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村に伝わる森の伝説  作者: marron
番外編
12/25

魔女の薬の作り方:その2

ジクムント一人称語りです。

下品でスミマセン。

 アデーレの名前を聞いて、思わず変なリアクションを取ってしまったような気がしないでもない。でもあそこで、もっとたくさん喋ったら絶対にフィデリオにバレると思ってしまって、つい急いで帰ってきてしまった。

 いや、別にバレるもなにもないんだけど、そりゃ、アデーレに憧れている男子は多いと思う。そんなちょっとした憧れなんだから、俺が慌てることなんてないんだけど、だけど、名前を聞いたら、ドキドキしちゃって、早く薬を届けたくて、つい、帰ってきちゃったんだ。

 そうか、アデーレは便秘なのか。

 家に帰ってきて、鏡を見たら俺は真っ赤だった。

 便秘。

いや違う。アデーレが「便秘」だから真っ赤になってるわけじゃない。「アデーレ」が便秘だから真っ赤なんだよ。ぎゃー!何言ってんだ、俺!落ち着け、俺!

 とりあえず、部屋に戻って・・・飲むか。いや、待て。便秘薬飲んだらどうなるんだ?

 そんなの分かりきったことだ。便秘解消だ。

 じゃあ、便秘とは無関係の健康優良男子が便秘薬を飲んだ場合はどうなるんだ?つまり、便秘じゃない腸に、便秘薬が作用するとだな、俺の優良便が不良になるってことか?や、わからん。普通に出るだけかもしれん。だけど、最悪、下痢するってことだよな。出すために飲むんだもんな。便秘薬は実は下痢薬なのか。

 それって結構辛くねぇ?

 いやしかし、アデーレのためだ。

 まずは、薬が効くかどうかを身をもって知らなけりゃ、勧めることもできない。それに、どういう風に効くとか、どのくらい飲めば良いかとか、薬を作った俺が知らないで、どうやって飲んでもらおうって言うんだ。

 よし、飲もう。



 待った!

 もうすぐ夕飯の時間だ。その時、下痢していてトイレに入っていたら、夕飯を食べられない。それどころか、お腹が痛くて下痢をしているなんて母さんに言ってみろ。夕飯どころか明日の朝ごはんももらえない。別に腹が空いてないわけじゃないんだ。便秘薬飲むだけなんだ。

 そうか、それだったら夕飯の後に飲むか。

 俺はベッドにゴロゴロ転がりながら、そんなことばかり考えていた。

「ジクムント、ご飯よー!」

 良い匂いがしてきたと思ったら、早速夕飯だ。

 今夜はカレーだな。

 カレー・・・

 便秘薬を握りしめてカレーを想像する。

 う、いかん。想像しちゃいかん!なんだ、メシくらい美味しく食わなきゃ。

 俺は食卓についた。いつも通り、カレーはうまいと言いながら、めっちゃ速攻で食った。怪しまれないように2回もおかわりをしておいた。おかしくないよな?普通だよな、俺?

 カレーを食って、片づけを手伝って、食後に暖炉の前で家族でゲームの続きして(これってウチだけか?食後はゲームだよな)そんで、寝支度をした。



 ベッドに入ってゴロゴロして、そしてついに時は来た!

 便秘薬を飲む時間だ。今飲んで、夜中に薬が効いてきても、夜ならトイレを占領しても大丈夫だろう。時間はたっぷりある。

 よし、飲むぞ。

 いやちょっと待て。どんくらい飲むんだ?直径5ミリ程度の丸薬が手元に100粒以上もある。さすがに全部飲むのはやめておこう。ああ、こんなことなら、どのくらい飲めば良いのか、あの魔女の本に書いてないかフィデリオに聞いておくんだった。だいたい、なんでフィデリオはあんな本が読めるんだ。俺も読めれば良かったのに。

 まあ、しょうがない。とりあえず、まずは効き目を知るために一粒だけ飲んでみようか。

 それで効き目がなければ、明日また少し増やしてみる。それが良い。

 俺は丸薬を一粒手のひらに乗っけた。我ながら良い出来だと思う。さすが魔女のレシピと言ってしまえばそれまでなんだろうけど、それにしたって素人の子どもの俺が作って、こんなふうにできるとは思わなかった。

 口に入れて、水で流し込んだ。

 ごっくん。

 緑の葉っぱの優しい良い香りがした。

 さあ、どうなるか。わくわくドキドキしながら、俺は横になった。



 うとうとと眠っていたらしい。気が付くと、時刻はもうすぐ12時になるころだった。薬を飲んで2時間半くらいか。

 俺は便意を感じた。

 来た!

