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雨宮くんと櫻木さんがイチャイチャ(※自覚無し)でお送りする青春応援委員会!!  作者: いちごモンブラン


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喪失

「ほらっ…最期にお別れをしましょう…。」


 後日、お兄ちゃんの病室を訪れた時には、そこにはお兄ちゃんだったものがありました。こういう言い方は失礼かもしれませんが…。


「御免ね…まだ分からないよね…御免ね…。」

 

 仕切りに謝る看護師さん…。顔には布が被され、横たわる大事だった人…。こういう時には普通、取り乱したりするものなのでしょう…。付き添いに来ていた看護師の方は私が理解出来ていないと思い、謝罪をしているのだろう…。

そう感じていましたが、私は違いました。理解出来た上での態度だったんです。

 もう大事だった人は居ない…。私は置いて行かれたのだと…。

 楽しかった日々…。茜さんとお兄ちゃんの他愛もない会話…。それらが、頭の中からつま先までぐるぐると渦を巻いているようで気持ちが悪かったです。


「じゃあね…。お兄ちゃん…。」


 口から出た言葉は目の前の故人だけに放たれただけでなく、記憶、人生、それら全てに対してのものでした。


 それからというものはあんな事が無かったかのように私は元気になりました。病院の方々は不思議がっていました。今まで、こんなことは観たことがないって…。

 ただ、一つ気になる事があったらしく…。

 

「香織ちゃん…元気一杯だね…。あんな事があったから心配してたんだよ…。」


 恐る恐る看護師さんが尋ねてきました。ですが、私は……。


「……?何の事……?」


 私は記憶を無くしていました。お兄ちゃんだけではなく、茜さんや彼らを取り巻く環境を忘れていたんです。

 直ぐにお医者様に掛け合ったところ、一次的なショックで記憶が混濁していると言われたそうです。


 「あまり無理に思い出さない方が良いかもしれない…。それくらいショックだったということだ…。」


 皆が相談して、私には話さない事に決まりました。

 その日からお兄ちゃんも茜さんもこの世界だけじゃなく私の中からも消える事になったのです。


 ……いえ、一つだけ憶えている事がありました。…演劇の事です。演劇だけは忘れる事はありませんでした。頭の中に靄が架かっていたけど、確かに誰がと約束していた。不思議な事にそれだけは憶えていました。

 私は演劇の本や映像を齧り付くように見ました。演技のレッスンには通う事は出来なかったので、それらを使って独学に演技法を学んでいったんです。そのお陰もあり、同年代の子達と比べて演技が上手くなったと思います。

 時々、どうしてこんな努力までして、俳優を目指しているのか分からなくなる事がありましたが、当時の私はそうしなければいけない気がしたんです。

 小学校を卒業する年くらいになった頃には、もう入院をしないくらいに身体は強くなっていました。

 幸運な事に地元の中学校には演劇部がありましたから、漸くちゃんと演技が出来ると意気揚々としていました。

 なぜ、その道を志したのかを忘れたまま…。


 演劇部に入った私は自分で言うのもなんですが、直ぐに頭角を表しました。言い方は悪いかもしれませんが、子役の劇団でも有りませんでしたし、特別強豪校という訳でもない平凡な部活動で、何となく劇をやってみたい!みたいな志望理由な子が大半でしたから…。その為、同級生からは次期エースだ!なんて囃し立てられたりもしました。

 

「花宮さんは凄いね!私達と同じ初心者なのに。」

「そんな事無いよ…。小さい頃から病院に居る事が多かったから、その時間を演技の勉強に費やしてただけだよ…。」

「謙遜する事無いって!正直花宮さんがこの部活で一番上手いんじゃない?…って断言出来る程私、演技の事分かんないんだけど!!」

「はは……。流石に過大評価じゃないかな。」

「全く!…いいな。私もそれくらい上手かったらな〜…。ねぇ…花宮さんが演技を始めた理由って何?」

「…それがねぇ…、よく憶えてないんだよね。何か小さい頃に演劇の映像を観た?みたいな事をお母さんが言ってたんだけど、なんかハッキリしなくて…。」

「ふーん。…あっ!そういえば、次演る劇の配役、この後発表するんだよね?。」

「顧問の先生が言ってたね…。緊張するなぁー…。どんな役を演るんだろ…。」

「花宮さんなら大丈夫でしょ。きっと名ありの良い役に決まってるわ!…もしかしたら主役だってりして…。」

「まさかー……。」


 そんな話をしていると、ガラガラとドアを開けて、顧問の先生が部室に入ってきました。私達やその他の部員達も一斉に黙り、入って来た先生に視線が集まります。配役が発表される時は何時もこんな感じでした。

 先生は各々の顔を見て……。


「…えぇー…これより、定期公演の配役を発表します。」


 そう口にした瞬間、緊張が走ります。何度か経験しても慣れません。

 ごくり、と喉が鳴る音が聴こえ、部屋の温度が上がる気がしました。


「まずは……。」


 次々と役が決まる中、私の名前はまだ呼ばれません。


「最期にこの劇の主役を花宮にやって貰う。」


 その日、私は初めての主役を演じる事になりました。

 身体を駆け巡る充実感に打ちのめさて、ガッツポーズをしそうになったその時……。


「納得出来ません!何で花宮なんですか?」


 そう叫んだのは3年生の先輩でした。


「あまり、こう言う事はよくないかもしれないが、花宮ならこの役を完璧に演じられるからだ…。」


 私は気になって、配役を確認しました。その役は………。


「…これって…病弱なヒロイン?」


 この役が、私の運命を決定付けるものとなりました。









 

 



 









 


 




 


 


 


 

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