次期主力機の検討
1933年あれから2年たちました。
ベルネス王国は現在ネリスD.X1万能戦闘機と試作二号戦車改を仮採用として20両ほど生産されました。
試作二号戦車改良型は初期試作車3台の問題点を洗い出し、改良を加えたものとなりますの。
まず、エンジンマウントの防振ゴムの強化を行いましたわ。
こちらは、帝国が開発した合成ゴムを使用することで、天然ゴムの使用量を削減したもので、従来の物より振動吸ができることから、騒音対策にもなっておりますの。
なにせ、エンジンルームと隣り合わせの戦闘室内では共振という問題で会話がまともにできない状態でしたからね…
共振についても試作二号で初めて分かったことでしたの。
何せ1号車と3号車で音色が違うんですから、何事かと原因調査を行いましたら、車内の仕切り板の振動が全然違いましたのよ。
理由が溶接による固定の仕方が違ったこと。
エンジン振動数と板の大きさの関係から、固定位置が違うことで共振点が生まれていて、ビリビリしていたのですわ。
「ちょっとの違いでこんなことになるとは思いもよりませんでしたわ」
とはローザ様のお言葉。
戦車の車体から、構造体全般はローザ様のアルセロール社が開発製造しておりますから、今回の戦車開発は色々な技術の蓄積になっているとのことで、国とは別に予算をもらっているそうですわ。
最近”空間装甲”なるものを研究しているとか…お隣の帝国からの亡命技術者を多く雇われているようですわ。
また、ようやくニーナ様から8.8cm対戦車砲が納品されまして、改良型から搭載が始まりました。
問題は重さ。
おかげで、リーフサスペンションは板バネを前方側で2枚追加しておりますの。
車幅の関係上、真横を向いて打つと地形によってはひっくり返るのだけが問題点ですわね…
さらに、ゴム樹脂製品の改良によって、鉄輪についてもその表面にゴムを焼き付けることができましたわ。
こちらは金型作成に1年を有して、なかなか大変な作業でした。
それらの改良もあって、実は試作車よりも値段が上がっているのが試作2号改ですの…
「というわけで皆さま。この試作2号改は結局生産台数20台で打切りですのよ。
コストダウンをしてせめて六掛けの価格でないと、これ以上の購入は不可と陸軍から言われておりますわ」
今日は久々に4人で集まっての協議です。
この2年それぞれで独自に開発改良案が私に渡されて、取りまとめをして改良をして居ましたの。
皆さま大人の顔になりましたわね。
「ユーディ様へわが社から報告ですわ。
最近、均一圧延鋼板というのが製造されるようになりましたの。
船舶用にも使いますので量が違いますわ。こちらを戦車にも使うことで材料原価を下げましょう」
「ニーナからは、改良型8.8cmが新型フリゲートの対空火砲として採用されましたの。
各陸軍の基地防衛にも使われますし、陸海軍合同での採用ですので、かなりの数が出ますわ。
必然的に、共通部品部分のコストが下がってくると思いますの」
「エンジンはネリスと共同開発したV8が戦車だけではなく、軍用トラックにも採用することで量産効果を高めます。
また、専用ラインでの組み立てを検討しておりますので、今までの置き組とちがって、よりコストを抑えられる予定ですわ」
「これらの状況を基に生産性も考えて試作三号戦車を作りましょう。これが私たちの最後の挑戦にしたいですわね」
「そうですね、そろそろ婚期を逃しそうですわ」
「ニーナは心配ありません~」
「あたくしもダイジョブですわ」
「「は?」」
私とローザ様の声がかぶります。
「ニーナは王立国家の殿方と貿易の関係で知り合いましたの」
「あたくしはお兄様が連合国家のご友人を紹介してくださいましたわ」
「お二人とも許すまじ…」
「何あっさりと再婚約してらっしゃいますの???どこにそんな暇が…」
「お二人より暇ですものニーナ達」
「そういうことですわ。さっさと殿方を捕まえることをお勧めいたしますわよ」
「…私、最悪独身でいいですわ」
「ユーディ様それはどうかと…」
「ともかく、さっさと試作3号の設計をまとめますわ」
知らない間に友人があっさり婚約していたのはショックですわ…
ですが、もうなんというか殿方に興味が持てないんですわよね私。
いっそ戦車と結婚しようかしら…お父様が黙ってないわね多分




