第408話 新人を迎えよう
聖堂から出たグレン達はスノーホワイトの中庭を歩いていた。ちなみに聖堂の扉の中では彼らについて行こうとするオフィーリアを必死にメルダが押さえつけている。
歩きながらグレンは顎に手を置いてつぶやく。
「次は天井監視所か…… 遠いな」
「そうですね。すぐにプリシラさんに船を手配してもらいましょう」
グレンの言葉にクレアが反応する。天井監視所があるセントリバリティ山脈に向かうには、運河から北へ向かう船に乗る必要がある。話を聞いていたララが首をかしげてクレアとグレンに尋ねる。
「すぐ出発するの?」
「いえ。今から船の手配をしてもらっても出発はできません。今日はここで休みます」
「そうですね。移動の疲れもありますしまずは休養ですね」
クレアの言葉にキティルが同意した。ララは面白くなさそうに地面を蹴った。
「なんだつまんない」
「しゃーねえべ」
休みと聞いて残念がるララをラピが慰めるように、彼女の手に置いて声をかけていた。二人を見るクレアは優しくほほ笑み声をかける。
「ふふふ。まぁ…… でも今日はお楽しみがありますよ」
「そうだな。キティル? 手配は出来ているな?」
「えぇ! 貸し切ってますよ!」
クレア、グレン、キティルの三人が笑いながら楽しそうにしている。ラピは首をかしげ、ララは自分を置いて盛り上がる三人をどこか不服そうに見つめていた。
「なっなによ。お楽しみって?」
三人に向かって少し大き目な声で尋ねるララだった。グレンは振り向いてララの前にしゃがんで彼女の頭を撫でる。
「歓迎会だ。新人ハンターのな」
「えっ!? 私達の?」
自分を指さして嬉しそうに笑うララにグレンは小さくうなずいた後…… 怪しく笑って立ち上がり視線をラピに向けわざとらしく気まずそうな表情を浮かべる。
「いや…… 正確には正ハンターラピの歓迎会……」
「キッ! グレン! 嫌い! この!」
「おっと! 当たるかよ。《《見習い》》ごときの攻撃が!!」
「キーーーーーーーーーーーー!!! 待てーーー!!」
ララはグレンのすねを蹴ろうとうしたが、素早く足を後ろにさげた。ララの足は空を切り、グレンは笑いながら見習いを強調し彼女をからかい舌を出し逃げ出した。怒って両手をあげてララが彼を追いあっける。
巡礼者が祈りを捧げているスノーホワイトの中庭で追いかけっこする二人をクレアが叱る。
「こら! 二人共! 静かにしなさい! 置いて行きますよ!」
グレンとララの二人を置いて三人は城門へ向かっていく。ララは慌てて振り向いて三人を追いかける。
「まっ待ってよー」
走るララの後ろを気まずそうにグレンが追いかけていくのだった。
グレン達はスノーホワイトから出て、地下街のハンター協会に戻って来た。
「お帰りなさい! もう準備は出来てますよ」
扉を開けるとプリシラが声をかけてきた。扉の向こうの酒場は丸テーブルを恥に寄せ、長方形のテーブルが中央に置かれ上には料理と酒が並び歓迎会の準備は万端だ。テーブルには三人の男女が居て談笑している。
グレン達が中央のテーブルに来ると、プリシラはテーブルに上に酒が注がれたグラスをキティルに渡し声をかける。
「じゃあ会長! 開始の挨拶をお願いします」
「えっ!? もう? まずは二人の紹介を……」
「それは後で! みんなお腹空かせてるんでさっさと始めましょう」
「もう……」
さっさと始めろというプリシラにキティルはあきれた顔をしてグラスを掲げた。プリシラはグレンとクレア、ララとラピにもグラスを渡す。先に居た男女三人もグラスを持つ。
「じゃあ…… ララちゃん。ラピちゃん! ようこそハンター協会へ!」
キティルの挨拶によって歓迎会が始まった。肉や魚や野菜やフルーツなどたくさんの料理が並ぶテーブルに一斉に手が伸びていく。
「うめえべ!!」
「うん! 美味しい!」