 しかし、そんなに強い便意ではなかった。お腹がひっきりなしにゴロゴロ鳴ってはいるが、痛くはないし、我慢できん!というような感覚もない。

 でもそろそろトイレに行っておいた方が良いだろう。

 トイレに行き、数分後部屋に戻ってきた。

 トイレ内のことを詳しく説明するのは避けよう。ただ、ひと言説明するなら、俺は数分で戻ってきて、このまま眠れそうだ、ということだ。

 腹は痛くないし、あれだけカレーを食べたのに、すっきりとしている。一粒でこの効き目?と思うような、い~感じに爽快だった。

 これはイケるんじゃないだろうか。俺は、明日アデーレに何て言ってこの薬を渡そうかと考えながら、それでも眠気に負けて、すぐに眠ってしまった。



 次の日の朝になった。

 目覚めも爽快、そしてその後のお通じも爽快だった。まだ残ってたのか。昨日の夜あれほど出したのに、すごいもんだな。

 そんなことはどうでも良い。

 俺はすぐにでも、この便秘薬をアデーレに届けたかった。朝食を食べ終わって例の薬を持って速攻家を出た。

 しかし、道々考えた。何て言って渡すんだ?

『アデーレさん、コレ、俺の気持ち、飲んでください。』

 じゃ、ないよな。

『これ、便秘薬、俺が作ったんだ。』

 って言って、飲んでくれるか?子どもが作った便秘薬。普通飲まないよな。

『よく効く便秘薬、もらったんだ。』 

 ・・・誰にだ。ウソはいかんだろう。

 うわー、ホントどういう風に言ったら良いのか分からない!俺は頭を抱えて、のた打ち回った。子どもの俺に良い考えなんてひとつも浮かばない。

 だいたい、俺より4つも年上のアデーレが、俺みたいなガキに便秘であることを知られているってだけできっと屈辱だよな。便の秘密で「便秘」だもんな。って、意味が解らん!

 俺がアデーレの便秘を知らないふうを装って、なおかつ自然にアデーレに便秘薬を渡すなんて不可能・・・と、待てよ?アデーレの家のお店に置いてもらえば・・・いやいやいやいや、無理か。文房具店に便秘薬って置かないよな?いや、待てよ?学校関係のものなら結構置いてあるから、置いてくれるかも?お菓子もあるし。

『この薬、店に置いてもらえないかな。よかったらアデーレさんも、試してみてよ。』

 って、俺が一体何者なんだー!しかも、お菓子の横に便秘薬ってあり得ない。



 なーんて、一人でグダグダ考えながら歩いていたら、すぐにアデーレの家に着いてしまった。そうだ、お店の方におばさんがいるかもしれないから、おばさんに渡してもらうってのはどうだろうか。ウチの母さんがくれた、とか言うか、あ、でもやっぱりウソはダメだよな。

 うーん。と、悩みながら、お店の方を見てみた。

 ドキーン!今日の店番アデーレじゃん!最近時々いるんだよな。それで、ウチの学校のヤローどもがみんなアデーレ目当てで、無駄に鉛筆買いに来るんだぜ。俺もそうだけど。だけど、今日は冬休みだからか、お店はヒマそうだ。アデーレは一人だ。

 そう思ったら、ついお店に足を踏み入れてしまった。

 俺は消しゴムを探す振りをしながら、アデーレをチラ見。ふう、今日も可愛いぃー!ちょっと気が強そうな目をしてるけど、とにかく美人なんだよ。そう言えば、フィデリオはアデーレのこと苦手って言ってたな。なんでだろ?ま、いいや。

 えっと、消しゴム消しゴム。コレでいっか。いつも使ってるのが良いよな。

「これください。」

「はい、いらっしゃいませ。」

 うおう、可愛い~!

