途切れさせた。「気分はどう? 何か失われた感覚はある? どこか痛む?」
「何も失われてない。」ミカは空いている手でこめかみを押さえた。「さっき、たくさんのものが見えたんだ……なんだろう、顔とか、声とか、炎とか。でも何も思い出せない。自分のものではない悪夢から覚めたような感覚だ。」
「自分のではない?」
「分からない。全員知らない人たちだった。」
ツクヨは解読し難い眼差しで彼を見つめた。彼女が再び問いかけようと口を開いた、その時—
「おい。」
その声は低く、掠れており、妙な方向から聞こえてきた。
「いつまで蛇でも掴むような手つきで俺を握っているつもりだ、小僧。」
静寂。
ミカはゆっくりと視線を落とした。自分の手へ。握りしめた紫の刀身へ。それはまるで返答を待つかのように、一度だけ脈動した。
「……え。」彼は剣を見つめた。「兵器って喋れるのか?」
「喋れるに決まっているだろうが、この戯けが!」刀身がより強く光り、苛立ちを示した。「俺を誰だと思っているんだ!?」
ミカは虚無の表情でツクヨを振り返った。ツクヨ自身も呆然と固まり、唇を微かに開けていた。この数千年間、自分が護り続けてきた物体が初めて言葉を発したのを耳にし、彼女はもはや守護者でも処刑人でも、ホールで泣いていた少女でもなく、ただの唖然とした人間と化していた。
「この子……」彼女は呟いた。「今まで一度も喋ったことなんてなかったのに。」
「俺を正しく握るだけの分分わきまえた奴が一人もいなかったからだろ。」剣が不平を漏らした。「喋り相手がいなかったのは俺のせいじゃない。」
「借金の取り立て屋のおじさんみたいな声だな。」ミカは素直な感想を口にした。
「おじさんだと!?」刀身が怒りで脈動した。「俺は神器だぞ! この神殿よりも年上だ、無礼な小僧め!」
「じゃあやっぱりおじさんじゃないか。」
「お前……!」
「名前はあるのか?」
剣は一瞬絶句した。「……覚えていない。」
「名前のない神器か。」ミカは頷いた。「大層なこった。」
「いつか思い出すさ! その時になって後悔しても遅いからな!」
ミカは瞬きをした。尋ねたいことは山ほどあり、一番些細な問いから始めようとしたその時、足元の床が激しく跳ね上がった。
今度は単なる揺れではなかった。ひび割れた天井が大きく開き、家ほどもある巨大な岩が部屋の端に落ち、床を粉砕して壁を鳴動させた。壁の彫刻の紫の光が不規則に明滅する。先ほどまでかすかだった whispers(囁き)が、今やあらゆる方向からこだましていた。
「神殿がもう持たないわ!」ツクヨがミカの腕を引いた。「こんなことをしている時間なんて—」
「ちょっと待ってくれ。」ミカは剣を顔の高さまで持ち上げた。目を細める。三十三回、自分が何を持っているのかも知らずに動いてきた。今度こそ知りたかった。「おい。喋れるなら答えろ。お前の力は何だ? 何ができる?」
剣は黙り込んだ。
一秒。二秒。周囲の揺れは激しさを増していく。
「……知らん。」
「はぁ?」
「知らんと言っているんだ!」刀身が苛立たしげに脈動した。「記憶が曖昧なのだ! ここにどれほど突き刺さっていたかも怪しいわ! 力を持ち合わせていた記憶はあるが、それがどんな形で、どう役に立つのかまでは思い出せん! 全て霧がかかったようになっている!」
「本気で言ってるのか?」ミカはツクヨを見たが、彼女も同様に困惑した表情を返すことしかできなかった。「数千年も守られてきた神器が、自分に何ができるのかすら分かってないだって?」
「誰かを責めたいなら、俺をここに置いた奴を責めろ!」
「じゃあどうやってお前を使えばいいんだよ!?」
「お前の魔力を俺の刀身に流し込め。」剣のトーンが急に変わり、不気味なほど落ち着き払った。「俺に思いつくのはそれだけだ。燃やすための糧を与えれば、力が目覚めるかもしれん。何か起きるかもしれんぞ。」
「『かもしれん』!? それが計画か!?」
「他に良い案でもあるのか?」
ミカは口を開き、そして閉じた。無かった。背後では亀裂の音がさらに大きくなり、祭壇の周囲に石の破片が降り注ぎ始めていた。
彼は奥歯を噛み締めた。「分かったよ。でも僕の手を爆破したら、谷底に投げ捨ててやるからな。」
