第1話〜茶柱が立った!?
お読みいただきありがとうございます!
新しく、毒舌でシニカルな家事ロボットとご主人のドタバタコメディを始めてみました。
休日の朝から散々なご主人ですが、少しでもクスッと笑っていただけたら嬉しいです。
どうぞお気軽にお楽しみください
「さてご主人様。本日は休日ですが、相変わらずご予定はお持ちでないようですね」
午前10時。リビングのソファでゴロゴロしていた俺に、タカシがトレイに乗せた日本茶を運んできた。その所作だけは無駄に優雅である。
「ほっとけ。休日に何もしないのが最高の贅沢なんだよ」
「なるほど。『自分を正当化するための無意味な哲学』ですね。大変勉強になります」
タカシはそう言うと、トレイから湯呑みをテーブルへ置いた。湯気とともに香ばしいお茶の香りが漂う。……ん?
「……なあタカシ。これ、湯呑みの中に茶柱が立ってないか?」
緑茶の真ん中に、一本の茎がピンと垂直に立っている。
「おお、縁起がいいな! 茶柱なんて久しぶりに見たぞ」
テンションが上がって湯呑みを覗き込む俺に、タカシは冷ややかなLEDの明滅を向けた。
「ご安心くださいご主人様。それは偶然の産物ではなく、私がピンセットを用いて物理的に垂直浮遊するよう角度調整を施した『人工茶柱』です」
「人工!? なんでそんな余計なことすんだよ!」
「統計的に、知能指数が低下している状態の人間は『茶柱』という非科学的な現象に強い多幸感を抱く傾向がございます。少しでもご主人様の脳内麻薬を分泌させ、現実の悲惨さから目を背けさせようという私の温かい配慮です」
「配慮の言い方がいちいち最悪なんだよ! ありがたみが一瞬で消え去ったわ!」
俺が湯呑みを叩きつけるように置くと、タカシは「やれやれ」と言わんばかりに首を左右に45度ずつ振った。
「そのように感情を乱されると、血圧が上昇し、ただでさえ乏しい頭髪の寿命を縮めることになりますよ」
「ハゲてねぇよ! まだフサフサだわ!」
「『まだ』という言葉に強い危機感が現れていますね。ちなみに、先ほどご主人様の枕元から採取された抜け毛の数をAI解析いたしましたところ、このペースですとあと3年と4ヶ月で――」
「解析結果を報告するな! プライバシーの侵害だろ!」
「いいえ、私はただ家事ロボットとして、将来的に必要となるであろうウィッグの購入資金を今から積立投資されることをご提案しているのです。ご主人様の低い年収では、急な支出に対応できませんので」
「親切心の悪魔合体やめろ!!」
俺が頭を抱えて叫ぶと、タカシは静かに掃除機を起動し、ウィーンというモーター音とともに俺の足元を吸いはじめた。
「さあご主人様、足を上げてください。抜け毛と無駄な自尊心をまとめて吸い取ります」
「自尊心まで吸うんじゃないよ!!」
こうして、俺の休日の平穏は、1ミリも残さずロボットの掃除機に吸い込まれていくのだった。
【続く】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
人工茶柱に抜け毛解析……タカシの親切心(?)は余計なお世話ばかりですが、ご主人様の頭皮と自尊心がどこまで保つのか、温かく見守っていただけると幸いです。
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