第562話 骨になっての再会
引き抜いた大剣の剣先を下に向け持って静かにクレアは前方を見つめている。ガガガという音がして砦の道に響く。石畳みの道が一部が盛り上がって蛇行しながら近づいて来ていた。
クレアたちの手前五メートルほど距離で近づいて来ていた、石畳みの道の盛り上がりが止まった。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
土煙が舞う大きな音がする。裾が破けた黒コートを羽織り、ボロボロの黒いズボンに黒いツバが広い帽子を被った骸骨が石畳みの道からせり上がって来た。骸骨は大きく五メートル近くあり、右手に幅の広いサーベルを持ち、頭部の左目の空洞の上に薄ら汚れた眼帯がつけられ胸元に二つ目に紫色の宝石がついたどくろの首飾りがかけられていた。
「なによあれ……」
「でっけえ骸骨だべな」
現れた巨大な骸骨を見上げつぶやくララとラピだった。クレアはジッと骸骨を見つめ首をかしげた。
「あら!? もしかしてキャプテンザサントスさんですか…… 久しぶりですね」
骸骨に笑顔で親し気に話しかけるクレアだった。
「なに? クレアの知り合いなの?」
「はい…… 昔ここの海賊団の頭領ザサントスさんです。ちょっと大きいですけどあの首飾りは間違いないですね。あの時にしっかり胴体と頭を切り離したんですけどね」
懐かしそうにクレアは骸骨に視線を向けていた。現れた骸骨は元は砦を根城にしていた海賊団の頭領ザサントスどいう男だった。
ララは視線をザサントスに戻した。右手をあげララは手を軽く半回転させる。ララの手の動きに呼応して、浮かんでいた銀の短剣がザサントスへと向けられた。
「ふーん。じゃあ…… 今度は私がやってあげる」
「おっおい。待つべ!」
一人で駆けだしてララはザサントスへと向かって駆けていく。ラピがララを追いかけていく。クレアの横を二人が通り過ぎて行き二人はザサントスへと近づく。
「ララちゃん! ラピちゃん! もう!」
クレアは二人を追いかけて行くのだった。駆け出したララはザサントスとの距離を一気に詰めていく。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
接近するララに反応しザサントスはサーベルを振りかぶった。細長い影がララを覆う、彼女はニヤリと笑って指を右手の指を二本立てて下に向ける。
二本の短剣がララの足元へと飛んで来る。ララは駆けながら短剣の上に足を乗せる。同時に立てて指を上へはねるように動かした。銀の短剣が乗っているララと一緒に浮かび上がっていく。
「ウッウガアアアアアアアアアアアア!?!?!?」
ザサントスが慌てて様子でララに向かってサーベルを振り下した。
「よっと!」
右手をララが手を横に滑らせるように動かす。ザサントスのサーベルが彼女の横を通り過ぎていく。
「おぉ! すげえべ!!」
飛び上がりサーベルをかわすララにラピが声をあげていた。ララは得意げに笑い彼女は迂回しながらザサントスの背後へと回り込む。
「へへへっ! こうすれば私もうまく飛べるもんねえ! 食らいなさい!!! えっと…… こう!!」
両手を上げて頭上で合わせるララだった。勢いよく合わせて両手がパチーンと音を立てた。彼女の周囲を飛んでいた銀の短剣が一列に横に並んだ。短剣が白く光り出しつばにから光線が伸びていき、ずらっと並んだ短剣が一直線につながる。
「トオリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ララは合わせて両手を右から左へ動かした。彼女の手の動きに合わせた長い棒になった
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
背後から足を払われザサントスはバランスを崩して背中から倒れた。大きな音を立て倒れたザサントスを見てララが口を開く。
「どう!? これが私の実力よ! さぁ! 終わりするわよ! ラピ!!」
「任せるべ!!!」
返事をしたララは地面を強く蹴って飛び上がった。彼女は棍棒を振りかぶりザサントスへと向かって行く。金棒を振りかぶったラピの視線がザサントスの頭部をしっかりと捉えている。
「えっ!? まっ待つべ!!???」
ザサントスの眼帯が上へめくれるて、左目の空洞が覗く。左目の奥が強く紫色に光ると、光線が飛び出した。一直線に紫色の光が上空からラピへと向かって飛んで来ていた。
「クッ!!」
光線が届く直前にラピは金棒を水平にして体の前に持って行き光線を防ぐ。
「えっ!? うわああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ラピーーーーーーーーーーーーー!!!!」
光線の威力に押され防げずにラピは金棒を水平に持ったまま上空へと戻されていった。さらに威力を強めていく光線に耐え切れずにラピは吹き飛ばれてしまった。
「ふぎゅ!!!」
ラピは背中から強く石畳みの道の両脇に建つ家の壁に叩きつけられてしまった。右手に持った金棒が手をはなれ地面へと落ちて回転して転がっていった。衝撃でラピは壁にめり込んでいる。
「ウガアア!!」
ザサントスは立ち上がるとラピへと向かって駆け出した。ドスドスと音を立てラピがいる建物の前に向かう。
「まっ待ちなさい!」
慌ててララもザサントスを追いかけて飛んで行く。高速で飛行しザサントスへと迫る、ララは合わせた両手を振りかぶった。並んだ銀の大剣がララの背中の後ろで垂直に浮かぶ。
「わっ!? 私が…… えっッ!?」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
ララの接近に気づいていた、ザサントスは彼女が近づくと即座に振り向いて、横からサーベルでララを斬りつけて来る。
「クッ!!!」
必死にララは両手を横へ持って行く。つながった銀の短剣が向かって来るサーベルの前へと移動し防ぐ。大きな音がしてララのつながった銀の大剣とザサントスのサーベルがぶつかる。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
サーベルがつながった銀の短剣を破壊した。バラバラと崩れ落ちて地面に散らばる。ララは衝撃気吹き飛ばされ地面に落下し叩きつけられてしまった。
「クッ! まっまだよ…… えっ!? うそ! 間に合わない……」
顔をしかめ両手を石畳みの道につけ顔をあげたララが目を大きく見開いた。ララの目の前にザサントスが迫って来ていた。ザサントスがサーベルをララに向かって振り下した。
「ヒッ!!! イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
両手を前に出して顔を覆って悲鳴を上げるララだった。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「えっ!? クックレア……」
ララの前にクレアが立っていた右手に持った大剣でザサントスのサーベルを受け止めていた。
「ほっ!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
クレアが軽く右手に力を込めて押し返した。ザサントスの右腕は勢いよく上に押される。押されたザサントスの右腕は背中まで持って行かれ、後ずさりしバランスを崩して尻もちをつく。
「私の大事な妹に触らないでください…… まったく」
クレアは尻もちを着いたザサントスを睨みつけた。彼女はすぐに振り向いララを見た。
「もう…… 勝手に行ったらメッですよ」
「うぅ…… ごめんなさい……」
優しく叱るクレアに素直に謝るララだった。クレアは優しくほほ笑みしゃがんで左手で彼女の頭を撫でる。
「ウガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
声を上げてザサントスが立ち上がった。クレアは立ち上がり前を向いた。
「ラピちゃんを連れてグレン君のところまで戻ってください」
「わかった……」
顔を横に向けララに指示をだすクレアだった。ララは両手をついて立ち上がり地面を蹴って飛んでラピの元へ向かう。
「ふふふ。大分素直になりましたね。姉である私の教育が良いからですね…… さて」
飛び去るララの背中を優しいほほ笑みでクレアが見送るのだった。尻もちをついていたザサントスは左手をついて静かに立ち上がるのだった。




