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第4話 冒険者の第一歩

 固い表情のエリィにカウンターの向こうから、緑の制服を着た茶色の髪の長い髪を、頭の後ろで一つに結んだした、幼い顔の女性が明るい口調でエリィに声をかけてくる。


「緊張しないで大丈夫だよ。僕は受付担当のパステルだよ。君の名前を教えて」

「エリィです」

「はーい。エリィさんと…… 字はこれであってるかな?」

「えっと!? その……」


 パステルは髪にエリィと文字を書いて見せた。エリィはそれを見て困惑して声がださない。彼女の後ろに並んでいたキティルが見兼ねてパステルに向かって口を開く。


「ごめんなさい。エリィちゃんは字が読めないんです。それで大丈夫です」


 申し訳なさそうにキティルは、エリィが字を読めないことをパステルに伝える。パステルはエリィにニコっと微笑む。


「そうなんだー。じゃあとりあえずこれで登録しておくから後から変えたければ言ってね」


 字が読めないことに恥ずかしそうにするエリィだった。ただ、頻繁にあることなのだろう、パステルは特に気にすること無くカウンターの下から蹄鉄の装飾が中央にある指輪をとりだした。

 顔を上げたパステルに並んでいるキティルとエリィが見えた。二人を見たパステルはもう一つの指輪を出す。


「二人はお友達でいいのかな?」


 キティルとエリィを手で指して確認するパステル。


「えっ!? そうです。私達は二人で冒険者になるためにここに来ました!」


 緊張しやや大きめの声でエリィが答える。キティルは恥ずかしそうにして、パステルはニッコリと笑いキティルに顔を向けた。


「そう。じゃあ一緒に登録するから君も名前を教えてくれるかな?」

「はっはい。私はキティルです」


 パステルに名前を答えるキティル、エリィの時と同じ用に紙に名前を書いて彼女がキティルに見せた。


「これで良い?」

「はい!」


 字が読めるキティルは、出された紙に書かれた文字を読んでうなずいて答える。パステルは指輪でさきほどエリィと書いた文字の上をなぞっていく。

 紙から文字が消えて指輪のリングにエリィと刻印された。パステルはそれを見て満足そうにうなずき同様にキティルと書かれた紙の上をもう一つの指輪でなぞる、エリィ、キティルと名前が刻印された指輪を二人の前に置く。


「これは冒険者の指輪。冒険者ギルドに所属する冒険者だと証明するもので、君達が担当した仕事の成果が魔法の力で記録されるんだ。とっても大切な物だから大事にしてね」

 

 指輪を受け取るエリィとキティル、パステルはカウンターの上に出されたエリィの手元に視線を向けた。エリィはぴっちりとした革の手袋をつけていた。

 楽しそうに指輪をはめるキティルの横でエリィは少し困った顔をしていた。彼女が指輪をはめるには手袋を外さないといけない。


「無理に指にはめなくてもチェーンや紐をつけて首や腰から下げても良いよ。はいこれ」

「わぁ。ありがとうございます」


 パステルは指輪に通せる細い紐をエリィに渡した。お礼を言って嬉しそうにエリィは紐を指輪に通して首からぶら下げた。

 緊張していたエリィの表情が少しだけ自信に満ちた表情へと変わった。


「登録はこれで終わりだよ。ようこそノウリッジ大陸冒険者ギルドへ。君達はこれで冒険者だ」


 パステルは両手を広げ二人を歓迎する言葉をかける。冒険者と言われキティルとエリィは少し恥ずかしそうにしていた。二人を見てパステルはほほ笑み話を続ける。


「まずはランクの説明するね。ノウリッジ大陸の冒険者ギルドは上からA1、A2、B1、B2、C1、C2、C3と七段階の階級に分かれてるんだよ」


 真面目な顔でエリィとキティルは、パステルの説明に聞き入っていた。


「ランクによって入れる地域や受けられる仕事が違うから注意してね。エリィちゃんはキティルちゃんが居る時は必要ないけど、字が読めないからもし一人で依頼を受ける時は必ず僕達に確認して自分に適してるか確認してね」

「はっはい」

「それに支援課の人が週に一回ここで字を教えてるからね。もし文字の読み書きが出来るようになりたいなら参加するといいよ」


 パステルは顔を上げて、右手を前に出して建物の入口に居るハモンドとグレンを手で指した。

 振り返ってエリィはグレンとハモンドを確認してすぐに前を向く。


「ハモンドは良いやつだけど…… 隣のは…… まぁいいや」


 グレンを見たパステルは眉間にシワを寄せた。エリィとキティルは反応に困って苦笑いをした。


「次はランクの上げ方だね。新人はみんな新人用のC3ランクからスタートだよ。新人から半年の間に成績によって受けられる昇級審査に合格すればC1に昇格して、審査に受からないとC2に自動で振り分けられるよ。昇格審査に受からなければずっとC2だから気をつけてね。後はランクごとに昇格審査を受けて合格すればランクは上がっていく」

「審査…… 大変ですね…… 大丈夫かな。私達できるかな……」


 説明を聞いていたキティルが不安そうにつぶやく。


「うーん。C3やC2クラスだと報酬は低くてテオドールや大きな町の周辺でしか仕事がないからね。副業でなら十分だけど冒険者として身を立てたいなら、最低C1にならないと生活は苦しいかな」

「はっはい……」


 うつむいて自信なさげに返事をするキティルだった。


「それと依頼には通常依頼と調査依頼があるんだ。通常依頼は自分たちで選べるけど調査依頼はこちらから対応する冒険者を指名するからね」

「指名って自由に受けられないんですか?」

「うん。調査依頼は大陸を統治するアーリア教会からの依頼だからね。新しく発見された遺跡や魔物を調査するから実力がある人を選ばないといけないんだ。ここは開発の途中の新大陸だからね。まだまだ未知の場所や遺跡がたくさんあるんだよ」


 ノウレッジ大陸はどの国にも属さず、世界最大の信者がいるアーリア教会が統治している。これは大陸が発見された直後に、魔族を率いる魔王ディスタードとの戦争があったためだ。戦争は人類の勝利の終わったが、世界の国々は疲弊し国力回復が優先され新大陸を開発するところではなくなった。

 ガルバルディア帝国、タイタロス王国、ウィンターツリー魔法王国、カイノプス共和国の四つからなる、”世界の四大強国”が協議をした結果、ノウリッジ大陸はアーリア教会の統治下となり、各国の進出が許されない共通中立地とされた。


「それって断れるんですか? 未知の魔物とかって…… 少し怖い……」


 キティルの質問にパステルは少し考えてから間を開けて答える。


「うーん。あまり断る人は居ないかな。調査依頼の方が報酬は高いし難易度が高ければそのままランクアップなんてこともあるしね」

「心配しすぎだよキティル! きっと大丈夫よ。調査依頼を受けるころには私達もベテランだもん」

「そうかな……」


 不安げなキティルの背中を叩いてエリィが励ます。自信に満ち溢れるエリィだが、彼女の自信に根拠はない。


「じゃあ最後に注意ね。一年間冒険者として仕事をしないと資格停止処分になるからね。あと、これは初心者の二人には関係ないけど……」


 笑顔でカウンターのパステルはエリィとキティルに話しを続けようと……


「なんだそりゃあ!!!!!!!!!!!!!! ふざっくんな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 怒鳴り声が響く。ビクッとするキティルとエリィとパステルの三人、自然と三人の視線が怒鳴り声がした方へと向く。声はキティルとエリィが冒険者登録を行ってる隣のカウンターから発せられた。隣は他大陸で冒険者の経験がある者達がノウレッジの冒険者として登録していた。

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