第11話「”独り”の決意」
桐野がいなくなってしまった美月は…?
今回は短めです。
気付くと、朝になっていた。目覚まし時計はまだ鳴っていない。いつ寝たのかさえわからない。
昨日、あのまま泣き続けた私はそのままフラフラと帰宅した。だが帰って何をしたとか、いつ寝たのかも覚えていない。
「そうか…私…」
そして、またあの背中を思い出す。自分のせいで失ってしまった信頼。私に勇気をくれた存在はもう手の届かないところに行ってしまった。
そう思うとまた涙が零れた。
「…学校…行かなきゃ…」
目元の涙を拭って、私は支度を始めた…。
「やっぱりいないか…」
昼休み、放課後といつもの時間になっても先輩はいなかった。やっぱりもう会えないんだ…そう思うと、また胸が苦しくなる…。
(でも…やっぱり私のせいなんだよね…)
先輩は私を「見込み違い」と言っていた。それは私には他の人にはない”何か”を感じ取ってくれていたということなのか…いまの私には知る術はない。
ただ、昨日なんであんな軽い気持ちで告白なんてしたんだろう…と今さらながらに後悔していた。
あれは先輩にとっては侮辱と同じ…いや、それ以上に酷いことだと…そんなことよく考えれば簡単にわかったはずなのに…。
「先輩…」
今はもう遠くなってしまった先輩の姿を思って、私は1人、呟いた…。
「美月…その…ゴメン。私、こんなつもりじゃなかったのに…」
今日はなんだか時間の感覚も曖昧だったような気がする。気がつけば放課後で、フラフラと帰路についていた私を見つけた真梨ちゃんが慌てて駆け寄ってきたのだ。
私が昨日のことを話すと、真梨ちゃんは頭を下げて謝った。
「いいよ…真梨ちゃんは悪くない」
告白すると決めたのは私だ。だから真梨ちゃんは何も悪くない。けれど真梨ちゃんは納得していないようで
「でもっ…! こんな終わり方、悲しすぎるよ…!」
「うん…でも、仕方ないから…」
先輩の気持ちを考えてあげられなかった。両親の本心を悟ってしまった、そのことを話す時の先輩は本当に辛そうだったのに…私はそれと同じ事をしてしまった。
「嫌われて当然のことを…私はしたんだから…」
「美月…」
俯く私に、真梨ちゃんはまだ何か言おうとしたけど、それは堪えてくれたみたいだ。
「…私ね、先輩のおかげで勇気が出たんだ…」
「えっ?」
私は息を吸い込んで、そして
「…真梨ちゃん。私ね、本当はまだ友達なんていないんだ」
真実を、口にした。
「…美月っ! どうして言ってくれなかったのよ!?」
「…ごめん」
私が学校で嫌がらせを受けていることを聞いた真梨ちゃんは、まず最初にそう叫んだ。
「真梨ちゃん、中学校の時も私のこと助けてくれてたでしょ? だから、心配かけたくなかったの…」
「バカッ! 私たち友達でしょ!?」
「うん…ごめんね…」
真梨ちゃんはいつもこうだった。明るくて、いつも私のこと助けてくれて…私のことは、まるで自分のことみたいに感じてくれた。
「真梨ちゃんは…本当に大切な友達だよ」
「当たり前でしょ…バカ…」
でも、だからこそ、いつまでも頼りたくはないんだ…。
「…私、決めた」
「え…?」
私には先輩にもらった勇気がある。こんなにも私のことを思ってくれる友達もいる。だから、私は前に進める。…そう思えた。
だから…
「先輩はもういないけど…1人で、頑張ってみるよ…!」
私が始めて戦う決意をした瞬間だった。
「でもっ…!」
真梨ちゃんはまだ心配そうに私を見ている。
「大丈夫。私、もう逃げたくないから…。でもどうしても1人じゃ辛いときはちゃんと言うよ」
私はそう言って優しく微笑む。真梨ちゃんはそんな私を見て
「そっか…。うん、わかった。無理だけはしないでね」
そう言って、微笑み返してくれたのだった。
次話への繋ぎのつもりが短くなってしまった…。
次回はちゃんと(?)長めにするんで期待していてください。