青春応援委員会
「僕と付き合ってください‼️」
――他の誰も居ない教室に声が響き渡る。
放課後、二組の男女が運命の瞬間を迎えていた。
外からは部活動の練習声やこれから帰ろうとしてあえる生徒の声が良く響いてくる。まだ夏前だというのに教室がやけに暑く感じる。
この学生ならば誰しも緊張するであろう場面、それを教室の外から覗いているこれ又、二人の下世話にしか見えない男女がいた。
「ちょっと見えない。」
「うるさい、今良いところなんだから。」
ドアの隙間から年頃の男女が、覗き見をしているこの状況。
お世辞にも褒められた行為とは思えないが、勿論理由がある。
息を飲む静寂、告白した本人はきっとこの時間が永遠にも感じているのだろう。今にも吐き出してしまいそうなこの空間、その静寂を女生徒の綺麗な澄んだ声が遮った。
「私もあなたのこと、ちょっといいなって思ってたの…。」
頬を染めたその顔には先の展開を容易に予測させた。
「つまり、それって‼️」
「私で良ければお願いします。」
「やったー‼️俺の方こそ宜しくお願いします。
」
喜びを身体で表現している男子生徒。それを覗いていた男女も顔を見合わす。
「これで依頼完了!!」
二人はガッツポーズを交わした。
これが、この学園の生徒の生活を陰ながら応援する活動。通称、青春応援委員会である。
「いや〜、上手くいって良かったなぁ〜。」
「それはそうだけど、結果論でしょ。」
活動を終えた二人は学校から家路に向かう途中に言い争いをしていた。これも珍しくもない当たり前の景色だ。
「そんなことないぞ。俺に掛かれば余裕よ。」
そう豪語するのは少し髪の長い男子生徒、雨宮俊哉。
「また、そんなこと言って…。結構ギリギリだったからね。」
雨宮くんを叱っている女生徒は櫻木栞。青春応援委員会はこの二人で構成されている。
「いい?依頼だって多くはないの。一つ一つ丁寧に…」
雨宮くんは櫻木さんの小言を耳を塞ぐ仕草をしながら受け流した。
「ちょっと聞いてないでしょ。馬鹿にして!!」
そんな態度をする雨宮くんに対して櫻木さんは酷くご立腹のようだ。
「だいたいこの依頼を受けようと言ったのは栞の方だろ?実の所、俺達には向いていないと思うぞ。」
「分かってるけど放って置けないでしょ。私達を頼りにしてきてくれたんだし。それにやっぱり恋愛絡みの依頼が一番多いんだし…。」
「致命的だよな。こんな名前の…一様、部活動なのに恋愛事の依頼が苦手なのは。」
雨宮くんは下を向いて歩く。その足取りには、真に自分の能力不足を嘆いているようにも見えた。
信号待ちをしている中、項垂れている背中はとても依頼を成功した姿には思えない。
「でも…、あんな風に頼られたら頑張るしかねぇよな!!」
信号が変わるのと同じくして、上げたその顔には矜持が見てとれた。この切り替えの早さも雨宮くんの魅力なのかもしれない…。彼にはいろいろな魅力があるが、それを一番そばで見れることを嬉しく思う。…後は鈍感なところを直せれば言うこと無しなんだけどな…。
そもそものことの発端は一週間前まで遡る。
「告白を手伝って欲しい?」
放課後、何時ものように栞と二人で部室で駄弁っていると同じクラスの山本が尋ねて来た。
「そうなんだよ、俺さ3組の佐藤さんのこと好きになったんだよ。」
「佐藤さんて、あの佐藤さん?」
隣で一緒に依頼を聞いていた栞が答える。
「そうそう。あの佐藤さんで間違いないと思うよ。」
「高嶺の花だねぇ。」
栞がお茶を飲みながら、染み染みとした声を出した。
佐藤さん…佐藤梓さんは学年でも指折りの美人で有名人だ。この学年、この学園の男子に美人は誰かと聞いたら、間違いないなく名が挙がるだろう。
「俺、この前の選択の授業で佐藤さんと一緒になってさぁ、一緒に自画像を描きあったんだ。しかも!佐藤さんの方から誘われたんだぜ!」
山本は自慢気に話を続けた。恋愛絡みの依頼はこれだから疲れる。
「これはもう告白するしかないでしょ。でも俺なんかが佐藤と釣り合う訳ないし、自信がなくて…」
さっきの姿が見る影もなく、みるみる沈んでいく。
「そんなとき友達から聞いたんだよ。悩んだ時に力になってくれる怪しい部活があるって…。」
「怪しい部活って…、友達に伝えとけ、こちとらこれでも一生懸命やってるっの…。」
そんな風に思われてたのか…。軽くショックだ…。
「分かってるよ。今話してそれは分かった。」
「雨宮くん、脱線してるよ。」
栞が静止する。いかん熱くなってしまった。
「ごめん。話を続けてくれ。」
俺は咳払いをして、心を落ち着かせる。
「つまり、山本くんは告白する自信を付けたい、そういう依頼でいいのかな?」
栞が纏めると、山本がこくこくと頷く。そういうことなら話が早い。
「そんなことできるのか?」
山本が怪訝な顔をして尋ねる。
「それはお前自身の問題だ。俺達がやるのはあくまで手伝い。これは憶えておけ。」
自信満々に答える俺に、山本は拍子抜けしたような顔をした。栞と顔を合わせて頷く。
「じゃあ、依頼内容は山本に自信を付けさせる。それでいいな。」
俺は内容を復唱し、最後の確認をする。
「よろしくお願いします‼️」