「やってみるがいいさ、できるものならな。」
ミカは一瞬目を閉じ、胸から右腕へ、腕から掌へ、掌から柄へと魔力を流し込んだ。最初は反応がなかった。やがて刀身が微かに震え、先ほどまで鈍かった紫の光が眩しく輝き出し、彼の呼吸と同調して脈動する光の層となって剣全体を包み込んだ。
ミカは体に何かが逆流してくるのを感じた。腕に力が満ち、握りがより確かになり、手の中の刀身は二倍の重みを増したように感じられたが、重苦しさはなかった。
ツクヨが息を呑んだ。
刀身はどこまでも強く、眩しく輝き、部屋を満たした。ミカは何が起きても受け止める覚悟を決めた。
光が収まった。
爆発はない。衝撃波もない。突然新たな力が開花したわけでもない。ミカは変化を確かめるように剣を一振り横に払ってみたが、理解できたのは一つだけだった。この剣はより鋭くなり、自分の身体がより強くなった——ただそれだけだ。
「……強化。」彼は刀身を見つめた。「ただの強化か?」
「やはりな、想定通りだ。」剣は呑気に唸った。
「おい、どういうことだ!?」ミカは今度こそ耐えきれずに剣を持ち上げた。「こんな土壇場で冗談を言ってる場合かよ!?」
「冗談など言っておらん! 知らんと言ったろうが! お前が期待しすぎたのだ!」
「名前もなく、記憶もなく、固有の力もない。そんなの神器じゃない、ただの高い鉄くずだ!」
「高い鉄くず!? 俺にはプライドがあるんだぞ!」
「自分を研ぐことしかできないプライドか?」
「それは……それは最初だからだ! 後から何か出てくるに決まっている!」
「よし、『強化丸』。」ミカは刀身をポンポンと叩いた。「名前を思い出すまでは、そう呼んでやる。」
「俺の名前はそんなダサいものではない!」
「忘れたんだろ。」
「……そうだとしても、それではない!」
彼の隣で、ツクヨは無事な方の手で顔の半分を覆っていた。肩が微かに震えており、ミカにはそれが笑いなのか絶望なのか判別がつかなかった。
その押し問答を切り裂くように、空気を切り裂く音が響いた。
天井からではない。床からでもない。祭壇の近くの空気が突如として波立ち、彼らと入口の間に、空間の布地を引き裂いたかのような亀裂が開いた。端が緑色に輝き、やがてゆっくりと回転する光の円へと広がっていく。
ポータルだ。
ツクヨは即座にミカの前に身を低くし、無事な方の手を掲げて指先に薄い赤光を宿らせた。「下がって。」
だがミカはくだらなかった。穴から溢れ出る何かを全身で受け止め、それが暖かい風のように肌を撫でるのを感じていた。それは魔力だった。分厚く、柔らかく、そして奔流のような魔力。彼がこれまで感じたことのない質のもの。
奇妙なことに、脅威は感じなかった。その魔力は余人には見知らぬものでありながら、同時に懐かしくもあった。壁越しに聞いたことのある声のような、あるいは面影を残しながらも様変わりした知人の顔のような。
誰だ……?
その影は、閃光のような速さでポータルから飛び出してきた。
ミカは剣を構える暇すら与えられなかった。一筋の影がツクヨをすり抜け、落ちてくる石の破片をすり抜け、彼の胸へと体当たりした。衝撃で彼は一歩後退した。二本の腕が彼の身体を、痛いほど強く抱きしめる。そして、震え、息を乱した、彼が一度たりとも忘れたことのない声が、耳元で響いた。
「見つけたよ、ミカ。」
ミカの手から剣が滑り落ちそうになった。
彼は動かなかった。息すらしていなかった。ただゆっくりと視線を落とし、記憶にあるものとは異なる髪、少し変わった色合い、遥かに強大になったオーラを目にした。だが、その顔が上げられ、涙に濡れた瞳で自分を見つめ返してきた時、見間違える要素など何一つ存在しなかった。
「……ミヤ。」
ミヤが笑った。
大きく、震え、そして偽りのない笑顔。彼女の顔からあまりにも長い間失われていた笑顔だった。涙が頬を伝って流れたが、彼女はそれを拭おうとはしなかった。抱擁を解こうともしなかった。ただ、目の前の存在が本当にそこにいることが信じられないと言わんばかりに、ミカを見つめ続けた。
「見つけたよ。」彼女はより静かに繰り返した。「やっと。」




