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婚約破棄されましたが、最強のお兄様がただでは済ませません  作者: 百鬼清風
第二部 竜姫の報復

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第20章 竜帝国最強戦士1

 深夜、リゼリアはヒューの屋敷を抜け出し、門の外へ出た。門扉を閉めて道を確かめると、向こうから超高速で五つの人影が近づき、リゼリアの前に並んだ。

 顔も、身に着けた物も見えない。闇魔法で姿を覆っているため、見えるのは人の形をした黒いシルエットだけだった。


「揃ったわね」


 五人はリゼリアの前で足を止め、頭を下げた。

 彼等は、リゼリアの考えに賛同する竜人の中で最も強い五人の戦士だった。亡き兄に仕えていた者もいる。皇帝が王国との融和を選んだ後も、こうして彼女のもとへ来た者達だ。

 この五人なら、アーサーを討てる。さらに、王国の要人達を暗殺するのもたやすい。


「アーサーと、この国の要人達を殺しなさい。エルデン王国が、今までと同じ力を保てないように」


 一人が顔を上げ、答えた。


「直ちに取りかかります」

「ええ。頼んだわ」


 五人は一礼すると、門前を離れた。それぞれ別の方向へ一瞬で飛び去った。

 リゼリアは全員が消え去ったのを確認し、門を開けた。自分が人質として暮らす家へ戻り、門扉を閉める。

 明日も、学園では普段どおりに振る舞う。今は彼等に任せ、自分の命令が露見しないようにするだけだ。



 門が閉まる音を、アグネスは屋敷の窓辺で聞いた。明かりを消した室内に立ち、少し開けた窓から、リゼリアが玄関へ戻っていくのを見送る。

 王女が五人へ下した命令は、全て風系の上位音波感知魔法ウィスパー・サーチで聞き取っていた。その能力は、ジュリアン以上だ。

 姿を隠した相手は五人。姿や誰なのかまでは分からない。けれど、殺す相手にアーサーの名や国の要人を挙げたことも、命令を受けた五人がすぐに散ったことは、聞き違いではなかった。


 リゼリアが屋敷へ入った後、アグネスは窓を閉じ、アーサーへ送る短い手紙を書いた。リゼリアが命じたことと、五人が行動を始めたことを記し、侍女としてヒューの屋敷に移動していたクララに渡す。


「アーサーへ至急渡してちょうだい。朝まで待ってはいけないわ」

「かしこまりました」


 クララの乗る鹿毛の馬を裏口で見送ってから、アグネスは廊下へ戻った。明日の朝も、リゼリアにはいつもどおり声をかける。そのために、今夜の外出に気づいたと悟らせるわけにはいかなかった。

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