「あ、ニキビ。」

 ヤベ、心の声、出ちゃった。だって、目だったんだもん。

「そういうこと、言わないのよ。はい。」

 そう微笑んで、アデーレは消しゴムを袋に入れて渡してくれた。お金を払って店を出てきて、俺はボーっとしてしまった。

 あーあ、いつもあんなところでヘマしないんだけどな。なんか急にニキビが目に入っちゃったんだよな。ニキビなんてあったって、可愛いのに。

 俺はクネクネと悶えながら、店の裏の、家の方に歩いて行った。

「それにしても、おっきなニキビだったな。なんか変なもん、食ったのかな。」

 お店の方にアデーレがいたことで、俺はおかしくなっちゃってて、歩き方がクネクネしちゃってるうえに、思ったことがまた口から出てしまった。いかん、どうした俺!

「しょうがないんじゃ。年頃になると、ニキビも出るもんじゃ。」

 急にしわがれた声が聞こえて、俺は飛び上がった。

「ひゃあ!」

 よく見ると、アデーレのおばあちゃんが店の裏に椅子を出して日向ぼっこしていた。小さくて視界に入らなかった。いやちょっと待て、今の俺の挙動不審行動、逐一見られていた!?

「おまけに、便秘ときては、ニキビも出やすくなる。」

 おばあちゃんはあんまり俺の変行動は気にならないらしい。

 サラリと重大情報を言ってのけた。

「便秘?」

 俺はおばあちゃんに目線を合わせてしゃがみ込んだ。

 すっかり忘れてた。ここに来た目的は消しゴムを買うことじゃなかった。おばあちゃん、ありがとう!



「おばあちゃん、俺、便秘の薬持ってるんだ。アデーレにあげてくれない?」

 俺はポケットから10粒ばかり紙に包んだ丸薬を取り出して見せた。

「なぁんでお前さんが便秘の薬なんぞ、持ってるんじゃ。」

 おばあちゃんはケタケタ笑った。

「あのさ、実はさ、魔女の本を調べて、その通りに作ったんだよ。俺が作ったから、魔女が作ったほどは効かないかもしれないけどさ、俺も飲んでみたけど、多分わりと大丈夫だと思うんだよね。だから、良かったら飲んでみてくれない?」

 おばあちゃんはメガネをかけ直して、その丸薬の包みを開いた。それから、ふんふんと臭いを嗅いで、小さく頷いた。

「お前さんが作ったのかい?魔女の薬と同じ匂いがする。大したもんじゃ。」

「おばあちゃん、魔女の薬知ってるの?」

 おばあちゃんはカカカと大笑いをした。

「そりゃー、お前さん。私も若いころは魔女の薬のお世話になったもんじゃよ。魔女はいなくなったがねぇ、薬は残っていたからね。その薬ももうなくなっちまったが。いや、お前さんが作った薬は、あの薬と同じ匂いがするからねぇ。もしかすると効くかもしれんよ。」


♪魔女の薬は花の香り、母の心を和らげる

 魔女の薬は野の香り、人の命の力となる

 魔女の薬は木の香り、父の力を強くする

 水薬には月の光り、人を導く仄かな光り

 水薬には日の光り、心に届く暖かな光り♪


 おばあちゃんはゆっくりと静かに歌っていた。懐かしいものをその目の奥に映しているみたいな、優しい目をしていた。

「その歌教えてよ。」

 俺はしばらくおばあちゃんと一緒に歌を歌ってすごした。魔女の薬のことを知っている人がまだいるんだと思うと、俺はすごく嬉しかった。

 それからおばあちゃんは、この薬をアデーレに届けてくれると言って受け取ってくれた。良かった。この薬が効いて、アデーレの便秘が治ると良いな。

 帰り道、俺は、アデーレの便秘が治ったかどうかを知るにはどうしたら良いか、また妄想の中をクネクネと歩いて行った。


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