主役の二人は遠慮なく肉と野菜にかぶりついている。グレンとクレアとキティルは楽しむ二人をほほえましく見つめていた。
「こんにちは新人さん」
二人の背後から女性が一人話しかけてきた。ララとラピは食べる手を止め振り向いた。振り向いた付二人に紫色の短い髪にやや切れ長の目に小さなピンク色の唇をもつ凛とした女性が見える。彼女はヴァンパイアハンターのアウラだ。二人と目が合うとにっこりと微笑み彼女は名乗る。
「私はアウラよ。よろしくね」
にっこりと微笑み右手に持ったグラスを二人に掲げるアウラだった。貴族のような煌びやかな赤い裾の長いコートに身を包みコートの下には白い靴に黒のズボンを履いている。胸には銀色の胸当てを装備し、腰にレイピアと短剣をさして左手には羽根がついた帽子を持っていた。
「わっわたすはラピだべ」
「私はララよ!」
ララとラピはアウラに名乗る。アウラの後ろから男が近づいて来た。
「おう。アウラ! 抜け駆けはずるいぞ」
「いいじゃない。いつもは素早いのにのんびりしているあんたが悪いのよ」
「相変わらずきついな…… うちのお嬢さんは……」
笑顔でアウラに話しかける男、彼は目が細く糸目の長い髪を後ろに結び、一部の髪が頬の横まで伸びている。緑のズボンとフードがついた上着を羽織り、革の鎧を装備していた。彼は背中に弓を背負い腰にショートソードとさしている。腰の後ろには矢筒が付けられている。男はヴァンパイアハンターのアーロンだ。
アーロンはララとラピに視線を向け自分を親指を指した。
「俺はアーロン。アウラの相棒だ。よろしくな新人ども!」
「「はっはい」」
同時に返事をするララとラピに満足そうにアーロンはうなずいた。大きな影に覆われて視線を後ろに向けるアーロンだった。
「わたくしはダストンと申します。以後よろしくお願いいたします」
口をあけ天井を見上げるようにするララとラピだった。アーロンの頭の上から、角刈りで顎が四角い大柄の青いローブを着た男がしゃべりかけて来ていた。彼の名前はダストンという彼もヴァンパイアハンターだ。
「おい! 人の頭越しに会話するな! でかぶつ!」
「……」
「クソ!」
腕を組んで不服そうにするアーロンだった。ララとラピは急に先輩三人から話しかけられ困惑し緊張した面持ちで立っていた。
二人の横からグレンが近づいて来て三人をたしなめる。
「おいおい。みんな一斉にかまうなよ。二人はデュオだからな。お前らの相棒には出来ねえぞ」
「わかってますよ。先輩として挨拶しているだけですよ」
「どうだがな…… アウラはすぐにさぼろうとするからな」
「そうですね。グレンさんと一緒ですね」
「なっ!?」
グレンの横にキティルがやって来た。キティルはアウラたちを指してララとラピに口を開く。
「アウラさん、アーロンさん、ダストンさん。三人は上級ハンターよ。上級ハンターは四人しかいない優秀な人達なんだよ」
優秀と言われ恐縮する三人だった。キティルに続いてクレアがやってきて口を開く。
「後一人…… いますね。上級ハンターが……」
「あぁ。あいつは今の|ヴァンパイアハンター協会のエースだしな」
クレアの言葉にグレンが同意する。ララは首をかしげて周囲を見渡す。
「今日はいないの?」
「ごめんなさい。エースは任務中なんですよ」
笑顔でキティルがララの質問に答えた。エースと言われるハンターが不在で少し残念そうにするララだった。
「今日は会えないのか。残念…… エースかあ…… 会ってみたいね。どんなひとなんだろうね?」
「んっんだ」
目を輝かせエースハンターに会ってみたいというララに同意するラピだった。
「うーん。そうですね…… 良い人ですよ。後…… ラピちゃんとはすごい気があうかもですね」
「あぁ。そうだな」
「おっおらとか?」
「ふふふ。楽しみだね!」
ラピが自分を指して驚いた顔をしグレンとクレアは笑顔でうなずく。ララとラピの歓迎会は盛り上がり夜遅くまで続いたのだった。




